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執筆者の写真Ayumi Kimura

育成就労制度とは?技能実習制度との違いやメリットについて詳しく解説

2024年3月に外国人技能実習の廃止、新たな在留資格である「育成就労」の創設の改正案が閣議決定されました。

2024年6月には、改正出入国管理法が可決され、2027年を目安に育成就労制度が開始される予定です。


新たな在留資格である育成就労について、また現行の技能実習制度との違いや比較を本記事では解説していきます。





 

目次:


 


1.技能実習制度とは





技能実習制度は、1993年から運用されてきた制度です。

日本の技術や技能、知識を開発途上国へ移転し、その地域の経済発展に寄与することを目的とするための制度とされています。


技能実習生が日本で得た技術や技能、知識を母国へ持ち帰りそこでの発展を目指すことが目的であるため、日本での在留期間は最長でも5年と定められています。

この制度によって、技能実習生が知識を学び得るだけではなく、国内での人手不足を解消することもできました。


1-2.技能実習制度の廃止の背景と問題点


技能実習制度は、上述の通り双方に利点があります。しかし、実際は問題点も少なくありません。

技能実習制度の廃止の背景として、


①技術や技能知識を開発途上国へ転移するという目的よりも、人手不足解消の労働者として重用されている


②就業環境が厳しいため年間で5,000人ほどの失踪者が出ている


③技能実習制度では長時間勤務や、低賃金での雇用、ハラスメントがあるなどの国際的な批判がある


といった内容が挙げられます。


これらの内容を受け止め、新たな在留資格として育成就労制度が創設されました。2027年から開始予定とされており、完全移行にはさらに3年がかかる見込みとなっています。


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2.新制度「育成就労」とは





技能実習制度が廃止され、新たに創設される育成就労とはどのような制度なのでしょうか。

廃止された制度に代わる新たらしい制度になることが想像できますが、詳しい内容について確認していきましょう。


2-1.育成就労制度の主な目的


育成就労制度は、育成就労産業分野において、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することを目的とする。

とされており、技能実習制度と異なり母国への知識・技能の移行ではなく人材確保が主な目的・方針となっています。


2-2.育成就労制度の在留期間


技能実習制度では、最長で5年の在留期間が認められていましたが、育成就労制度では原則3年とされています。


3年後は在留できなくなるわけではなく、その後「特定技能1号」や「特定技能2号」につなげていくという流れです。

育成就労から特定技能への移行は、長期間で産業を支える人材の確保にもつながっていきます。


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2-3.在留資格「育成就労」受け入れ時の条件


技能実習制度は、前職要件や入国後講習などが必要とされていました。

前職要件として、技能実習の職種を学校で勉強しているもしくは母国で経験しているなどです。また、入国後講習の期間を短縮するために、160時間以上の講習を受けてから入国する技能実習生もいました。


新たに創設される育成就労制度では、前職要件はなく日本語能力試験においてN5レベル相当が条件とされる予定となっています。


2-4.移行条件


技能実習制度において、検定に合格している場合、技能実習1号から2号へ、2号から3号へ移行することが認められていました。


育成就労も同様に検定に合格している必要があります。

受け入れ後1年以内に技能検定基礎級等に合格が必要であり、3年の育成就労後に特定技能1号へ移行する際は、技能検定3号等か特定技能1号評価試験に合格していなくてはなりません。


2-5.転籍


技能実習制度では、転籍が認められていませんでした。

受け入れ先の企業で技能を習得することを目的とした在留資格であったためです。そのため、就労環境が劣悪だったとしても、企業を変えることができないため外国人技能実習生が年間で5,000人前後失踪するという事態になりました。


一方で育成労働制度では、転籍が可能とされています。もちろん、無条件ではなく一定の条件を満たしていることが大前提です。


条件として


①同一機関での就労期間については分野ごとに1年から2年の範囲で設定すること


②技能等の水準については、技能検定試験基礎級等及び分野ごとに設定するA1〜A2相当の日本語能力に係る試験への合格


③転籍先が育成就労を適正に実施する基準を満たしていること


以上を予定しています。


2-6.職種


育成就労制度では特定技能1号と同様の職種に準ずるものと予定されています。

技能実習制度において、88職種が対象となっておりましたが、特定技能への移行時に同じ職で移行できないという問題が浮き彫りになりました。


新たに創設される育成就労制度では、そのような問題が起きないためにも特定技能と同様の職種が見込まれています。


3.技能実習制度と育成労働制度の違い





現行制度(技能実習制度)では、技能実習1号・技能実習2号・技能実習3号で最長5年までの在留が可能でした。


技能実習3号から特定技能1号への移行もできますが、対象となる職種や分野のミスマッチにより、技能実習3号から移行できるのは限られた技能実習生となっています。

見直し後の制度(育成就労制度)では、原則として最長3年までの在留資格となっており、その後は特定技能1号さらに特定技能2号への移行がスムーズに行われるように、特定技能と同様の分野・職種での育成就労を予定しています。


3-1.(補足)特定技能1号の対象分野


特定技能1号と同様の分野が対象になる予定の育成就労制度ですが、ここで特定技能1号の対象分野について確認しておきましょう。

現在、特定技能1号での対象分野は以下の通りとなっています。


・ビルクリーニング

・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業

・建設

・造船・舶用工業

・航空

・宿泊

・農業

・漁業

・飲食料品製造業


育成就労でも、上記の分野が対象になる予定です。


4.育成就労のメリットデメリット





育成就労の制度には、就労者側のメリットと企業側のメリットがあります。両方の面でどのようなメリットがあるのでしょうか。


4-1.就労者側のメリット


①転籍が可能である

技能実習制度では、転籍することができませんでした。そのため、環境が良くなかったり給与の未払いやハラスメントがあった場合、失踪してしまう技能実習生もいましたが、転籍が可能になったことでその懸念点は解消される見込みです。


②費用面での負担が軽減される

技能実習生は、日本へ入国するために送り出し機関への手数料や渡航費を自分で負担していました。育成就労制度では受け入れ企業がこの費用を負担することになったため、費用面での負担は軽減されることになります。


③労働基準・人権保護

技能実習制度において、労働基準や人権保護をめぐってのトラブルが多く見受けられました。育成就労制度では、転籍が可能であるという点も含めより働きやすい環境になるでしょう。


④キャリアパス形成・長期就労

育成就労は、3年間の就労のあと特定技能1号・2号へと移行できるように運用されます。どちらの移行も試験や条件がありますが、育成就労は特定技能と同様の分野で計画されていることから、移行のミスマッチもなくスムーズに進むことが想定されます。

そのため、日本で長く働きたい、キャリアを積んでいきたいと考えている外国人には良い制度と言えるでしょう。


4-2.企業側のメリット


①一定の条件を持つ人材を受け入れられる

育成就労では、日本語能力が一定水準以上でなくては認められないとされています。そのため、簡単な読み書きができる人材が来ると考えられるのです。

そのほかの基準に関しては、現状出ていませんが技能実習制度とは異なり日本語能力を有しているため、コミュニケーションがとりやすくなります。


②長期就労が見込める

技能実習制度では、3年から5年までしか受け入れられませんでした。その後、特定技能へ移行することもできましたが、分野のミスマッチから移行できない技能実習生も少なくありません。

育成就労では、特定技能へ移行できるように運用計画されています。3年間の育成就労のあと、特定技能の資格を取得すれば継続して働くことが可能です。


4-3.デメリット

育成就労におけるデメリットとして、企業側の人材獲得競争が挙げられます。


就労者側のメリットでも挙げた通り、転籍が可能となりました。そのため、企業に入ったとしても、条件面で合わなかったり不都合が生じた場合にその理由が正当であると認められれば、同業種の別企業へ転籍してしまいます。


転籍しないようにするためには、選ばれる企業であり続ける必要があるのです。そのためには、給与面や福利厚生などを充実させ自社が良い企業だと外国人就労者に感じてもらわなくてはなりません。


5.育成就労外国人を企業が受け入れるための要件





現在、育成就労制度が新たに創設され2027年の開始に向けて準備が進んでいます。

企業側が育成就労外国人を受け入れるための要件として、特定産業分野に該当する業種・職種であることが求められています。

そのほかにも要件はあるのでしょうが、現状で明らかになっているのは、上記についてのみです。


特定技能1号への移行も考えられることから、団体への加入が条件となる可能性も少なくありません。


また、転籍も可能となっているため、転籍要件である「育成就労を適切に実施する基準を満たしていること」という内容も含まれる可能性もあるでしょう。


6.育成就労制度に移行する際の注意点





2027年から技能実習制度に代わり育成就労制度に移行予定です。

現在技能実習生を受け入れている企業はそのままでも問題ないのか、新たに育成就労外国人を受け入れる必要があるのかなど、さまざまな懸念点が考えられます。

現在の時点で考えられる、移行する際の注意点についてまとめてみました。


6-1.技能実習制度の廃止による影響


技能実習制度と育成労働制度では、就労できる業種が変わってきます。そのため、いままで技能実習生を人手として考えていた場合、今後人手不足に悩まされる可能性も少なくありません。


6-2.育成就労の転籍が認められた場合


やむを得ない理由の場合転籍が認められることとなるため、育成就労外国人にとっては働きやすい環境になるかもしれません。

一方で、企業側が時間や費用をかけて知識や技術含め育成してきた人材が転籍し、また一からスタートさせなくてはならないという状況になってしまう可能性も考えられます。

そのため、育成就労で入ってきた外国人が転籍しないためにサポートする必要があるでしょう。


6-3.負担が増える可能性が高い


育成就労において、外国人が日本へ来るための渡航費を負担することになります。

そのため、受け入れ人数に制限があるとはいえ、一人当たりに係る負担は、技能実習生を受け入れるときよりも多くなる可能性が高いといえます。


7.育成就労制度でより選ばれるための職場づくりを


技能実習制度から育成労働制度への見直しイメージ図でもあった通り、「選ばれる国へ」という思いがあります。

これは、制度だけではなく企業としても必要な言葉と言えるでしょう。


育成就労制度は、技能実習制度とは異なり「人材の確保」をするための制度です。そのため、育成就労で受け入れた外国人が企業の一員として長く就労できるための環境が必要となってきます。


人手不足解消のためには、短いスパンで多くの人を雇用し辞めてしまう状況よりも、長いスパンで数人を雇用し続ける方が企業としても良いでしょう。


制度の見直しでもあるように「長期間産業を支える人材を確保」するための制度になっています。もちろん、産業を支えるとありますがひいては企業を支えるための人材として、3年の育成就労のあとは特定技能1号へ移行し、ゆくゆくは特定技能2号へと進み期間の制限なく在留し、企業のなくてはならない人材になるのが理想と言えます。


参考・引用:出入国在留管理庁


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