特定技能外国人材の定着率を左右する“企業側の準備”とは?採用前後でやるべきこと
- sou takahashi
- 7 日前
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目次:
「せっかく採用したのに、1年も経たずに辞めてしまった」
特定技能制度を活用する企業が増える一方で、このような早期離職の悩みを抱える現場担当者は少なくありません。同じ業種、同じ国籍の人材を採用していても、「長く定着して活躍する企業」と「人が入れ替わり続ける企業」には明確な差があります。
ありがちな誤解として、「外国人は給料の良いところへすぐに転職するから仕方がない」と諦めてしまうケースがあります。しかし、実際の離職理由を深掘りすると、給与条件そのものよりも「入社前の期待値とのズレ」や「現場での孤立」「将来への不安」といった、受け入れ環境のミスマッチが原因であることの方が圧倒的に多いのです。
本記事では、特定技能外国人材が「この会社で長く働きたい」と思える環境を作るために、企業側が採用前から配属後にかけて行うべき具体的な準備と設計について解説します。定着の鍵は、人事だけでなく現場や管理者を巻き込んだ「仕組みづくり」にあります。
1. 定着率が企業ごとに大きく違う理由(なぜ差が出る?)

1-1. 離職理由は「外国人だから」ではなく「環境が合わない」ことが多い
「文化が違うから」「国民性が違うから」という理由で片付けてしまうと、本当の原因が見えなくなります。日本人社員が離職する理由と同様に、人間関係、業務の不透明さ、キャリアの見えなさが主な要因です。
特に外国人の場合、言葉の壁があるため「情報が入ってこない」という不安が増幅されやすく、小さな不満が解消されないまま蓄積して爆発する(離職する)というパターンに陥りがちです。

1-2. 差が出るのは「制度対応」ではなく「運用設計」
特定技能には義務化された「支援計画」がありますが、これはあくまで最低ラインの法的要件です。定着率の高い企業は、この書類作成だけでなく、現場での「運用設計」に力を入れています。
例えば、「母国語での相談窓口があります」と書類に書いてあっても、現場で実際に「上司が高圧的で相談する隙がない」状態であれば、その制度は機能していません。「評価制度があります」と言っても、それが本人に伝わる言葉で説明されていなければ、評価されていないのと同じです。
1-3. 定着は採用後より「採用前」から始まっている
実は、早期離職の種は「採用面接〜入社前」に撒かれています。最も多いのが「期待値ギャップ」です。
「残業がたくさんあるから稼げる」と聞いていたのに実際は少なかった、あるいは逆に「楽な仕事」だと思っていたのに肉体労働だった、寮が想像以上に古かった、といったギャップが、入社直後のモチベーションを急激に下げます。

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2. 採用前にやるべき準備(ミスマッチを減らす設計)

採用活動を始める前に、受け入れ体制の「解像度」を上げておくことが、後の定着率を決定づけます。
2-1. 「仕事内容・条件」を具体化し、事前にズレを潰す
求人票や面接での説明は、曖昧な表現を避けて具体的に伝えます。
仕事内容:「製造業務」ではなく「ラインに立って部品を検品する作業。1日8時間立ち仕事」など具体的に。
労働条件:基本給と手当の内訳、残業時間の目安(繁忙期と閑散期の差)、昇給の条件を数字で示す。
配属環境:どんなチームで、誰が上司になるのか。日本人は何人いるか。
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2-2. 生活面の受入れ設計(職場外の不安を減らす)
仕事以外の生活の基盤が整わないと、業務に集中できません。住居の手配、電気・ガス・水道の契約、銀行口座開設、携帯電話契約、最寄りのスーパーや病院の案内など、生活立ち上げのサポート計画を立てておきます。これらは登録支援機関に委託することも可能ですが、企業側も「どこまでサポートするか」を把握しておく必要があります。
2-3. 多言語化・見える化(伝わる前提を整える)
「見て覚えろ」は通用しません。マニュアルやルールは、写真やピクトグラムを多用し、「やさしい日本語」または母国語を併記したものを用意します。
特に「禁止事項」や「安全ルール」は、曖昧な「暗黙の了解」にせず、明文化して掲示することが事故防止とストレス軽減につながります。
2-4. キャリアと評価の“見える化”を採用前から示す
「この会社で3年頑張ったらどうなれるのか」を見せることが重要です。「日本語検定N3に合格したら手当+5,000円」「機械操作をマスターしたらリーダー昇格」など、小さなステップでも良いので階段を用意しましょう。

3. 配属直後の初動設計(オンボーディングで差がつく)

入社直後の90日間は、最も離職リスクが高い「魔の期間」とも呼ばれます。ここでしっかりと手を繋げるかどうかが勝負です。
3-1. 最初の1週間・1か月の“型”を決める
行き当たりばったりの指導ではなく、標準的なオンボーディングのスケジュール(型)を決めておきましょう。

3-2. メンター(指導担当者)を決め、役割を明確化
「わからないことがあったら誰に聞けばいいか」が明確であることが安心感を生みます。指導役(メンター)は、業務を教えるだけでなく、精神的な支えや、他の日本人社員との橋渡し役も担います。
重要なのは、メンター自身の業務負荷を調整し、評価することです。「自分の仕事もしながら面倒を見る」だけでは、メンター自身が疲弊し、指導がおろそかになります。
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3-3. 定期面談(1on1)を仕組みにする
「何かあったら言ってね」では、遠慮して言えません。強制的に話す場を設けることが重要です。
頻度:入社1ヶ月目は週1回、それ以降は月1回など。
聞く項目:「困っていることはないか」「体調はどうか」「家族とは連絡をとれているか」「今の仕事の理解度」など、定型質問を用意します。
問題が起きてから対処するのではなく、問題が起きる前の小さな違和感を拾うのが目的です。
4. 現場・管理者の関与(定着は「人事」だけでは作れない)

採用担当者がどんなに良い制度を作っても、実際に毎日顔を合わせる現場の管理者が理解していなければ意味がありません。
4-1. 現場責任者が押さえるべき3つの視点
伝え方:抽象的な指示(「あれやっておいて」「適当に」)を避け、具体的かつ「やさしい日本語」で伝える。
期待値コントロール:最初から日本人と同じスピードや品質を求めず、段階的な成長目標を設定する。
承認とフィードバック:「できていること」を具体的に褒め、改善点は理由とともに伝える。
4-2. 管理者向けの“受入れ研修”を用意する
現場リーダー向けに、異文化理解や「やさしい日本語」の研修を行うことが効果的です。特に「叱り方」や「指示の出し方」の統一は必須です。

人事と現場が連携し、役割を分担することが定着の鍵です
4-3. チーム側の受け入れ姿勢を整える(孤立を防ぐ)
チーム全体で「新しい仲間」として迎え入れる雰囲気を作ります。朝礼での紹介、ランチ会、休憩時間の声かけなど、業務外のコミュニケーションが孤立を防ぎます。
また、差別的な発言や、特定の国籍に対する偏見に基づくハラスメントは絶対に許さない姿勢を会社として示す必要があります。

5. よくある勘違い(失敗しやすい企業の落とし穴)

最後に、定着に失敗する企業が陥りやすい「勘違い」を整理します。
5-1. 「支援機関に任せれば定着する」
登録支援機関は生活支援や行政手続きのプロですが、日々の業務指導や職場の人間関係までは介入できません。定着の根幹は「職場」にあります。
5-2. 「日本語が上手なら問題ない」
日本語能力が高くても、業務の進め方や評価に納得がいかなければ辞めます。むしろ日本語ができる人材ほど、より良い条件の情報を自分で集められるため、職場環境が悪ければすぐに見切りをつけます。
5-3. 「採用できた=成功」
採用はスタートラインに過ぎません。コストを回収し、戦力となるのは入社後半年〜1年後です。「定着」こそが採用のゴールです。
5-4. 「文化が違うから仕方ない」
遅刻や欠勤などのトラブルを「文化の違い」で片付けず、日本のルールの「理由」を論理的に説明し、納得してもらうプロセスを怠っているケースが多いです。丁寧に説明すれば理解してくれることがほとんどです。
6. まとめ

特定技能外国人材の定着率は、人材の質以上に、企業側の「準備の質」に左右されます。
「採用前」「配属直後」「現場運用」の3つのフェーズで、自社の体制に抜け漏れがないか、最後に確認してみてください。

これらを一つずつクリアにしていくことで、特定技能人材は企業の強力な戦力となり、長期的な定着へとつながっていきます。




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