特定技能とは?制度の仕組みを図解でわかりやすく解説【2026年最新版】
- sou takahashi
- 6 日前
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目次:
「特定技能って最近よく聞くけど、正直何のことか分からない…」
そんな声を、人事担当者や経営者の方からよく耳にします。特定技能制度は2019年4月に創設され、現在では約24万人の外国人が就労する、日本の外国人材受入れの中核制度に成長しました。
2024年から2025年にかけて対象分野の拡大、在留期間の延長、定期届出の簡素化など大幅な改正が行われ、さらに2026年4月には事務手続きの大幅簡素化も予定されています。
本記事では、「特定技能とは何か?」という基礎から、「自社で活用できるのか?」までを、専門知識ゼロの方にも分かるように徹底解説します。
読み終わる頃には、特定技能制度の全体像と、自社での検討要否が判断できる状態になります。
1. 特定技能とは?|30秒で分かる制度の全体像

特定技能を一言で言うと?

「特定技能」とは、人手不足が深刻な業種で、即戦力の外国人を雇える制度です。

なぜ今「特定技能」が注目されているのか?

日本の生産年齢人口(15〜64歳)は2050年までに約3割減少する見込みです。すでに多くの業種で「求人を出しても人が来ない」「既存社員の負担が限界」といった声が聞かれ、人手不足は経営の最重要課題となっています。
こうした状況を背景に、特定技能制度は技能実習に代わる、より実態に即した外国人材受入制度として期待されています。実際、2024年から2025年にかけて対象分野が12分野から16分野へ拡大し、在留期間も延長されるなど、制度はどんどん使いやすく改善されています。
2026年4月にはさらに届出の簡素化も予定されており、中小企業でも活用しやすい制度へと進化を続けています。
なぜこの制度ができたのか?
深刻化する人手不足少子高齢化による労働力不足は待ったなしの状態です。特に介護、建設、製造、農業では「人がいないと事業が回らない」という企業が続出しています。日本人の採用だけでは限界があり、外国人材の活用が不可欠になってきました。
技能実習制度の限界従来の技能実習制度は「国際貢献・技能移転」が建前で、制度上は「労働者ではない」扱いでした。しかし実態は労働力として活用されており、この建前と実態のギャップが様々な問題を生んでいました。転職ができない、待遇面での課題など、制度の矛盾が表面化したのです。
特定技能制度の誕生こうした背景から、2019年4月に「人手不足解消」を明確な目的とした特定技能制度がスタートしました。即戦力人材の受入れ、同一分野内での転職可能、長期就労の道も整備され、より実態に即した制度として運用されています。
関連記事:特定技能の制度と在留資格を徹底解説
2. 1号と2号の違い|超シンプルに理解する

まず押さえる:1号と2号は"レベル"の違い
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。これは簡単に言うと、技能レベルの違いです。
区分 | 位置づけ・レベル |
特定技能1号 | 一定の技能を有する人材(目安:実務経験2〜3年レベル) |
特定技能2号 | 熟練した技能を有する人材(ベテランレベル) |
1号・2号の違い
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
働ける期間 | 最長5年(特例で6年) | 無期限(更新し続けられる) |
家族を呼べるか | ×呼べない | ○呼べる(配偶者・子) |
転職 | ○可(同じ分野内) | ○可(同じ分野内) |
企業の支援義務 | ○あり | ×なし |
対象分野 | 16分野 | 11分野 |
永住権申請 | ×不可 | ○可能 |
実務上、ほとんどの企業は「1号」からスタート
特定技能2号は高度な技能が必要なため、ほとんどの企業はまず「1号」で外国人を雇用します。その後、1号で働きながら経験を積み、2号の技能試験に合格すれば2号へ移行できる仕組みです。
企業にとっては、1号で採用→経験を積んで2号へ移行→長期雇用という流れで、優秀な人材を長く確保できるメリットがあります。
よくある誤解|特定技能と技能実習の違い
誤解①「技能実習と同じでしょ?」
違います。目的も条件も全く別の制度です。
項目 | 技能実習 | 特定技能 |
目的 | 国際貢献(技能移転) | 人手不足解消 |
転職 | 原則不可 | 可能(同一分野内) |
在留期間 | 最長5年 | 1号:最長5年、2号:無期限 |
入国時の技能 | 不問 | 試験合格または実習修了が必要 |
技能実習は「技能を教えて母国に持ち帰ってもらう」ことが建前なので転職は原則不可ですが、特定技能は「労働力確保」が目的なので、同一分野内であれば転職できます。
誤解②「外国人は安く雇える」
これも大きな誤解です。特定技能制度では、日本人と同等以上の給与を支払うことが法律で義務付けられています。「外国人だから安く」という考え方は違法であり、受入れ要件を満たせません。
3. どんな企業が特定技能を使えるの?|対象16分野と向き不向き

対象は「16の特定産業分野」のみ
特定技能制度は、すべての業種で使えるわけではありません。政府が「人手不足が深刻」と認めた以下の16分野に限定されています。

【製造・生産系】
工業製品製造業(金属加工、機械組立、電気機器組立など)
飲食料品製造業(食品工場での製造・加工など)
造船・舶用工業
【建設・インフラ系】
建設(型枠施工、左官、とび、建築大工など)
自動車整備
航空(グランドハンドリング、航空機整備など)
鉄道(運転士、車掌、駅係員、車両製造・整備)※2024年追加
自動車運送業(バス、タクシー、トラック運転手)※2024年追加
【サービス系】
介護
ビルクリーニング
宿泊(ホテル・旅館のフロント、接客など)
外食業(飲食店での接客、調理補助など)
【一次産業系】
農業(耕種農業、畜産農業)
漁業(漁業、養殖業)
林業(育林、伐木、搬出など)※2024年追加
木材産業(原木の選別、製材、木材加工など)※2024年追加
「うちの会社は該当する?」簡単チェック
以下の4つすべてに当てはまれば、特定技能外国人の受入れを検討できます。
□ 上記16分野に該当する事業を行っている
□ 労働関係法令を遵守している(過去に違反歴がない)
□ 日本人と同等以上の給与を支払える
□ 外国人の生活支援体制を整えられる(または登録支援機関に委託できる)
特定技能が向いている企業

観点 | 内容 |
人手不足の深刻さ | 求人を出しても応募が来ない、既存社員の負担が限界に近い企業。特定技能は即戦力確保につながる |
長期的な人材育成 | 1号で採用し育成、2号へ移行することで10年・20年の長期雇用や技術継承、リーダー育成が可能 |
生活サポート体制 | 自社で支援担当者を配置、または登録支援機関(月2〜4万円程度)に委託できる体制がある |
地域環境 | 地域に外国人コミュニティや受入実績があり、住居確保・生活インフラが整いやすい |
特定技能が向かない企業

該当しないケース | 理由 |
対象16分野に該当しない | 制度の対象外のため利用不可 |
短期雇用のみを想定 | 特定技能は中長期雇用前提で、繁忙期だけのスポット雇用には不向き |
労働環境に問題がある | 労働基準法違反、最低賃金未払い、社会保険未加入などは受入不可 |
コスト削減が主目的 | 日本人と同等以上の処遇が必須で「安く雇う」発想は不可 |
受入体制を整える意思がない | 支援義務を果たせない企業は不可(※登録支援機関への委託は選択肢) |
判断に迷ったら?
「うちの会社は該当するかな?」「向いているのかな?」と判断に迷う場合は、登録支援機関や行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。無料相談を実施している機関も多く、自社の状況を客観的に診断してもらえます。
4. 受入れの流れと費用|実際どうやって雇うの?

受入れまでの6ステップ
特定技能外国人を実際に雇用するまでの流れは、以下の6ステップです。

「難しそう…」と思ったら?
「手続きが複雑で無理」と感じる方も多いではないでしょうか。しかし、登録支援機関に委託すれば、STEP4〜6のほとんどを代行してもらえます。実際、多くの中小企業がこの方法で特定技能外国人の受入れを実現しています。
受入れにかかる主な費用
区分 | 内容・目安 |
① 給与・社会保険料 | 日本人と同等以上の給与(目安:月給18〜25万円 ※業種・地域差あり)+健康保険・厚生年金の事業主負担 |
② 支援委託費 | 登録支援機関へ委託する場合:1人あたり月2〜4万円 |
③ 申請費用 | 行政書士へ依頼する場合:初回10〜20万円程度 |
④ 求人費用 | 人材紹介会社利用時:年収の20〜30%(初回のみ) |
重要なポイント:
「外国人だから安く雇える」という考えは通用しない
給与・社会保険料は日本人と同等以上が原則
登録支援機関への委託費や各種手続費用が追加で発生する
総コストは日本人雇用とほぼ同等になるケースが多い
ただし、人手不足で事業が回らない・受注を失うリスクと比較すれば、十分に検討に値する選択肢
よくある質問
Q1:英語が話せないと受け入れは難しいですか?
A: 問題ありません。特定技能外国人は日本語能力試験N4レベル以上に合格しており、基本的な日本語でのコミュニケーションが可能です。英語力は必須ではありません。
Q2:途中で帰国されるリスクはありませんか?
A: 適切な待遇と支援があれば、定着率は高くなります。登録支援機関のサポートを活用し、定期面談や相談対応を行うことで、離職リスクを抑えられます。
Q3:自社だけで受け入れできますか?
A: 制度上は可能ですが、多くの企業は登録支援機関に委託しています。特に初めて受け入れる場合は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
5. 2026年に向けた制度改正|どんどん使いやすくなっています

企業にとって何が変わる?
① 在留期間の延長(2025年9月施行済み)
項目 | 内容 |
改正内容 | 特定技能1号の在留期間延長(2025年9月施行済み) |
改正前 | 最長1年ごとの更新 |
改正後 | 最長3年を一度に付与可能 |
特例措置 | 特定技能2号試験の受験準備中などの場合、最大6年まで在留可能 |
企業側のメリット | 更新手続き回数が減少し、事務負担が軽減 |
外国人材側のメリット | 在留の安定性が高まり、安心して長期就労が可能 |
② 定期届出の簡素化(2026年4月施行予定)
項目 | 内容 |
現行制度 | 特定技能外国人の受入状況を四半期ごと(年4回)に出入国在留管理局へ届出 |
変更内容 | 年1回の届出に変更予定 |
施行予定 | 2026年4月から |
企業側のメリット | 事務負担が年4回→年1回に軽減 |
リスク低減 | 届出漏れ・期限管理ミスのリスクが大幅に低下 |
③ 対象分野の拡大(2024年3月施行済み)
項目 | 内容 |
閣議決定 | 2024年3月 |
特定技能1号の変更 | 対象分野が12分野 → 16分野に拡大 |
新たに追加された4分野 | 自動車運送業/鉄道/林業/木材産業 |
特定技能2号の変更 | 対象分野が2分野 → 11分野に拡大 |
今後の方向性
政府は特定技能外国人の受入れをさらに拡大する方針を示しており、制度はどんどん使いやすく改善されています。「様子見」をしている間に、競合他社が先に優秀な外国人材を確保しているケースも増えています。
人手不足が深刻化する中、特定技能制度は今後ますます重要な人材確保の選択肢となるでしょう。
6. まとめ|特定技能は「選択肢の一つ」として知っておくべき制度

項目 | 内容 |
特定技能とは | 人手不足が深刻な16分野で即戦力の外国人を雇用できる制度。2019年開始、約24万人が就労中 |
1号と2号の違い | 1号:最長5年(特例で6年)/2号:在留期間の上限なし。長期雇用が可能 |
利用できる企業 | 16の特定産業分野に該当し、適切な雇用条件・支援体制を整えられる企業 |
向いている企業 | 慢性的な人手不足があり、長期的な人材育成を考えている企業 |
費用感 | 日本人雇用とほぼ同等。「安く雇える」という考えは誤解 |
制度改正の動き | 2026年に向けて制度改善が進行中(在留期間延長、届出の簡素化など) |
次のアクション
「まだ検討段階にもない」という企業の方へ

