特定技能外国人材を受け入れる企業が守るべき法的義務と注意点【2026年整理版】
- sou takahashi
- 3月2日
- 読了時間: 7分

目次:
特定技能制度は「採用できれば終わり」ではありません。受入企業には、雇用契約の適正履行・支援の実施・各種届出という3つの法的義務がセットで求められます。
これらの義務を怠ると、行政指導・改善命令の対象となり、最悪の場合は新規受入れ停止や在留資格の更新不許可といった重大なリスクに直面します。
2025年4月には届出制度が改正され、定期届出が四半期ごとから年1回に変更されるなど、制度の運用も進化しています。
本記事では、特定技能外国人材の受入れにおいて企業が守るべき法的義務を、2026年最新情報を踏まえて整理。義務的支援10項目の具体的内容、届出要件、よくある誤解、実務チェックリストまで、リスク管理の視点から徹底解説します。

1.まず押さえる前提(特定技能の"義務"が発生する範囲)

特定技能外国人材の受入れにおいて、すべての企業に同じ義務が課されるわけではありません。まず「どの在留資格に、どのような義務が発生するのか」を整理しましょう。
義務が重いのは「特定技能1号」
特定技能には「1号」と「2号」の2種類がありますが、支援義務が課されるのは特定技能1号のみです。

本記事では、支援義務が発生する「特定技能1号」を中心に解説します。
受入企業(特定技能所属機関)として満たすべき"受入れ基準"
特定技能1号外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、以下の4つの基準をすべて満たす必要があります。


2.受入企業が守るべき「3つの法的義務」全体像

特定技能外国人を受け入れた企業には、大きく分けて3つの法的義務が課されます。この3つが「コンプライアンスの柱」です。

①雇用契約を確実に履行する義務
単に「契約どおり働かせる」「給与を払う」だけでは不十分です。契約内容そのものが適正であることが前提です。
項目 | 内容 | 注意ポイント |
適正な報酬設定 | 日本人従業員と同等以上の報酬を設定(地域・職種の相場を考慮) | 外国人のみ低賃金は不可 |
確実な支払い | 雇用契約で定めた報酬を確実に支払う | 遅延・不当控除・減額は違反 |
法令遵守 | 労働基準法・最低賃金法など労働関係法令を遵守 | 労働時間・残業・休日管理も対象 |

②1号外国人への支援を適切に実施する義務
特定技能1号外国人には、支援計画を作成し、計画に基づいて支援を実施する義務があります。
項目 | 内容 | 注意ポイント |
申請時の提出 | 支援計画は在留資格申請時に提出が必要 | 入社後作成は不可 |
10項目の網羅 | 義務的支援10項目すべてを計画に含める | 一部欠落は不受理の可能性 |
言語対応 | 外国人が十分理解できる言語で支援を実施 | 母国語・理解可能言語で説明 |
記録の保管 | 支援実施内容を記録し保管する | 監査・入管説明のため必須 |
③出入国在留管理庁等への各種届出義務
特定技能外国人を受け入れた後は、入管(出入国在留管理庁)やハローワーク等への定期届出・随時届出が必要です。


3.義務の中核「1号特定技能外国人支援計画」—作成・提出・運用の要点

支援計画は"在留申請時に提出が必要"
重要:支援計画は入社後ではなく、在留資格の申請時に提出が必要です。
具体的には、「在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せ)」または「在留資格変更許可申請(国内切り替え)」の際に、申請書類と併せて提出します。
「入社が決まってから作ればいい」と考えていると申請が間に合わず、採用スケジュールが大幅に遅れる原因になります。
支援計画に書くべき主な記載事項
実務で抜けやすいポイントを中心に整理します。
義務的支援10項目の実施内容・方法
支援項目 | 誰が(担当者) | いつ | どのように | 使用言語 |
①事前ガイダンス | 支援責任者 | 入国前 | オンライン面談(Zoom等) | 日本語・母国語 |
②出入国時送迎 | 支援担当者 | 入国時・帰国時 | 空港への送迎対応 | 日本語・母国語 |
③住居確保・生活契約支援 | 支援担当者 | 入国後すぐ | 住居契約同行・ライフライン契約補助 | 日本語・母国語 |
④生活オリエンテーション | 支援責任者 | 入国後 | 対面説明・資料配布 | 日本語・母国語 |
⑤公的手続同行 | 支援担当者 | 必要時 | 市役所・銀行等へ同行 | 日本語・母国語 |
⑥日本語学習機会提供 | 支援担当者 | 就労開始後 | 教室紹介・教材提供 | 日本語 |
⑦相談・苦情対応 | 支援責任者 | 随時 | 面談・電話・SNS対応 | 日本語・母国語 |
⑧日本人との交流促進 | 支援担当者 | 定期 | 地域交流イベント案内 | 日本語 |
⑨転職支援 | 支援責任者 | 必要時 | 求人情報提供・相談対応 | 日本語・母国語 |
⑩定期面談・行政報告 | 支援責任者 | 3か月ごと | 面談実施・記録作成 | 日本語・母国語 |
支援責任者/支援担当者の情報
区分 | 氏名 | 役職 | 過去2年間の実務経験(中長期在留者支援等) |
支援責任者 | 〇〇 〇〇 | 人事部長 | 外国人従業員生活相談・行政手続支援経験2年 |
支援担当者 | 〇〇 〇〇 | 総務担当 | 外国人従業員受入支援・生活指導経験1年 |
委託する場合の委託先情報
項目 | 内容 |
登録支援機関名称 | 株式会社〇〇サポート |
登録番号 | 19登-〇〇〇〇〇〇 |
委託範囲 | 全部委託(又は 一部委託:①②④⑦⑩のみ 等) |
委託契約内容 | 義務的支援10項目の実施、定期面談、相談対応、行政報告業務を委託 |
4.【保存版】義務的支援10項目("何をすれば履行と言えるか"の整理)

ここからは、義務的支援10項目の具体的内容を、「最低限何をすれば履行と言えるか」という実務視点で整理します。1つでも欠ければ義務違反となります。
10項目一覧と最低限ライン


5.登録支援機関に委託すれば何が変わる?(誤解が多い論点)

委託できる範囲と「体制要件」の特例
支援計画の実施は、全部または一部を登録支援機関に委託できます。
区分 | 内容 | 受入企業の支援体制 | 支援責任者・担当者の選任 | 主な特徴 |
全部委託 | 義務的支援10項目すべてを登録支援機関へ委託 | 登録支援機関の体制があるとみなされる | 不要(免除) | 企業側の負担が最小。外国人支援経験がなくても受入可能 |
一部委託 | 特定の支援項目のみ委託 | 自社にも支援体制が必要 | 必要 | 一部のみ外部活用できるが、企業側の管理責任が残る |
委託しても残る責任
「委託した=受入企業の責任が消える」わけではありません。
項目 | 内容 | ポイント |
雇用契約の履行義務 | 特定技能外国人への報酬支払い・労働条件遵守などの雇用責任は受入企業が負う | 支援を委託しても雇用主の責任は免除されない |
監督責任 | 登録支援機関が適切に支援を実施しているか企業が確認・管理する義務 | 丸投げは不可 |
再委託の禁止 | 登録支援機関は支援業務を他業者へ再委託できない | ※通訳・翻訳等の補助業務のみ例外 |
6.行政指導・改善命令につながりやすい"リスク論点"

届出の漏れ・遅れ・虚偽
2025年4月から定期届出が年1回に変更されましたが、「回数が減ったから楽になった」と油断して提出を忘れるケースが懸念されます。届出不履行は罰則対象です。
支援が「やったことになっていない」問題
形式的に計画書を作っても、実態がなければ義務違反です。入管の調査では、以下のような証跡が厳しくチェックされます。
支援実施ログ(いつ・誰が・何を・どの言語で実施したか)
面談記録(本人の署名等)
通訳の記録
受入企業の義務違反は、受入れ継続に影響し得る
義務(契約履行・支援・届出)を怠ると、指導・改善命令等の対象になり得ます。最悪の場合、新規受入れ停止や、既存社員の在留資格更新不許可という事業存続に関わる事態を招きます。
7.よくある誤解(Q&A形式)


8.実務チェックリスト

最後に、リスク管理層が自社の体制を点検するためのチェックリストを提示します。

9.まとめ

特定技能の受入れは、「採用」よりも「運用」がコンプライアンスの本丸です。受入企業の義務は以下の3点が柱となります。
雇用契約の履行(日本人同等以上の報酬等)
支援の実施(義務的支援10項目の確実な実行)
届出の実施(入管等への定期・随時報告)
迷ったときは、支援計画10項目を「やり切れる設計」に落とし込み、届出と証跡を仕組み化することがリスク回避の近道です。
制度は複雑ですので、行政書士や登録支援機関などの専門家への早期相談が、安定的で適法な受入れ成功の鍵となります。




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