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特定技能外国人材の評価制度の作り方|公平性と納得感を生む等級・給与テーブル設計

  • sou takahashi
  • 4 日前
  • 読了時間: 10分
特定技能外国人材の評価制度の作り方|公平性と納得感を生む等級・給与テーブル設計

目次:


特定技能外国人を採用した企業の人事担当者から、こんな声をよく聞きます。

「日本人と同じ評価基準で良いのか分からない」 「昇給をどう判断すれば公平なのか悩んでいる」 「評価面談で言葉の壁があり、うまく伝えられない」


特定技能制度では「日本人と同等以上の報酬」が義務付けられていますが、実際の評価制度の設計では、言語や文化の違いを考慮した仕組みが必要です。


本記事では、外国人材が納得でき、企業にとっても公平な評価制度の作り方を、具体例とともに解説します。


1. なぜ特定技能外国人材に評価制度が必要なのか


なぜ特定技能外国人材に評価制度が必要なのか

公平性の担保が定着率を左右する


厚生労働省の調査によると、外国人労働者の離職理由の上位に「キャリアアップの機会がない」「評価基準が不透明」が挙げられています。特に特定技能外国人は、技能実習とは異なり即戦力として長期就労を前提としているため、明確なキャリアパスと連動した評価制度が欠かせません。


評価制度がないと起こる問題


評価制度がないと起こる問題

法令遵守の観点からも必須


入管法では、特定技能外国人に対し「日本人が従事する場合の報酬額と同等以上」の給与支払いが義務付けられています。これは単に初任給だけでなく、昇給・賞与・各種手当も含まれます。評価制度がなければ、この「同等性」を証明することが困難になります。


キャリアパス設計との連動


前回の記事で触れた通り、特定技能1号から2号への移行には「実務経験」と「技能水準」の証明が必要です。評価制度は、この技能向上のプロセスを可視化し、本人のキャリア形成をサポートする役割も担います。



2. 外国人材向け等級制度の設計方法


外国人材向け等級制度の設計方法

等級制度とは、従業員を能力・職務・役割によって区分し、給与や処遇の根拠とする仕組みです。特定技能外国人向けには、シンプルで理解しやすい等級設計が重要です。


推奨:4段階等級モデル


複雑な等級制度は言語の壁でかえって混乱を招きます。以下のような4段階モデルが実践的です。

等級

名称

対象者の目安

主な役割・期待値

等級1

基礎レベル

入社~6ヶ月

指示を受けて基本業務を遂行。OJTで技能習得中。安全ルール遵守。

等級2

実務レベル

6ヶ月~2年

一人で標準業務を遂行。品質・納期を守れる。簡単な判断ができる。

等級3

独り立ちレベル

2年~4年

応用業務や複数工程を担当。後輩指導も開始。業務改善提案ができる。

等級4

リーダーレベル

4年以上

チームリーダー補佐。複雑な業務判断。新人教育担当。特定技能2号相当。

業種別の等級設定例


【介護分野】

等級

業務内容

等級1

見守り・生活支援補助

等級2

食事・入浴介助の単独実施

等級3

夜勤対応・認知症ケア

等級4

ユニットリーダー補佐・新人指導

【製造分野】

等級

業務内容

等級1

単一工程の作業

等級2

複数工程の習熟・品質管理

等級3

ライン全体の理解・工程改善

等級4

班長補佐・技能指導


【外食分野】

等級

業務内容

等級1

調理補助・簡単な接客

等級2

単独での調理・オーダー対応

等級3

メニュー提案・シフトリーダー

等級4

店舗運営補佐・スタッフ教育


等級制度設計の3つのポイント

ポイント

内容

言語表記の工夫

やさしい日本語で記載し、主要な母国語(ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語など)を併記

昇格要件の明確化

抽象表現を避け、具体的な行動ベース(例:月1回以上の業務改善提案)で定義

日本人従業員との整合性

基本は同一の等級制度を使用し、言語サポートや文化配慮を追加して対応


3. 評価指標の設定|何を評価するのか


評価指標の設定|何を評価するのか

評価指標は大きく分けて5つのカテゴリーで構成します。


① スキル・技能評価(40%)

評価区分

内容

評価項目(40%)

業務遂行能力/技術習得度/業務スピード/品質意識

業務遂行能力

担当業務を正確に完遂できるか

技術習得度

新しい技能をどの程度習得したか

業務スピード

標準時間内に作業できているか

品質意識

ミス・不良の発生率

評価方法

実技テスト/資格取得状況(特定技能評価試験など)/上司による行動観察記録

② 安全・コンプライアンス遵守(20%)

評価区分

内容

評価項目(20%)

安全ルールの遵守/報告・連絡・相談/職場規律の遵守

安全ルールの遵守

保護具の着用、作業手順の遵守

報告・連絡・相談

事故・トラブル・疑問点の適切な共有

職場規律の遵守

遅刻・欠勤などの勤務状況

重要ポイント

減点方式ではなく加点方式を採用し、ヒヤリハット報告や安全提案などの積極的行動を評価


③ 勤怠評価(15%)

評価区分

内容

評価項目(15%)

出勤率/シフト対応の柔軟性/時間管理能力

出勤率

欠勤・遅刻・早退の頻度

シフト対応の柔軟性

繁忙期・急な変更への対応状況

時間管理能力

出社・休憩・作業時間の管理ができているか

注意点

文化により時間感覚が異なる場合があるため、初回評価前に「時間厳守」の重要性を丁寧に説明する

④ コミュニケーション能力(15%)

評価区分

内容

評価項目(15%)

日本語能力の向上/チーム内での情報共有/顧客対応の適切性/業務指示の理解度

日本語能力の向上

日本語レベルの向上(例:N3→N2)

情報共有

チーム内で必要な情報を適切に共有できているか

顧客対応

接客・応対が業務基準に沿っているか

指示理解力

通訳なしでも業務指示を理解できるか

評価の工夫

流暢さではなく「必要な意思疎通ができるか」を重視し、ジェスチャーや翻訳アプリの活用も評価対象とする


⑤ 行動特性・態度評価(10%)

評価区分

内容

評価項目(10%)

積極性/協調性/改善提案/後輩指導への協力

積極性

自ら学ぼうとする姿勢、業務への前向きな取組み

協調性

チームワークを意識した行動ができているか

改善提案

業務改善の提案・実施状況

後輩指導

新人や後輩への指導・サポートへの協力

文化的配慮

発言量だけでなく、提案内容の実現や行動面も評価に含める


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4. 評価と給与テーブルの連動設計


評価と給与テーブルの連動設計

評価結果を給与に反映させる仕組みを明確にすることで、納得感が生まれます。


基本給与テーブルの例(製造業の場合)

等級

基本給(月額)

想定年収(賞与込)

昇給幅(年)

等級1

180,000円~

2,340,000円~

6,000~12,000円

等級2

200,000円~

2,600,000円~

8,000~15,000円

等級3

230,000円~

2,990,000円~

10,000~18,000円

等級4

270,000円~

3,510,000円~

12,000~20,000円

※地域・業種により最低賃金を考慮して調整が必要です。


評価ランクと昇給額の対応


半年または1年ごとの評価結果に応じて、昇給額を設定します。

評価ランク

評価基準

昇給額(年間)

賞与係数

S評価

目標を大幅に超過達成

+18,000円

基本給×4.0ヶ月

A評価

目標を十分に達成

+12,000円

基本給×3.5ヶ月

B評価

目標を概ね達成

+8,000円

基本給×3.0ヶ月

C評価

目標達成が不十分

+4,000円

基本給×2.5ヶ月

D評価

著しく目標未達

昇給なし

基本給×2.0ヶ月

手当の設定


給与テーブルには、以下の手当も含めて設計します(日本人と同等であること)。

手当名

支給内容

技能手当

資格取得や特定技能2号へ移行した場合(月5,000~20,000円)

役職手当

リーダー職に就いた場合(月10,000~30,000円)

資格手当

業界資格取得者(月3,000~10,000円)

皆勤手当

無遅刻・無欠勤の場合(月5,000円)

夜勤手当・残業手当

労働基準法に基づき支給


5. 昇給・昇格の基準例


昇給・昇格の基準例

昇格判定の流れ

年2回の評価サイクルを推奨します。


評価サイクル

昇格要件の具体例


等級1 → 等級2への昇格

  • ✅ 在籍6ヶ月以上

  • ✅ 直近2回の評価でB評価以上

  • ✅ 担当業務を単独で遂行可能

  • ✅ 安全研修を受講済み

  • ✅ 日本語能力N4以上(推奨)


等級2 → 等級3への昇格

  • ✅ 在籍1年6ヶ月以上

  • ✅ 直近2回の評価でA評価以上を1回以上取得

  • ✅ 複数業務の習熟

  • ✅ 後輩への指導経験あり

  • ✅ 業務改善提案を1件以上実施


等級3 → 等級4への昇格

  • ✅ 在籍3年以上

  • ✅ 直近3回の評価でA評価以上を2回以上取得

  • ✅ リーダー業務を補佐できる

  • ✅ 新人教育を担当した実績

  • ✅ 日本語能力N2以上(推奨)

  • ✅ 特定技能2号相当の技能試験合格


昇格時の処遇変更


昇格が決定した際は、以下を明確に伝えます。

  • 📄 昇格通知書の交付(日本語+母国語)

  • 💰 昇給額の明示(月額・年収ベース)

  • 🎯 新しい役割・期待値の説明

  • 📅 次の目標の設定


6. 評価面談の進め方|言語差への対応


評価面談の進め方|言語差への対応

評価面談は、評価結果を伝えるだけでなく、相互理解とモチベーション向上の場です。


面談の基本構成(30~45分)

ステップ

内容

① アイスブレイク(5分)

「最近の生活はどう?」などの雑談で緊張をほぐす

② 自己評価の確認(10分)

うまくできた仕事・難しかった点を本人から聞き、感じ方を理解する

③ 評価結果の説明(15分)

具体的なエピソードを用いて評価理由を説明(抽象的表現は避ける)

④ 改善点と次の目標設定(10分)

一方的に指摘せず、改善策と次の目標を一緒に考える

⑤ 質問・相談タイム(5分)

給与・キャリア・生活面などの質問や相談を受け付ける

言語差への5つの対応策

対応ポイント

内容

やさしい日本語を使う

専門用語を避けて言い換える(例:「改善余地がある」→「もっと良くできる」/「コンプライアンス」→「ルールを守ること」)

翻訳資料を準備する

評価シートは母国語版も用意(ベトナム語/インドネシア語/ミャンマー語/中国語/タガログ語)

通訳を活用する

重要な評価面談では通訳・バイリンガルスタッフが同席(守秘義務を徹底)

視覚資料を活用

グラフ・写真・図解(例:評価レーダーチャート)で理解を促進

録音・議事録を残す

本人同意の上で記録を残し、後日の確認で誤解を防止


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7. よくある質問(FAQ)


よくある質問(FAQ)

Q1. 日本人とまったく同じ評価制度でないとダメですか?


A: 基本的には同じ制度を適用すべきですが、「評価項目の説明の丁寧さ」「面談時の言語サポート」など、運用面での配慮を加えることは問題ありません。ただし、「外国人だから昇給が遅い」といった差別的運用は違法です。


Q2. 評価が低い場合、どう伝えれば傷つけずに済みますか?


A: 文化によっては、直接的な指摘を避ける傾向があります。以下のような伝え方が有効です。

区分

内容

NG例

「あなたはダメです」

OK例

「この部分は良かったです。次はここをもっと良くしましょう」

ポイント

改善点は1~2点に絞り、具体的なサポート方法も併せて提示する


Q3. 文化の違いで「評価基準が合わない」と言われたら?


A: 例えば、「積極的に発言する」ことが評価される日本企業の文化に、控えめな文化圏の人材が戸惑うケースがあります。この場合:

  • 評価基準の意図を丁寧に説明する

  • 「書面での提案」など、別の表現方法も認める

  • 文化研修を実施し、相互理解を深める


Q4. 評価者(日本人上司)のトレーニングは必要ですか?


A: 絶対に必要です。 評価者には以下の研修を実施しましょう。

  • 異文化理解研修

  • 評価バイアス防止研修(ハロー効果、ステレオタイプなど)

  • やさしい日本語研修

  • 労働法令の理解(同一労働同一賃金など)

評価者が無意識の偏見を持っていると、公平性が損なわれます。


8. まとめ|評価制度は「共に成長する仕組み」


まとめ|評価制度は「共に成長する仕組み」

特定技能外国人材の評価制度は、単なる給与決定の手段ではありません。それは企業と外国人材が共に成長するための対話の仕組みです。


評価制度設計の7つのステップ


導入への7つのステップ

評価制度がもたらす3つの価値

効果

内容

定着率の向上

キャリアの見通しが立ち、長期就労意欲が高まる

生産性の向上

明確な目標設定により、日々の業務への取り組みが改善

法令遵守とリスク回避

同一労働同一賃金を説明・証明でき、労務トラブルを予防


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