特定技能と技能実習の違いをわかりやすく解説
- sou takahashi
- 10月3日
- 読了時間: 14分
更新日:10月16日

目次:
1.はじめに:なぜ制度の違いを理解する必要があるのか
外国人材の受け入れを検討する際、制度ごとの違いを理解していないと、ミスマッチや思わぬトラブルにつながる恐れがあります。自社に合った制度を選ぶためには、それぞれの目的や運用の特徴を正しく把握しておくことが欠かせません。
外国人雇用の背景と広がり
近年、労働人口の減少により、多くの業種で人手不足が深刻化しています。特に製造業、建設業、介護業界では日本人だけでは人材が確保しきれず、外国人労働者の受け入れが進んでいます。
こうした背景の中で、技能実習制度や特定技能制度といった外国人の在留資格制度が注目されるようになりました。それぞれの制度には導入目的や運用ルールに違いがあるため、制度の本質を理解しないまま導入すると、想定外の手間やコストが発生したり、定着率に影響を与える恐れがあります。
特に中小企業では、一度採用を進めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも少なくありません。だからこそ、制度の特徴や違いを正しく把握し、自社の課題や目指す働き方に合った制度を選ぶことが求められています。
制度選択が企業にもたらす影響
外国人雇用制度の選択は、企業の採用効率や労働環境に大きく影響します。単に人手を確保するだけでなく、制度によっては教育コストや在留期間、定着率まで変わってくるため、長期的な視点での見極めが必要です。
比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
主な目的 | 人材育成・技能移転 | 即戦力の確保 |
導入のしやすさ | 比較的導入しやすい | 採用までに一定のハードルあり |
制限事項 | 期間・業務内容に制限あり | 柔軟な業務内容・長期雇用も可能 |
必要条件 | 特別な試験は不要(制度内で教育) | 技能試験・日本語試験の合格が必要 |
どちらを選ぶかによって、受け入れ態勢の構築や雇用後のフォロー体制にも違いが生じます。制度の理解が浅いまま進めてしまうと、現場でのトラブルや契約違反につながることもあるため、慎重に比較・検討することが企業のリスク管理にもつながります。
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2.技能実習制度の目的・特徴

技能実習制度は、開発途上国の人材に日本の技術や知識を習得してもらい、母国の発展に役立てることを目的にしています。企業側は単なる労働力確保ではなく、教育や指導を通じて技能移転を行うことが求められる制度です。
技能実習制度の概要と背景
技能実習制度は、開発途上国の人材に日本の技術や知識を移転し、母国の発展に役立てることを目的として1993年に始まりました。当初は国際貢献を主眼に置いていましたが、近年では人手不足を補う側面が強くなり、多くの企業が受け入れを進めています。
制度上は、技能を「学ぶ」ことが前提であり、受け入れ企業は労働力確保だけでなく、教育・指導の義務を負います。また、在留期間は最長5年で、業務内容や職種も限定されるため、柔軟性は高くありません。
制度の趣旨を理解しないまま活用すると、思わぬトラブルにつながることもあるため、基本的な枠組みや背景を正しく理解しておくことが重要です。
企業が活用する際のポイント
企業が技能実習制度を活用する際には、単に人手を確保する手段と考えず、教育・研修体制を整えることが不可欠です。受け入れ企業には、技能実習計画の策定や監理団体との連携、生活支援など、幅広い責任が課せられます。これを怠ると、制度違反やトラブルの原因になり、場合によっては受け入れ停止措置を受けることもあります。
また、技能実習生は「学び」に重点を置いているため、即戦力として活躍してもらうには時間が必要です。現場の教育担当者や指導体制を整えることで、定着率や生産性向上にもつながります。
さらに、文化や言語の違いにも配慮したコミュニケーションの仕組みを整えることが、実習生の安心感や企業への信頼感を高めるうえで重要です。こうした準備を徹底することで、技能実習制度を企業にとって有益な制度にすることができます。
3.特定技能制度の目的・特徴

特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するため、即戦力となる外国人材を受け入れる仕組みとして導入されました。一定の技能と日本語能力を持つ人材が対象で、現場で実務を担う労働力として活用できる点が大きな特徴です。
特定技能制度の創設背景と概要
特定技能制度は、深刻な人手不足が続く分野において即戦力となる外国人材を受け入れるために2019年に創設されました。従来の技能実習制度が「技能移転」を目的としていたのに対し、特定技能制度は「労働力確保」に主眼が置かれている点が特徴です。

受け入れ可能な職種は限定されていますが、在留資格は最長5年(特定技能1号)から更新可能な2号まで用意されており、長期雇用にも対応しています。また、試験制度や日本語能力の条件が設定されているため、一定のスキルや語学力を備えた人材が対象となります。
これにより、現場で即戦力として働ける外国人を確保しやすくなる一方、企業側にもサポート体制の整備が求められます。
対象業種と受け入れ条件
区分 | 対象分野(最新情報) |
特定技能1号 | 介護、建設、農業、飲食料品製造業、外食業、宿泊、ビルクリーニング、自動車整備、航空、漁業、林業、木材産業、鉄道、自動車運送業、工業製品製造業、造船・舶用工業(計16分野) |
特定技能2号 | 建設、造船・舶用工業、製造業、外食業、宿泊、農業、飲食料品製造業、自動車整備、ビルクリーニング、漁業、林業(計11分野) |
受け入れ条件として、外国人本人が業種ごとの技能試験および日本語試験に合格している必要があり、技能実習を修了していれば一部試験が免除される場合もあります。
企業側は、適正な雇用契約を結ぶことに加え、生活支援や相談窓口の設置など、外国人が日本で安心して働ける環境を整える義務があります。
特に、労働条件や福利厚生が適正でなければ許可が下りないため、採用前に体制を整備することが不可欠です。こうした要件を満たすことで、優秀な外国人材を確保し、持続的な雇用環境を築くことができます。
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4.両者の違いを比較(目的・在留期間・費用・採用フロー)

技能実習は「人材育成」が目的で、特定技能は「即戦力の確保」が軸となります。在留期間や更新可否、かかる費用、採用の流れにも大きな違いがあるため、導入前に制度ごとの特徴を丁寧に比較することが重要です。
制度目的・在留期間・移行性の比較
技能実習制度と特定技能制度は、制度の目的そのものが大きく異なります。
比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
制度の目的 | 技能の移転を通じた国際貢献 | 即戦力の外国人材による人手不足の解消 |
労働力としての位置づけ | 副次的(主目的は教育・育成) | 主たる目的(労働力としての受け入れ) |
在留期間 | 最長5年 | 1号:最長5年2号:更新可能な長期在留が可能 |
制度間の移行 | 一部職種で特定技能1号への移行が可能 | ― |
このように、どちらの制度も外国人材を受け入れる仕組みではありますが、その前提や長期的な雇用のしやすさには明確な違いが存在します。
採用コスト・手続き・支援体制の違い
採用にかかるコストや手続きの複雑さも、技能実習制度と特定技能制度では大きく異なります。
比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
雇用形態 | 監理団体を通じた間接的な受け入れ | 企業による直接雇用が基本 |
初期費用 | 団体への手数料・各種申請費用が発生 | 紹介機関を使わなければ費用を抑えられる可能性あり |
手続き対応 | 監理団体が主に対応 | 企業が採用から在留資格取得まで主体的に対応 |
支援体制 | 監理団体が生活支援を実施 | 企業に生活支援・定着支援の義務(住居・相談体制の整備など) |
向いている企業 | 初期費用や手続き負担を軽減したい企業 | 長期雇用・柔軟な働き方を希望する企業 |
どちらの制度が自社に合っているかを見極めることが重要です。
5.移行制度:技能実習から特定技能へのステップ

技能実習を修了した外国人は、条件を満たすことで特定技能へ移行することが可能です。この制度は、段階的にスキルアップした人材を継続的に雇用できる仕組みとして注目されており、企業側にも柔軟な活用が求められます。
移行可能な条件と必要な試験
技能実習を修了した外国人が、特定技能1号へ移行する道が開かれています。これは、実習を通じて基礎的な技能を習得した人材が、より実践的な業務で活躍できるようにするための措置です。対象となるのは、原則として技能実習2号を良好に修了した者で、一定の条件を満たす必要があります。
業種によっては、移行時に「技能試験」および「日本語試験」が免除されるケースもありますが、すべての職種が対象ではありません。たとえば介護分野では、技能実習からの移行であっても、介護日本語評価試験などの条件をクリアしなければなりません。また、在留資格の変更申請には、修了証明書や技能実習中の成績、勤務実績の証明など、多くの書類を整える必要があります。
試験が免除されるかどうかは職種によって異なるため、移行を検討する際には、最新の要件を必ず確認しておくことが大切です。
移行対象分野・職種の例
大分野 | 技能実習での職種・作業例 | 特定技能1号の分野 | 備考 |
農業・畜産 | 施設園芸、畜産(養豚・養鶏等) | 農業(耕種・畜産) | 実習作業が農業関連であれば移行可能性が高い |
漁業 | 延縄漁業、養殖業など | 漁業 | 実習→特定技能漁業分野へ移行可能 |
建設 | 型枠、鉄筋、左官、内外装、配管、塗装、造船関連など | 建設・造船/舶用工業 | 多様な工種が移行対象に含まれているが、全てではない |
食品製造 | 加工、調理、缶詰、ハム・ソーセージ製造など | 飲食料品製造 | 実習で食品製造に従事していた例が移行対象として挙げられる |
繊維・衣服 | 縫製、染色、ニット製造、布製品加工など | 繊維・衣服 | 実習と対応する特定技能分野があるが、注意が必要(すべての作業が対象とは限らない) |
機械・金属・電気電子 | 溶接、機械加工、電子機器組立、プレス加工、金属加工など | 素形材・産業機械・電気電子情報関連 | 実習内容と特定技能分野の業務内容が一致すれば移行可能性あり |
その他 | ビルクリーニング、印刷、木工、プラスチック成形、宿泊業、外食業、介護等 | 対応する各分野 | 実習職種・作業が特定技能分野と整合することが条件 |
実務上の注意点とサポート体制
技能実習から特定技能への移行には、実務面での注意点がいくつかあります。
まず、在留資格の変更手続きが複雑であるため、申請時期や必要書類の不備によって就労の空白期間が発生することがあります。本人任せにせず、企業側が主導してスケジュール管理を行うことが欠かせません。
また、技能実習では監理団体が中心となってサポートを行っていましたが、特定技能に移行した後は企業が直接生活支援を担うことになります。住居の手配、生活オリエンテーション、相談窓口の設置など、支援内容は多岐にわたります。とくに、労働条件の変更や職場環境の違いに戸惑う人も多いため、丁寧なフォローが必要です。
さらに、企業側の体制が整っていないと、在留資格の更新や支援記録の提出など、制度上の義務を果たせないリスクも生じます。移行はチャンスである一方、受け入れる企業にとっては責任も増すことを念頭に置き、長期的な視点で体制構築を行うことが求められます。
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6.どちらを選ぶべきか?ケース別の検討ポイント

育成前提で人材を受け入れたい場合は技能実習、すぐに戦力として働ける人材が必要な場合は特定技能が適しています。業種や人手不足の状況、将来的な雇用方針に応じて、制度を選び分けることが大切です。
業種・人材ニーズ別の制度選定
制度選びの第一歩は、自社の業種と人材ニーズを明確にすることです。
比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
向いている業種 | 製造業、農業など(教育を重視する職場) | 外食業、介護など(即戦力が求められる職場) |
人材タイプ | 初心者から育成したい人材 | 一定の技能と日本語力を持つ即戦力人材 |
教育のしやすさ | 制度に育成要素あり、丁寧に教えたい企業に適している | 基礎スキル習得済のため、即戦力としての採用が可能 |
在留期間の考慮 | 最長5年(更新不可) | 1号:最長5年、2号:更新可能で長期雇用が視野に入る |
制度選定の目安 | 時間をかけて育てたい/短期的に活用したい場合 | 早期に戦力化したい/長期雇用も見据えたい場合 |
目先のニーズだけでなく、1~3年後の人材戦略も見据えて検討することが重要です。
長期的な雇用戦略との整合性
外国人雇用は一時的な対策ではなく、長期的な人材戦略の一環として捉えるべきです。その観点で考えると、制度選びも慎重にならざるを得ません。たとえば、将来的にリーダー候補として育成したい場合や、同じ人材と長く働き続けたい場合は、在留期間の延長が可能な特定技能2号への移行も視野に入れることができます。
前述の通り、技能実習制度は原則5年までの滞在で、長期雇用には制限があります。一方の特定技能制度は、職種によっては在留更新や家族帯同が可能となり、より柔軟な雇用設計が可能です。この違いが、将来的な人材の定着やキャリア設計にも大きく関わってきます。
さらに、企業の価値観や職場文化との相性も無視できません。たとえば、多文化共生を重視し、外国人スタッフを中核戦力として位置付けたい企業であれば、特定技能制度の活用がより実践的です。
制度のメリット・デメリットを踏まえながら、自社の成長と持続可能な人材戦略に合った選択をすることが求められます。
7.よくある質問

技能実習から特定技能に移行できる?
はい、一定の条件を満たせば技能実習から特定技能への移行は可能です。技能実習2号を良好に修了していることが前提で、対象職種であれば試験が免除されるケースもあります。制度ごとの要件を事前に確認しておくとスムーズです。
どちらがコストや定着率に優れる?
初期費用は技能実習の方が高めですが、監理団体の支援を受けられるメリットがあります。一方、特定技能は支援義務が企業側にあるため、負担は増えるものの、長期的には定着率が高まる傾向も見られます。目的に応じて使い分けが必要です。
採用の流れはどう変わる?
技能実習では監理団体を通じた受け入れが主流で、採用プロセスも団体がサポートします。特定技能は基本的に企業が直接採用する形のため、試験合格者のマッチングや支援計画の策定など、より主体的な対応が求められます。
8.まとめ

外国人材の受け入れを検討するうえで、技能実習制度と特定技能制度の違いを正しく理解することは欠かせません。両者は目的や運用ルールが大きく異なり、企業の人材戦略に与える影響も小さくありません。
短期間での育成や教育が前提の技能実習か、即戦力として長期的に働ける特定技能か、自社のニーズや現場の実情に合った制度を選ぶことが重要です。
また、採用後の支援体制やコスト、在留資格の更新可否なども見落としがちなポイントです。制度を上手に活用することで、単なる人手不足解消にとどまらず、職場の活性化や組織の多様性向上にもつながります。目先の課題だけでなく、将来を見据えた制度選びが、企業と外国人材の双方にとって良い結果を生み出す第一歩になるでしょう。
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