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特定技能外国人材の採用で失敗しやすい企業の共通点とは?事前に確認すべきポイント

  • sou takahashi
  • 1月16日
  • 読了時間: 9分
特定技能外国人材の採用で失敗しやすい企業の共通点とは?事前に確認すべきポイント

目次:



「こんなはずじゃなかった」


特定技能外国人材の採用現場で、この言葉を聞くことは決して珍しくありません。コストと時間をかけて採用した人材が、現場でのトラブルや誤解によってわずか3ヶ月で離職してしまう。その結果、紹介料や渡航費など、一人あたり100〜150万円もの採用コストが一瞬にして無駄になってしまうケースが現実に起きています。


採用手続きの流れを理解することは重要ですが、それ以上に重要なのは「採用後の失敗」を未然に防ぐための設計です。失敗する企業には、業種を問わず共通するいくつかのパターンが存在します。


この記事では、特定技能の採用で陥りやすい失敗の「共通パターン」を解き明かし、自社がその落とし穴にはまっていないかを点検するための具体的なチェック視点を提供します。行動を起こす前に、まずは足元のリスクを確認し、盤石な受け入れ体制を整えましょう。


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1.特定技能の採用で失敗が起きる企業の「共通パターン」5つ


特定技能の採用で失敗が起きる企業の「共通パターン」5つ

多くの企業が躓くポイントは、「人材の質」以前に「受け入れ側の認識」にあることがほとんどです。ここでは、失敗につながりやすい5つの典型的なパターンを解説します。


① 制度理解不足(在留資格・従事業務・義務的支援の取り違え)


特定技能制度は、従事できる業務範囲が厳密に定められています。しかし、「現場の人手が足りないから」という理由だけで、日本人のアルバイトと同じ感覚で業務を割り振ってしまうケースが後を絶ちません。特に多いのが、「付随業務」の解釈ミスです。


例えば、特定技能「外食業」において、本来は調理や接客が主たる業務でなければならないにもかかわらず、一日中「洗い場」や「清掃」だけをさせてしまうようなケースです。これは制度の趣旨に反するだけでなく、在留資格の更新時に入国管理局から指摘を受ける重大なリスクとなります。

業種・企業

問題の内容

発生したトラブル・影響

建設業 B社

雑務(事務作業・資材運び)を過度に担当させた

技能を要する業務に従事していないと判断され、在留資格更新が認められない事態になりかけた

製造業 C社

事前ガイダンス・オリエンテーションの記録未保存

監査で厳重注意を受けるなど、運用の甘さがリスクとして顕在化



制度の全体像を正しく理解することは、コンプライアンス遵守だけでなく、外国人人材のモチベーション維持にも直結します。制度の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。


② 現場任せ(人事は採用だけ、現場は教育だけ…で分断)


「採用担当者は一生懸命だが、現場は何も知らされていない」という分断も、失敗の大きな要因です。人事が制度や日本語能力について理解していても、実際に一緒に働く現場社員が「外国人が来るなんて聞いていない」「日本語が通じないのは困る」といった拒否反応を示せば、受け入れはうまくいきません。

業種・企業

問題の内容

発生したトラブル・影響

介護施設 D社

現場への事前周知・受け入れ体制不足

現場スタッフの反発により適切な指導が行われず、人材が孤独感を抱き3ヶ月で離職

製造業 E社

教育担当を特定のベテラン社員に依存

教育内容が属人化。担当者不在時に業務停滞、指導のバラつきで配置転換がうまくいかない

建設業 F社

安全教育の不足と言語面の配慮欠如

ヒヤリハットが多発し、労災寸前の事故を契機に全社的な教育体制見直しを迫られる


③ ゴール設計不在(採用が目的化している)


「人手が足りないから採用する」というのは出発点であって、ゴールではありません。採用後にその人材がどう成長し、どのような役割を担ってほしいのか、具体的なビジョンがないまま採用を進めると、お互いに不幸な結果を招きます。


「いつまでに、どのレベルの日本語を習得してほしいか」「半年後にはどの工程を一人で任せたいか」といったマイルストーンが設定されていないと、評価も曖昧になります。

業種・企業

問題の内容

発生したトラブル・影響

外食業 H社

明確な役割・指示が与えられていない

人材が「指示待ち」状態となり職場で孤立。1ヶ月で早期退職

製造業 I社

育成計画が存在しない

3年経っても単純作業のみで戦力化せず、契約期間満了による機会損失が発生


④ 外部パートナー丸投げ(登録支援機関・紹介会社に任せれば大丈夫、の誤解)


特定技能制度では、登録支援機関に支援業務を委託することが一般的です。しかし、「委託したから全てお任せ」という姿勢は極めて危険です。登録支援機関はあくまで支援の実施者であり、雇用の責任主体は受入企業にあります。

業種・企業

問題の内容

発生したトラブル・影響

小売業 J社

生活支援・行政手続きを登録支援機関に丸投げ

家賃未払い、ごみ出しルール違反など生活トラブルが多発。近隣住民との関係悪化、人材との信頼関係崩壊

建設業 K社

契約内容の確認不足

本来実施すべき定期面談が未実施。行政への報告漏れが発覚

介護施設 L社

登録支援機関との連携不足

ビザ更新手続きの遅延により、一時的に就労不可となる深刻な事態が発生


登録支援機関と企業の間で、以下の役割分担を明確にしておく必要があります。


  • 緊急時の連絡フロー(夜間・休日の対応はどちらがするか)

  • 定期面談の実施と報告のタイミング

  • 生活オリエンテーションの具体的内容

  • 公的書類作成の責任範囲


⑤ コンプラ・労務の軽視


日本人社員と同じ感覚で労務管理を行っていると、予期せぬトラブルに発展することがあります。特に、賃金規定や労働時間管理、社会保険の加入などは、入管法や労働基準法に照らして厳格に運用されなければなりません。

業種・企業

問題の内容

発生したトラブル・影響

製造業 M社

残業代の計算方法が日本人社員と一部異なっていた

労働基準監督署から是正勧告を受ける

飲食業 N社

社会保険の加入手続きの遅れ

病院受診時に本人が医療費を全額負担するトラブルが発生

建設業 O社

有給休暇制度の説明不足

「休みが取れない」と誤解され、待遇の良い他社へ転職

「知らなかった」「忙しかった」では済まされないのがコンプライアンスです。些細なミスが、企業の評判(レピュテーション)を傷つけ、今後の採用活動全体に悪影響を及ぼすリスクがあることを認識しておきましょう。



2.失敗を防ぐための「事前チェック視点」7つ


失敗を防ぐための「事前チェック視点」7つ

失敗パターンの多くは、採用前の準備不足に起因します。以下の7つのチェックポイントを使って、自社の受け入れ体制に「穴」がないかを確認してください。


チェック1|在留資格と従事業務は、現場の業務分解レベルで照合できているか


「特定技能でできること」と「現場でやらせたいこと」が一致しているかを詳細に確認します。特に、メインの業務以外に発生する「付随業務(清掃、運搬、事務など)」の割合が適切かどうかが重要です。現場の1日の流れを書き出し、それぞれの作業が特定技能の業務区分に含まれるかを照らし合わせてください。



チェック2|義務的支援(+任意支援)の担当者・手段・頻度が決まっているか


特定技能所属機関には、入国前のガイダンスから帰国時の送迎まで、10項目の義務的支援が課せられています。これらを「誰が」「いつ」「どのように」実施するかを具体的に決めておく必要があります。全てを自社で行うのか、一部または全部を登録支援機関に委託するのかを明確にしましょう。




チェック3|社内の受け入れ体制(窓口・相談・通訳/翻訳手段)があるか


外国人材が困ったときに、社内の誰に相談すればよいかが明確になっていますか?また、言葉の壁を越えてコミュニケーションを取るためのツールや体制は整っているでしょうか。現場任せにせず、組織としてサポート体制を構築することが不可欠です。




チェック4|採用後90日までの"立ち上げ計画"があるか


入社直後の3ヶ月(90日)は、定着するか離職するかの分かれ道となる最も重要な期間です。「とりあえず現場に入って慣れてもらう」ではなく、段階的な導入計画が必要です。初日は何をするか、1週間後にはどこまでできるようになっていてほしいか、具体的なロードマップを描きましょう。





チェック5|評価・育成・キャリアの見える化があるか


「頑張れば報われる」という仕組みが見えることは、モチベーション維持の鍵です。評価基準が曖昧だと、「日本人に比べて不当に扱われている」という不満につながりかねません。技能レベル、日本語能力、勤務態度などをどう評価し、それが昇給やキャリアアップにどうつながるかを可視化しましょう。




チェック6|外部パートナーの役割と責任範囲が文書で明確か


登録支援機関との契約内容を詳しく確認していますか?「支援委託契約書」の内容を精査し、特にトラブル時の対応責任や追加費用の有無について明確にしておく必要があります。口約束ではなく、必ず書面で残すことがトラブル回避の鉄則です。




チェック7|"問題が起きたとき"の初動フローが決まっているか


病気、事故、喧嘩、失踪など、様々なトラブルが起こり得ます。いざという時にパニックにならないよう、トラブルの種類と緊急度に応じた初動対応フローをあらかじめ決めておきましょう。初動の早さが、問題の拡大を防ぎます。




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3.採用前にやるべきこと


採用前にやるべきこと

ここまで確認してきた内容を踏まえ、採用活動を本格化させる前に、以下の3ステップを確実に実行してください。これが失敗を回避する最短ルートです。


  1. 制度の全体像と採用ステップを再確認する


    特定技能制度のルールをもう一度おさらいし、自社の業務内容や体制が適合しているかを判断します。

  2. 受入準備チェックリストで穴を洗い出す


    上記の7つのチェックポイントに加え、より詳細な準備項目(住居、備品、書類など)を確認し、準備不足の項目をリストアップして期限を切って対応します。

  3. 外部パートナーに"任せる範囲"を決め、連携設計する


    自社でやることと、登録支援機関や専門家に任せることを明確に切り分け、契約内容に反映させます。



4.まとめ


まとめ

特定技能の採用における失敗は、決して「外国人材側の問題」だけではありません。むしろ、受け入れ企業の「準備不足」や「制度理解不足」、「コミュニケーション設計の欠如」といった、受け入れ側の構造的な問題に起因することが大半です。


しかし、裏を返せば、制度を正しく理解し、社内の体制を整え、ゴールを共有し、外部パートナーと適切に連携できれば、失敗の確率は劇的に下がります。特定技能人材は、適切に受け入れれば企業の強力な戦力となり、組織に新しい風を吹き込んでくれる存在です。


まずは、今回ご紹介したチェックリストを使って、自社の準備状況に「抜け漏れ」がないかを確認することから始めてみてください。その小さな確認作業が、将来の大きな失敗を防ぐ最初の一歩となります。



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