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特定技能を導入すべき企業・やめた方がいい企業の違いとは?判断基準を整理

  • sou takahashi
  • 3 日前
  • 読了時間: 13分
特定技能を導入すべき企業・やめた方がいい企業の違いとは?判断基準を整理

目次: 



「特定技能、うちの会社も導入すべき?」「周りが始めているから、うちもやった方がいいのかな…」

外国人材採用が広がるなか、こうした判断に迷う経営者・人事担当者が増えています。しかし、「導入したものの3か月で退職された」「届出義務に対応できず行政指導を受けた」といった失敗事例も後を絶ちません。


特定技能は、向いている企業にとっては人手不足解消と組織強化の強力な武器ですが、準備なしで始めると採用コストの無駄遣いと現場の混乱を招きます


本記事では、特定技能を「導入すべき企業」と「やめた方がいい企業」の違いを具体例とともに明確に整理し、経営判断に役立つ自己診断チェックリストを提供します。


1.なぜ「向き・不向き」があるのか?|導入判断を誤ると起きる4つのリスク


なぜ「向き・不向き」があるのか?|導入判断を誤ると起きる4つのリスク

特定技能の導入判断を誤ると、次のような具体的なリスクが生じます。


①採用コストが回収できない損失

コスト項目

内容

登録支援機関への委託費

月2〜4万円 × 採用人数 × 雇用期間

在留資格申請費用

行政書士報酬10〜20万円+申請手数料

住居確保・生活準備費

敷金・礼金、家具・家電、初期生活費

教育コスト

研修時間、メンター社員の工数

損失事例

事例

損失内容

建設会社A社

3名採用し3か月で全員退職。支援委託費36万円/申請費用45万円/住居・備品90万円 → 計171万円が無駄


②現場の混乱と既存社員の離職

区分

内容

影響①

受入れ体制未整備のまま採用すると、既存社員の業務負担が急増

影響②

「なぜ自分たちが面倒を見るのか」という不満が蓄積

影響③

外国人材・既存社員の双方が孤立し、職場の雰囲気が悪化

最悪のケース

ベテラン社員の退職につながる

具体例

製造業B社:現場説明なしで外国人材5名を配属。教育担当を押し付けられた現場リーダーが不満を募らせ退職


③早期退職による企業信頼の喪失

段階

内容

① 早期退職の続発

外国人材の早期退職が続く

② 悪評の拡散

「定着しない会社」という評判が外国人材コミュニティ内で広まる

③ 外部からの警戒

海外の送り出し機関・国内人材紹介会社から警戒される

④ 採用難

次の採用活動で候補者が集まらなくなる

最終結果

外国人材採用の道が事実上閉ざされる

④法令違反による行政処分・罰則

違反内容

主なリスク・処分

定期届出義務(年1回)の不履行

受入れ停止、5年間の再受入れ禁止

支援義務(定期面談・生活支援)の不履行

行政指導、悪質な場合は受入れ取消し

労働条件の法令違反

最低賃金違反、残業代未払い、社会保険未加入などによる是正指導・処分

不法就労助長罪

在留資格と異なる業務に従事させた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金

「なんとなく人手不足だから」「他社がやっているから」という理由だけで始めるのは極めて危険です。


導入判断を誤ると起きる4つのリスク

2.特定技能を「導入すべき企業」の7つの特徴


特定技能を「導入すべき企業」の7つの特徴【具体例付き】

以下の項目に3つ以上当てはまる企業は、特定技能の導入に向いています。


①慢性的な人手不足に悩んでいる


具体例:

企業・業種

状況

介護施設C社

求人を出しても応募者ゼロが3か月継続。既存職員の残業が月50時間超

食品製造D社

繁忙期に製造ラインが回らず、取引先からの受注を断念

建設会社E社

地方エリアで現場監督が高齢化。若手の応募がほぼない

判断基準:

□ 求人を出しても3か月以上応募がない

□ 既存社員の残業時間が月平均30時間を超えている

□ 繁忙期に業務が回らず、機会損失が発生している


②業務の標準化・マニュアル化が進んでいる


具体例:

企業

取り組み内容

物流倉庫F社

ピッキング作業を写真付きマニュアル化し、誰でも同じ品質で作業可能に

食品工場G社

調理工程を5ステップに分解し、各工程の確認事項をチェックリスト化

ビルメンテナンスH社

清掃手順を動画で記録し、多言語字幕を付けて教育に活用

判断基準:

□ 作業手順書・マニュアルが写真や図解入りで整備されている

□ 「見て覚えろ」ではなく、段階的に教育できる仕組みがある

□ ベテラン社員に依存せず、誰でも一定の品質で業務を遂行できる


③現場に受入れ体制を整える意欲がある


具体例:

企業

取り組み内容

建設会社I社

採用前に現場リーダー向け研修を実施し、「やさしい日本語」の使い方を学習

製造業J社

外国人材受入れ担当を正式に任命し、月1回の定期面談を制度化

飲食チェーンK社

翻訳アプリを全店舗に導入し、指示出しをスムーズ化

判断基準:

□ 経営層だけでなく、現場のリーダーや社員も受入れに前向き

□ メンター役を務める社員を事前に決めている

□ コミュニケーションの工夫(翻訳ツール、やさしい日本語)に抵抗がない


④長期的な視点で人材を育てたい


具体例:

企業

取り組み内容

介護施設L社

特定技能1号採用後、介護福祉士資格取得を支援。技能実習と通算し10年雇用を実現

製造業M社

外国人材向けにキャリアパスを明示し、リーダー職への昇格事例を社内共有

農業法人N社

5年後の独立就農を目標に育成し、地域の担い手として定着

判断基準:

□ 即戦力だけでなく、自社で育成し戦力化する意欲がある

□ キャリアパスや評価制度を整備している、または整備する予定

□ 特定技能1号→2号への移行や、長期雇用(5年以上)を前提としている


⑤登録支援機関や専門家と連携できる


具体例:

企業

取り組み内容

建設会社O社

自社で支援体制を組めないため、登録支援機関に月3万円で支援業務を全面委託

製造業P社

行政書士と顧問契約を締結し、在留資格申請・届出義務を確実に対応

農業法人Q社

地域の外国人支援NPOと連携し、生活面のサポートを強化

判断基準:

□ 自社だけで抱え込まず、外部の専門機関に相談・委託する意思がある

□ 月2〜4万円/人の支援委託費を「必要コスト」として理解している

□ 行政手続きや法令対応を確実に遂行するための体制を整えられる


⑥地域・業界での採用競争が厳しい


具体例:

企業・業種

状況

地方製造業R社

最寄り駅から車で30分の立地で若手応募ゼロ。同業他社は外国人材採用を開始

介護施設S社

都市部に人材が集中し、地方施設は慢性的な人手不足

農業法人T社

若者の農業離れで後継者不足。技能実習に続き特定技能での受入れを検討

判断基準:

□ 地方で若手の採用が極めて困難

□ 同業他社が外国人材を積極的に採用し始めている

□ 従来の採用チャネル(求人誌、ハローワーク)では母集団形成が不可能


⑦給与・労働条件を日本人と同等以上にできる


具体例:

企業

取り組み内容

製造業U社

外国人材の基本給を日本人と同額に設定し、スキルアップに応じた昇給制度を導入

建設会社V社

社会保険完備、残業代全額支給、有給休暇取得率80%を実現

介護施設W社

夜勤手当・資格手当を日本人と同条件で支給し、定着率90%以上を達成

判断基準:

□ 最低賃金以上で、日本人社員と同等の給与を用意できる

□ 社会保険、有給休暇、残業代などの法定要件を100%クリアできる

□ 長時間労働や劣悪な環境ではなく、働きやすい職場づくりに取り組んでいる


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3.特定技能を「やめた方がいい企業」の5つの特徴


特定技能を「やめた方がいい企業」の5つの特徴【失敗事例付き】

以下の項目に2つ以上当てはまる企業は、特定技能の導入を再検討すべきです。


①「安く使える人材」として見ている

項目

内容

失敗事例①

建設会社X社:日本人より月5万円安い給与で雇用し、3か月で全員退職。労働基準監督署から是正勧告

失敗事例②

製造業Y社:残業代未払い。「外国人だから文句を言わない」と考えた結果、入管に通報され受入れ停止

なぜダメか

特定技能は「労働力確保」ではなく「人材の採用・育成」が前提。同一労働同一賃金が原則で、違反は行政処分対象。悪評が広まり将来の採用も困難になる

②現場の理解・協力が得られない

項目

内容

失敗事例①

製造業Z社:経営層だけで決定し、現場は否定的。教育担当を押し付けられた社員が「聞いていない」と退職

失敗事例②

介護施設AA社:現場への事前説明なしで配属。既存職員のストレス増大、外国人材も孤立し1か月で退職

なぜダメか

現場の協力なしでは定着しない。採用前に現場リーダー・社員向け説明会や研修を行い、理解と協力を得ることが不可欠。経営層の独断は失敗の原因


③業務が複雑で、標準化されていない

項目

内容

失敗事例①

製造業AB社:作業手順が担当者ごとにバラバラでマニュアルなし。外国人材が混乱し、現場からも苦情

失敗事例②

飲食店AC社:「見て覚えろ」「空気を読め」の文化で口頭指示のみ。理解できずミスが続出し3週間で退職

なぜダメか

業務が標準化されていないと人材は育たない。業務を整理し、写真・図解入りマニュアルを整備することが必要


④支援義務・届出義務を負担に感じる

項目

内容

失敗事例①

建設会社AD社:定期面談を実施せず届出も放置。出入国在留管理庁から指導を受け、5年間の受入れ停止処分

失敗事例②

製造業AE社:登録支援機関への委託費を理由に自社対応を選択。担当者が対応できず法令違反が発生

なぜダメか

支援義務・届出義務は法定義務。違反すれば罰則や受入れ停止のリスクがある。「面倒」「高コスト」と感じる企業は特定技能に不向き


⑤短期的な採用・離職前提で考えている

項目

内容

失敗事例①

製造業AF社:繁忙期3か月のみの短期雇用目的で採用し、特定技能に適さず採用コストが無駄に

失敗事例②

建設会社AG社:定着を軽視し「辞めたら再採用」の姿勢。送り出し機関から信頼を失い受入れ拒否

なぜダメか

特定技能は長期雇用前提の制度。短期視点はコスト増と信頼低下を招く。キャリアパス・評価制度整備の意思がない企業は導入不適

4.失敗事例から見る「導入すべきでなかった」3つのパターン


失敗事例から見る「導入すべきでなかった」3つのパターン

ケース①:現場の理解不足で3か月全員退職【製造業・従業員50名】

区分

内容

状況

経営層主導で特定技能外国人3名を採用。現場への事前説明なし。現場の反発により外国人材が孤立し、3名全員が3か月以内に退職

原因①

採用決定前に現場向け説明会・研修を実施しなかった

原因②

メンター役の選定や教育体制を構築していなかった

原因③

現場を巻き込まず、経営層のみで採用を決定した

教訓

採用前に現場の理解を得ることが最優先。説明会実施、メンター選定、社内研修(やさしい日本語・文化理解)を必ず行う

損失

支援委託費27万円/申請費用45万円/住居・備品費60万円/教育コスト(社員工数)=計132万円の損失


ケース②:支援体制が整わず、行政から指導【建設業・従業員30名】

区分

内容

状況

特定技能外国人2名を採用したが、定期面談・届出を未実施。外国人材のSNS投稿をきっかけに入管が調査し、行政指導のうえ5年間の受入れ停止処分

原因①

支援義務を軽視し、「忙しいから後回し」と放置

原因②

登録支援機関に委託せず、自社対応を選択

原因③

担当者が兼務で、支援業務に十分対応できなかった

教訓

法令対応は最優先事項。自社対応が難しい場合は必ず登録支援機関へ委託すること。月2〜4万円を惜しむと致命的な結果を招く

損失

5年間の受入れ停止=今後の外国人材採用の道が完全に閉ざされる


ケース③:業務の複雑さで教育が進まず、戦力化できない【飲食業・従業員20名】

区分

内容

状況

飲食店で特定技能外国人2名を採用。マニュアルなし・口頭指示のみで業務内容が理解できず、現場不満が高まり2か月で退職

原因①

業務の標準化ができていない状態で採用した

原因②

写真・図解入りのマニュアルを用意していなかった

原因③

「見て覚えろ」「空気を読め」を前提とした指導方法

教訓

採用前に業務を見直し、視覚的な手順書や多言語マニュアルを整備すること。日本人新人教育にも有効

損失

支援委託費16万円/申請費用30万円/教育コスト(社員工数)=計46万円の損失


失敗事例から見る3つのパターン

5.【自己診断】特定技能の導入判断チェックリスト


【自己診断】特定技能の導入判断チェックリスト

以下の項目にチェックを入れ、自社の状況を確認してみましょう。

区分

チェック項目

採用ニーズ

□ 求人を出しても3か月以上応募がない□ 既存社員の残業時間が月平均30時間を超えている□ 長期的に人材を育成したい(5年以上の雇用を想定)

社内体制

□ 現場のリーダー・社員が受入れに前向きである□ メンター役を務める社員を事前に決めている□ 業務が写真・図解入りマニュアルで標準化されている

法令対応

□ 支援義務(定期面談・生活支援)を理解し対応できる□ 登録支援機関への委託(月2〜4万円/人)を検討できる□ 給与・労働条件を日本人と同等以上にできる

経営姿勢

□ 外国人材を「戦力」として育てる意欲がある□ 短期的な人手不足解消ではなく長期視点がある□ 専門家(登録支援機関・行政書士)に相談しながら進める意思がある

チェック数による判断:

  • 8個以上:導入を推奨。ただし準備を徹底すること

  • 5〜7個:体制を整えれば導入可能。専門家に相談しながら進める

  • 4個以下:現時点での導入は再検討。まずは社内体制の整備から


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6.特定技能導入を成功させるために|準備が9割


特定技能導入を成功させるために|準備が9割

特定技能の導入は、「採用がゴール」ではなく「スタート」です。

成功のカギは、次の3つです。


①事前準備を徹底する

準備項目

具体内容

社内説明会の実施

経営層から現場へ、採用目的・役割・受入れ体制を丁寧に説明

業務の標準化

写真・図解入りマニュアルを作成し、業務手順を明確化

法令理解

支援義務・届出義務・労働関連法規を事前に確認

住居・生活環境の準備

家具・家電・Wi-Fi・生活必需品を事前に整備

準備期間の目安

採用決定から受入れまで最低3か月を確保


②現場を巻き込む

項目

内容

現場リーダー研修

採用前に現場リーダー向け研修を実施

メンター任命

メンター役を正式に任命し、役割・責任を明確化

社内教育

「やさしい日本語」や翻訳ツールの使い方を全社員に教育

受入れの位置づけ

外国人材受入れを「会社全体の取り組み」として明確化

重要ポイント

経営層だけでなく、現場社員が「仲間」として受け入れる雰囲気づくりが不可欠

③専門家を活用する


専門家

役割・依頼内容

登録支援機関

定期面談・生活支援・各種届出代行を委託(目安:月2〜4万円/人)

行政書士

在留資格申請・変更手続き・法令に関する相談対応

外国人材紹介会社

採用ルートの確保、候補者選定のサポート

重要ポイント

自社だけで抱え込まず、「餅は餅屋」の考え方で専門家に任せることが成功の近道


7.まとめ|自社に合った判断を


まとめ|自社に合った判断を

特定技能は、すべての企業に向いているわけではありません

しかし、向いている企業にとっては、人手不足解消と組織強化の強力な手段です。

「導入すべきか、やめるべきか」は、自社の現状と制度の相性次第

区分

特徴

向いている企業

業務が標準化されている/現場の理解がある/長期的な視点で人材を育成したい

やめた方がいい企業

「安く使える人材」と考える/支援義務を負担と感じる/短期的な視点しかない

この記事の自己診断チェックリストを活用し、冷静に判断してください。


「向いていないかも」と感じた企業も、準備と体制づくり次第で導入可能です。

「向いている」と思った企業も、油断せず、計画的に進めることが重要です。

必要なら専門家に相談しながら、戦略的に進めてください。


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