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特定技能・運送業とは?2024年開始の制度内容と仕事内容・必要条件を解説

  • sou takahashi
  • 8月1日
  • 読了時間: 16分
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目次:


日本の物流・旅客業界は深刻な人手不足に直面しており、その解決策として注目されているのが「特定技能・運送業」です。2024年に新たに制度化され、海外人材が正式に運送分野で働ける道が開かれました。


本記事では、制度の仕組みや仕事内容、必要な資格、受け入れ企業の条件、今後のキャリアパスまでを網羅的に解説します。これから制度を活用しようと考えている企業や海外人材の方に、最初の一歩となる情報をお届けします。


1.特定技能の運送業とはどんな制度か

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特定技能の運送業はいつから始まった?


特定技能の運送業分野は、2024年4月に制度として正式にスタートしました。これにより、トラック・バス・タクシーといった自動車運送業でも、海外人材が特定技能1号の在留資格を取得して働くことが可能になりました。


制度は2024年3月に閣議決定され、その後、受け入れ企業や関係機関による体制整備が急ピッチで進められてきました。2025年7月現在、特定技能評価試験はすでに本格的に実施されており、トラック分野だけでなく、バス・タクシー分野でも試験が実施済み、もしくは継続的に行われています。


つまり今は、海外人材の受け入れを検討する企業にとっても、日本で働きたい外国人にとっても、制度を実際に活用するフェーズに入った重要なタイミングだといえるでしょう。


運送業が特定技能の対象になった背景


運送業が特定技能制度の対象になった背景には、慢性的な人手不足と業界の構造的な課題があります。特にトラックドライバーをはじめとする運転手の高齢化が深刻で、若年層の新規参入が追いついていない状況が続いていました。


さらに、2024年に適用が開始された「働き方改革関連法」によって、トラックドライバーの時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)が導入され、労働時間の確保が難しくなりました。これにより、多くの運送会社が人材不足に拍車をかけられる形となりました。


そうした状況を受け、政府は労働力確保の手段として、海外人材の活用を可能とする「特定技能」制度の対象に運送業を加えることを決定したのです。今後も需要の高まりが予想されるため、安定的な人材確保の仕組みとしてこの制度は注目されています。



特定技能:運送業で働ける仕事内容


特定技能の運送業では、従事できる業務が明確に定められています。主な仕事内容は運転業務に加え、その周辺業務まで含まれるのが特徴です。


以下のような業務に従事できます。

分野

主な仕事内容

トラック分野

貨物の配送、荷役作業(積み降ろし)、車両点検、洗車などの関連業務

バス分野

定期便や観光バスの運転、乗客の案内、安全運転に関する対応

タクシー分野

送迎業務、接客対応、料金精算、地理知識を活かしたルート選定など

いずれの分野でも、日本国内で有効な運転免許(第一種または第二種)を取得する必要があります。また、バス・タクシーの運転手は、「新任運転者研修」を修了しなければ就労できません。


単なる運転手というよりも、「接客」や「安全管理」など多面的なスキルが求められる点が、特定技能の運送業ならではの特徴です。企業側も海外人材に対し、日本語教育や生活支援などをセットで用意する必要があります。


特定技能 自動車運送分野社員採用について



2.特定技能の運送業に必要な条件とは

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特定技能評価試験の内容と対策


特定技能評価試験は、海外人材が特定技能1号の在留資格を得るために必要な試験です。運送業の場合、希望する職種によって試験内容が異なります


例えば、トラックドライバー向けの試験では、荷物の積み下ろし方法、車両の安全点検、日常の業務ルールなどが問われます。バス・タクシードライバーの場合は、運転技術に加えて、接客マナーや日本の交通法規に関する設問が多く含まれます。いずれも実際の業務を想定した内容で構成されており、「机上の知識」よりも「現場の常識」を重視した出題傾向です。


対策としては、公式テキストの学習と過去問演習が効果的です。トラック業界であればJTA(全日本トラック協会)、バスやタクシー業界では各業界団体のホームページに教材が掲載されています。また、イラストや図を使った教材も多く、初心者でも取り組みやすくなっています。


合格後はすぐに在留資格が与えられるわけではなく、日本語力や運転免許など他の条件と合わせてクリアする必要があるため、試験対策は早めに始めることが大切です。



日本語能力試験の基準と種類


特定技能で運送業に就くには、一定以上の日本語能力が必要です。求められる水準は職種によって異なり、トラック分野はN4以上、バス・タクシー分野はN3以上が基本的な基準とされています。


ここで言う「N」は、日本語能力試験(JLPT)のレベルを表し、N1が最も難しく、N5が最も簡単です。トラック業務は比較的日本語の読み書きよりも作業中心であるため、N4程度でも可能ですが、旅客業務では接客や緊急時対応があるため、より高度な日本語力が求められるという背景があります。


なお、JLPTのほかに「JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)」という試験でも、日本語力を証明できます。こちらは特定技能制度専用に設計されており、読む・聞く・使うといった実践的な日本語スキルに焦点を当てた内容になっています。


試験に合格するには、単語を覚えるだけでなく、実際の業務で使う日本語表現や会話フレーズを学ぶことが重要です。特に安全確認や緊急時の対応フレーズは現場での信頼に直結するため、意識的に覚えておくと良いでしょう。



外国運転免許の切替要件について


海外人材が日本で運転するためには、日本の運転免許を取得する必要があります。そのための方法のひとつが「外免切替(外国免許切替)」です。これは、母国などで取得した運転免許を、日本のものに切り替える手続きです。

項目

内容

手続き可能な条件

運転免許を取得した国に通算3か月以上滞在していたこと

滞在歴の確認方法

入出国スタンプ、在留記録など

条件を満たさない場合

免許証を所持していても切替不可

必要な試験・検査

適性検査(視力など)、筆記試験、実技試験(※一部の国では免除あり)

試験が免除される国の例

韓国、ドイツ、台湾など(詳細は都道府県の運転免許センターで確認)

書類の準備

日本語での書類提出が必要

翻訳文の提出について

JAF(日本自動車連盟)など公的機関による翻訳が必要


これらを踏まえ、外免切替を予定している人は、日本入国前から必要な条件や書類を確認し、準備を整えておくことが重要です。



3.特定技能の運送業の受け入れ企業の条件

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働きやすい職場認証制度とは何か


「働きやすい職場認証制度」とは、自動車運送業界における労働環境の改善と、業界のイメージ向上を目的として導入された制度です。国土交通省の支援を受けて一般財団法人日本海事協会が運用しています。


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この制度では、運送事業者の職場環境や雇用管理体制などを第三者が審査し、一定の基準を満たしていれば「認証マーク(☆)」が付与されます評価項目には、労働時間の管理、休日・休暇の取得状況、ハラスメント対策、安全管理体制、女性や若者の活躍推進などが含まれます。


特定技能制度においては、この認証を受けていることが海外人材を受け入れるための要件の一つとされています。特にバス・タクシー・トラックいずれの分野においても、この制度の認証を受けていなければ原則として特定技能社員を雇用することはできません。


そのため、特定技能の受け入れを検討している事業者は、まず自社の労働環境を見直し、制度の申請準備を進めることが重要です。申請には書類審査が必要で、年1回の申請受付期間も決まっているため、計画的な準備が求められます。


特定技能協議会への加入は必要?


特定技能制度に基づいて海外人材を雇用する場合、対象分野ごとに設置されている「特定技能協議会」への加入が義務づけられています。自動車運送業においても同様で、協議会に加入しなければ受け入れ自体ができません


協議会は、受け入れ企業・業界団体・関係省庁などが連携し、制度の適正な運用と海外人材労働者の支援を行うための枠組みです。定期的に活動報告の提出や調査協力が求められることがありますが、手続きはそこまで複雑ではありません。


加入方法は、事業者がインターネット経由で「受け入れ機関情報登録」を行い、協議会が指定する様式に基づいて必要な情報を提出する形が一般的です。分野によっては、年会費や登録料が発生することもあります。


加入後は、海外人材の適正な支援体制の整備が求められるため、生活支援や日本語教育、苦情対応などにも取り組む必要があります。協議会はこれらの支援策に関する相談窓口にもなっており、制度活用にあたっては心強いパートナーとなる存在です。



軽貨物業者も受け入れ対象になるのか


軽貨物運送業者が特定技能の受け入れ対象となるかどうかは、原則として「対象外」です。その理由は、軽貨物事業は道路運送法に基づく「一般貨物自動車運送事業者」や「旅客自動車運送事業者」に該当しないためです。


特定技能制度で海外人材を雇用できるのは、国土交通省の定める認可事業者に限られており、事業許可や認証制度(働きやすい職場認証制度、Gマークなど)の取得が条件になります。軽貨物業者はこれらの認証制度の対象外となっているため、制度上の要件を満たすことができません。


また、軽貨物ドライバーは個人事業主として業務委託契約で働くケースが多く、労働法上の「雇用契約」に当たらない形態も多く見られます。特定技能制度では、正規の雇用関係に基づく就労のみが認められており、業務委託契約では在留資格の許可が下りません


そのため、軽貨物業者が海外人材を雇用したい場合は、一般貨物の許可取得や雇用体制の整備など、大きな業務転換が必要になります。現時点では、制度の枠内での受け入れは極めて困難です。


特定技能 自動車運送分野社員採用について




4.特定技能の運送業で必要な手続きと研修

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特定活動から特定技能へ移行する方法


特定技能運送業では、多くの海外人材が「特定活動」という在留資格で入国し、日本国内での運転免許取得や研修を経たうえで「特定技能1号」へと移行します。この移行プロセスは制度上、段階的に設計されており、必要な要件をすべて満たした時点で初めて切替申請が可能になります


特定活動の期間中に行うべき主な準備は、以下の3点です:


  • 日本国内での運転免許(第一種または第二種)の取得

  • 所属企業での新任運転者研修の修了(バス・タクシー)

  • 特定技能評価試験および日本語試験への合格


これらをすべて完了したら、在留資格変更許可申請を出入国在留管理局に提出します。申請には、雇用契約書、免許証の写し、研修修了証明書、試験の合格証、所属機関の受入れ体制に関する書類などが必要です。


注意点として、特定活動の期間は延長できません。トラック分野であれば6か月、旅客分野であれば1年の在留が上限であり、期限内に全ての条件を整えておく必要があります。手続きは余裕をもって進めることが大切です。



新任運転者研修で行われる内容とは


バスやタクシーで特定技能として就労するためには、運転免許の取得だけでなく、新任運転者研修の修了が必須条件となります。この研修は、日本の運転文化、安全基準、接遇マナーなどを学ぶための重要なプロセスです。


研修の内容は法律に基づいて定められており、主に以下のような構成になっています:


  • 座学:道路運送法、安全運転管理、接遇、地理、労働関係法令など

  • 実技:点呼訓練、車両点検、構内走行、路上走行、応急対応の実践

  • 適性診断:性格診断や運転傾向の分析を通じた安全意識の向上


研修時間の目安は、おおむね10日から14日程度です。企業によっては、さらに自社独自のプログラムを追加する場合もあります。特に海外人材の場合は、日本語での受講が前提となるため、受講前に一定の語学力が求められる点にも注意が必要です。


修了後には「新任運転者研修修了証明書」が発行され、この証明が在留資格変更の際に必要な書類のひとつとなります。つまり、研修は単なる教育機会ではなく、制度的に欠かせないステップです。


在留資格変更時の注意点と流れ


在留資格を「特定活動」から「特定技能1号」に変更するには、出入国在留管理局での申請手続きが必要です。この申請では、資格変更の要件を満たしていることを証明するための複数の書類を提出する必要があります。


主な提出書類には、以下のようなものが含まれます:


  • 運転免許証(日本で取得済のもの)

  • 特定技能評価試験および日本語試験の合格証明書

  • 新任運転者研修の修了証明書(旅客の場合)

  • 雇用契約書および雇用条件書

  • 受け入れ機関に関する届出・支援体制の書類


この手続きには通常1〜2か月程度の審査期間がかかるとされており、特定活動の在留期限が迫っている場合は注意が必要です。やむを得ず在留期間が切れる直前に申請する場合には、申請中の「特例在留」制度(最大2か月延長)を活用できます。


また、申請書類の不備や記載ミスがあると審査が遅れるだけでなく、最悪の場合は資格変更が認められないこともあります。行政書士や専門機関に相談しながら進めると安心です。


在留資格の変更は「制度上の切替」というだけでなく、その人の日本での生活と就労継続に直結する重要な手続きです。早めの準備と正確な対応が成功の鍵になります。



5.特定技能の運送業の将来とキャリア

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特定技能で5年働いた後の進路


特定技能1号の在留資格には、最長5年間という在留期間の上限があります。この5年を満了した後は、同じ資格のままでは継続して日本で働くことができないため、進路の選択が必要になります。


進路として主に考えられるのは、以下の3つです:


  • 特定技能2号への移行

  • 永住者や配偶者ビザへの切替(条件あり)

  • 母国へ帰国


現状、運送業分野では特定技能2号への移行は認められておらず、在留資格の更新ができないため、5年で一度区切りがつく形になります。ただし、将来的に制度変更により2号の対象となる可能性はあり、国の動向を注視しておく必要があります。


また、就労期間中に日本人と結婚したり、永住申請の条件を満たしたりすれば、別の在留資格へ切り替える選択肢もあります。一方で、何も対応しないまま在留期限を迎えれば、帰国するほかありません。


5年の期間は、あっという間に過ぎてしまいます。働きながらも、次のステップを意識して情報収集をしておくことが大切です。



特定技能2号で働ける年数と条件


特定技能2号は、より高度な技能と実務経験を持つ海外人材に与えられる在留資格で、在留期間の上限がなく、家族の帯同も可能になる点が特徴です。産業人材として長期的な活躍が見込まれるポジションといえます。


なお、特定技能2号に移行できる場合は、在留期間の更新制限がなく、配偶者や子どもの帯同も可能となり、より安定した生活基盤を築けるようになります。移行には実務経験や評価試験の上位版への合格などが必要です。


他分野から運送業への転籍は可能?


特定技能制度では、同一分野内での転職は原則として可能ですが、分野をまたぐ転籍には制限があります。


たとえば、介護分野で特定技能1号を取得している人が、運送業分野へ転職するには、運送業の「技能評価試験」と「日本語試験」に合格し、運送業としての在留資格を改めて取得しなければなりません。


転籍というよりは、「新たな分野での再申請」という扱いに近く、以下の要件をすべて満たす必要があります:


  • 運送業の評価試験に合格している

  • 日本語能力要件を満たしている(N3またはN4)

  • 日本国内で有効な運転免許を取得済み

  • 所属企業での新任運転者研修を受講済み(旅客のみ)


つまり、他分野での経験や在留期間があっても、それは運送業分野での「特定技能」としては引き継がれません。また、制度上の在留期間(最長5年)は通算管理されるため、すでに他分野で数年働いている場合、残りの期間しか運送業では働けません。


転籍を考えている方は、自分の現在の在留資格と残り年数を確認した上で、必要な準備を早めに進めることが求められます。


特定技能 自動車運送分野社員採用について



6.よくあるご質問

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◾️Q1. 特定技能の運送業はいつから対象になりますか?


はい、正式には2024年4月から「自動車運送業(トラック・バス・タクシー)」が特定技能1号の対象分野に追加されました。これは2024年3月の閣議決定に基づくもので、同年4月以降、外国人が特定技能1号の資格で運送業に携われるようになりました。


◾️Q2. 特定技能で5年経ったらどうなる?


特定技能1号資格は通算で最長5年までしか在留できず、その後は資格の更新ができません。2025年7月時点では運送業分野において特定技能2号へのステップアップは認められておらず、5年を迎えると以下の選択肢が必要になります:

  • 他の在留資格(配偶者ビザ、永住ビザなど)への変更

  • 一旦帰国し、再び別の制度で来日

  • 日本での就労を終了し帰国

将来的な2号適用拡大には期待があるものの、現時点では未対応です。


◾️Q3. 特定技能の対象16業種は?


はい、現在特定技能1号の対象は全部で16分野あります。以下がそのリストです:

介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業。


◾️Q4. 特定技能2号は何年日本で働けますか?


特定技能2号は在留資格の更新に制限がなく、「無期限で働くことが可能」です。また、年数だけでなく、家族の帯同が認められるなど1号より待遇が手厚くなっています。

しかし、2025年7月時点では「自動車運送業(バス・タクシー・トラック)」は2号の対象に含まれておらず、適用できません。


7.まとめ

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特定技能の運送業制度は、深刻化する人手不足への対応策として2024年に導入され、海外人材がトラック・バス・タクシーなどの分野で働けるようになりました。


就労には評価試験や日本語能力試験、運転免許の取得が必要で、旅客分野では新任運転者研修の修了も求められます。


企業側は「働きやすい職場認証制度」の取得や、特定技能協議会への加入が条件となり、制度の適切な運用が不可欠です。今後は制度拡大や2号移行の可能性も視野に、海外人材の受け入れが業界の未来を左右する重要な要素となるでしょう。

特定技能に強い登録支援機関 GLORY OF BRIDGE


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