外国人材とのコミュニケーションがうまくいかない理由|日本企業が陥りやすい誤解
- sou takahashi
- 3 時間前
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外国人材とのコミュニケーションに課題を感じている企業は少なくありません。多くの場合、「日本語ができれば解決する」と考えられがちですが、実際には"構造・前提のズレ"が原因であることが大半です。
本記事では、日本企業が陥りやすい誤解とその背景にある「暗黙知」「察する文化」の問題を整理し、すれ違いを減らすための具体的な考え方と対策を解説します。

1. 「伝わらない」の正体は"言語"ではなく"前提"のズレ

外国人材とのコミュニケーションにおいて「伝わらない」という課題が発生したとき、多くの企業は「日本語力の問題」と判断しがちです。しかし実際には、言語能力以上に「前提の共有不足」が原因となっているケースが圧倒的に多いのです。
1-1. 企業側の認識ギャップ:言語問題に見える3つの典型
一見すると「日本語が通じていない」ように見える場面でも、その裏には構造的な問題が隠れています。以下の3つは、現場で非常によく起こるパターンです。

これらは日本語能力の問題ではなく、「何を・いつまでに・どのレベルで・誰に報告するか」という情報が抜け落ちていることが原因です。日本人同士であれば「常識」や「空気」で補完される部分が、異文化では補完されないのです。
1-2. 「情報の欠落」が事故を生む:誰が何を知っている前提か
日本の職場では、「言わなくてもわかるはず」という前提でコミュニケーションが成立しています。これは言語学で「ハイコンテクスト文化」と呼ばれ、共有された文脈や背景知識に依存するコミュニケーションスタイルです。
しかし、異なる文化背景を持つ外国人材にとっては、この「共有された文脈」が存在しません。その結果、以下のような"情報の欠落"が発生します。

「言ったつもり」「分かったつもり」が起きる構造
指示する側は「伝えた」と認識し、受け取る側は「聞いた」と認識していても、実際に共有されている情報量には大きな差があります。この認識のズレが、ミス・トラブル・不信感を生む根本原因となります。
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2. 日本企業が陥りやすい誤解|"暗黙知・察する文化"の落とし穴

日本の職場文化は、「明示しないコミュニケーション」に大きく依存しています。これは日本人同士では効率的に機能しますが、異文化出身の外国人材にとっては「見えないルール」として大きな障壁になります。
2-1. ハイコンテクスト(察する)前提のコミュニケーション
日本語は世界でも特に「省略が多い言語」として知られています。主語や目的語が省略されることが日常的であり、さらに婉曲表現や遠回しな言い方が好まれます。

日本人同士であれば、「文脈」「表情」「状況」から意図を読み取ることができますが、言語・文化背景が異なる場合、この"察する力"に頼ったコミュニケーションは機能しません。
2-2. 曖昧表現が増やす誤解
日本語には、あいまいさを含んだ表現が数多く存在します。これらは柔軟性やクッション言葉として機能する一方、業務指示においては致命的な誤解を生む原因となります。

特に問題なのは、YES/NOが曖昧になることです。業務においては明確な判断基準が必要であり、「たぶん大丈夫」「まあいいんじゃない」といった表現では、外国人材は行動を起こせません。
2-3. 指示が"お願い"に見える問題
日本語では、命令形を避けて「〜してもらえる?」「〜していただけますか?」という丁寧な依頼形を使うことが一般的です。しかしこれが、外国人材には「任意のお願い」として受け取られることがあります。

業務指示に必要な情報
①何を / ②いつまでに / ③どのレベルで / ④誰に報告するか の4点がセットで伝わっていない場合、指示は「伝わっていない」と認識すべきです。
3. 外国人材側が戸惑うポイント|「わからない」の背景

ここまでは企業側の課題を見てきましたが、外国人材の視点からも「何が分かりにくいのか」を理解することが重要です。特に特定技能人材や現場で働く外国人材が直面する戸惑いには、共通するパターンがあります。
3-1. "正解が見えない"職場ルール
日本の職場には、明文化されていない「暗黙のルール」が数多く存在します。これらは日本人にとっては「当たり前」ですが、異文化出身者にとっては「見えないルール」として大きな混乱を招きます。

マニュアルに書かれていない「現場の常識」は、外国人材にとっては存在しないのと同じです。明文化されていない評価基準やルールは、不安と混乱を生む原因となります。
3-2. 注意・指導の受け取り方の違い
日本の職場では、「その場での指摘」が一般的ですが、文化によっては「人前で注意される」ことが非常に大きな屈辱と受け取られる場合があります。

✅改善につながる指導の条件
①何がダメだったのか(具体的な事実)②なぜダメなのか(理由・影響)③次に何をすれば良いのか(具体的な改善行動)この3点が明確でないと、外国人材は「何を直せばいいか分からない」まま不安だけが残ります。
3-3. 日本語力と"業務日本語"は別物
日常会話ができる外国人材でも、業務に必要な日本語となると難易度が一気に上がります。これは多くの企業が見落としがちなポイントです。

特に以下のような言葉は、外国人材にとって大きな障壁となります。

「日本語が話せる」と「業務に必要な日本語が理解できる」は別物です。受け入れ側は、業務日本語の習得支援と、多言語対応ツールの併用を検討する必要があります。
4. すれ違いを減らすための考え方|"伝え方"を仕組みにする

ここまで見てきた課題を踏まえ、具体的にどのように改善すればよいのか、実践的な対策を解説します。重要なのは、「伝え方を個人の能力に依存させず、仕組みとして標準化する」という考え方です。
4-1. ルール化:仕事の「完成条件」を明文化する
最も効果的な対策は、業務の「完成条件」を明文化することです。曖昧な指示を排除し、以下の4要素を明確にします。


このように具体的かつ測定可能な基準を示すことで、認識のズレは大幅に減少します。
4-2. 伝達は「口頭+視覚+確認」をセットにする
口頭だけの指示は、言語の壁がある場合、抜け漏れや誤解が起きやすいのが現実です。より確実に伝えるためには、複数の手段を組み合わせることが重要です。

翻訳ツールの位置づけ
Google翻訳やポケトークなどの翻訳ツールは便利ですが、「最後の補助手段」として運用ルールを決めることが重要です。機械翻訳に頼りすぎると、業務日本語の習得が進まず、長期的な戦力化が遅れる可能性があります。
4-3. 確認方法を変える:「わかりましたか?」をやめる
日本の現場でよくある確認方法が「わかりましたか?」「大丈夫?」という質問ですが、これは確認手段として機能していません。多くの外国人材は、たとえ理解していなくても「はい」と答えてしまうからです。

「やって見せる/やってもらう」という双方向の確認プロセスを組み込むことで、理解度のズレを防ぐことができます。
4-4. 日本側の土台づくり:受け入れ現場の共通認識
どれだけ仕組みを整えても、現場の受け入れ側の認識がバラバラでは効果が半減します。特に重要なのは、「伝える側の責任」という姿勢を組織全体で統一することです。

外国人材の定着・戦力化は、「個人の努力」ではなく「組織の仕組み」で決まります。受け入れ側が変わることで、コミュニケーションの質は大きく向上します。
5. それでも起きる問題を"離職"にしないために

どれだけ対策を講じても、完全にすれ違いをゼロにすることは困難です。重要なのは、小さな問題を早期に発見し、離職に至る前に対処することです。
5-1. コミュニケーション不全が離職に繋がるプロセス
外国人材の早期離職には、典型的なプロセスがあります。このプロセスを理解し、早期に気づくことが重要です。

早期に気づくべきサイン
欠勤・遅刻が増える
返答が減る、目を合わせなくなる
ミスを隠すようになる
休憩時間に一人でいることが増える
表情が暗くなる、笑顔が消える
これらのサインが見られたら、すぐに個別面談を実施し、状況を確認することが重要です。
5-2. 定着・戦力化は「言語教育」だけでなく「設計」で決まる
外国人材の定着率を高めるためには、受け入れ設計そのものを見直す必要があります。日本語教育だけでは不十分であり、以下の要素を組み込むことが重要です。

定着する職場の共通点
外国人材の定着率が高い企業に共通するのは、「困ったときに相談できる環境」「成長が見える仕組み」「公平な評価」が整っていることです。これらは受け入れ設計の段階で組み込むべき要素です。
6.まとめ

外国人材との「伝わらない」問題は、日本語力ではなく"前提と仕組み"の問題であることが大半です。
日本企業特有の暗黙知・察する文化は、異文化出身者には通用しません。主語・完成条件・期限を明確にすることが必須です。
伝達は「口頭+視覚+確認」をセットにし、「わかりましたか?」を廃止して復唱・実演で確認する仕組みに変えましょう。
コミュニケーション不全は放置すると離職に直結します。早期サインを見逃さず、定例面談で予防することが重要です。
定着・戦力化は、受け入れ設計(評価基準・キャリア見通し・相談導線)で決まります。言語教育だけでは不十分です。




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