特定技能制度は、日本国内において人手不足とされる特定産業分野を対象に、一定の技能水準を持った外国人を受け入れることができます。
令和5年12月末の時点で、特定技能1号外国人数は208,425人となっており、多くの分野で特定技能外国人が活躍し、深刻な人手不足解消に一役買っています。
そんな重要な役割を担っている特定技能外国人ですが、在留期間中に産休や育休を取りたいというケースが出てくる可能性も少なくありません。
本記事では、特定技能の在留期間中に産休や育休が取れるのかどうか、条件や決まりごとについて解説していきます。
目次:
1.特定技能とは
特定技能は、在留資格の一つとして2019年に創設されました。特定技能の主たる目的は、日本国内における特定産業分野の人手不足解消となります。
特定技能には1号と2号に分かれており、1号では特定産業に属する相当程度の知識や経験が求められ、2号では1号よりもさらに熟練した技能水準が必要です。
1-1.特定技能1号の詳細
特定技能1号で認められている分野は現在16分野となっています。
特定技能における分野は2024年に拡大し、「介護」・「ビルクリーニング」・「工業製品製造業」・「建設」・「造船・舶用工業」・「自動車整備」・「航空」・「宿泊」・「農業」・「漁業」・「飲食料品製造業」・「外食業」・「自動車運送業」・「鉄道」・「林業」・「木材産業」が該当します。
特定技能1号の在留期間は通算5年までとなっており、4ヶ月・6ヶ月・1年ごとの更新です。また、技能水準は、相当程度の知識または経験を必要とする技能とされており、各分野の特定技能評価試験の合格で認められます。
日本語能力水準も一定以上が必要となっているため、日本語能力を試験で確認します。(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験免除となっています。)
永住権の取得や家族の帯同はできません。
受け入れ企業は、1号特定技能外国人を受け入れるにあたり、外国人の支援が必須となっています。在留資格を取得するために、支援計画を提出する必要があります。
1-2特定技能2号の詳細
特定技能2号は、「ビルクリーニング」・「工業製品製造業」・「建設」・「造船・舶用工業」・「自動車整備」・「航空」・「宿泊」・「農業」・「漁業」・「飲食料品製造業」・「外食業」の11分野となっています。
技能水準は特定技能1号よりも深い知識や技能を求められます。特定技能1号と同様に、各分野ごとの特定技能評価試験で確認となります。
在留期間は6ヶ月・1年・3年ごとの更新となっており、更新に上限はありません。
また、永住権の取得も要件を満たせる可能性があります。家族の帯同も可能となっているので、長く日本で働きたい、キャリアアップを考えたいという場合、2号への移行を考える外国人もいるでしょう。
2.特定技能外国人の産休・育休
特定技能外国人は、日本で妊娠・出産することや本人の希望によって帰国して出産することが可能となっています。
また、特定技能外国人が、産前産後休暇および育児休暇を取得することも認められています。
原則として、特定技能外国人と日本人は同じ条件下で就労し、労働関連法令の適用対象となっています。そのため、特定技能外国人だからといって、不当な扱いを受けることはありません。
2-1.産休と育休は通算在留期間に含まれる
出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れに関する運用要領」では以下のとおり記載されています。
特定技能1号で在留できる期間が通算5年以内であることを求めるものであることとしており、その上で
"「通算」とは特定産業分野を問わず、在留資格「特定技能1号」で本邦に在留した機関をいい、過去に在留資格「特定技能1号」で在留していた期間も含まれます。
次の場合は通算在留期間に含まれます。
・失業中や育児休暇および産前産後休暇等による休暇期間"
上記の記載から、特定技能外国人は産休と育休の取得は問題ないということがわかります。
しかし、注意したいのは通算5年の在留期間に含まれるという点です。
その期間働いていないからと言って、延長することができるわけではありません。
2-2.妊娠・出産による権利や手当
特定技能外国人として、企業に勤め妊娠や出産をした場合、日本人と同様の権利や手当を得ることができます。
受け入れ企業は、特定技能外国人だからと言って、日本人と異なる対応をしてはいけません。
妊娠・出産による権利として、以下が挙げられます。
*妊娠中の権利
・軽易業務転換
・産前産後休業
・傷病手当金
軽易業務転換と産前産後休業は労働基準法となっており、傷病手当金は健康保険法です。
*出産後の権利
・時間外労働等の制限
・育児休業
・子の看護休業
・出産手当一時金
・出産手当金
・児童手当
3.特定技能外国人が妊娠・出産にあたり会社が講じる措置
特定技能外国人を受け入れている企業が、妊娠を知らされた場合、本人の希望があった場合講じる措置や、行ってはいけないことがいくつかあります。
3-1.妊娠をしたとき
特定技能外国人が妊娠した場合、「他の軽易な業務に転換すること」(妊娠中のみ)や「1週間または1日の労働時間が法定時間を超えないこと」、「時間外労働、休日労働または深夜労働をしないこと」を請求することができます。
上記内容を求められた場合、会社側は対応が必要です。
また、「女性労働者が妊産婦のための保健指導または健康診査を受診するための時間を確保すること」、「女性労働者が健康診査などで、医師または助産師から指導を受けた場合は、その女性労働者が受けた指導事項を守ることができるようにするために、勤務時間の変更や勤務の軽減などの措置を講じること」をしなくてはなりません。
禁止事項は以下のとおりです。
・女性労働者が婚姻し、妊娠し、または出産したことを退職理由として予定する定めをすること。
・女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇すること。
・女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休暇を請求したことなどを理由として、その女性労働者に対して解雇、その他不利益な取り扱いをすること。
これらの内容は、日本人と同様に扱わなくてはならないため、妊娠や出産を理由に解雇はできません。
3-2.産前産後休業
産前は「女性労働者本人の請求があった場合、出産予定日前の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)」、産後は「産後の8週間(ただし、産後6週間経過後に本人が請求し、医師が支障がないと認めた就業に就くことは可能)」
上記の期間について、女性労働者を就業させてはならないと決められています。
そのため、産前産後休業について、本人に伝え時期も把握しておく必要があるでしょう。
3-3.育児休業
育児休業の取得も権利として認められています。
子どもが1歳(一定の場合は最長2歳)になるまでの期間、男女労働者が休暇を取得することを育児休業と言います。分割して2回取得可能です。
また、子どもの出生後8週間以内に4週間、男性労働者が休業を取得することを産後パパ育休と呼ばれ、育児休業とは別に分割して2回取得できます。
会社は、育児休業及び産後パパ育休の申し込みを断ることや、育児休業パパ育休の申し込みや取得を理由に解雇などの不利益な扱いをすることを行なってはいけません。
(※産後パパ育休とは…2022年の育児・介護休業法の改正によって施行された育休制度。主に男性を想定しており、男性の育休取得促進が期待される。厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)
参考・引用:出入国在留管理庁監修 「生活・就労ガイドブック〜日本で生活する外国人の方へ〜」
4.特定技能外国人に産休や育休の制度を伝える
産休や育休制度について、会社側が知っていても、特定技能外国人本人が知らない可能性も考慮して、妊娠について知らされた際に両方の制度について説明する必要があります。
会社側が、妊娠した特定技能外国人に伝える内容として、
①本人が希望しない場合、妊娠や出産のために仕事を辞めなくても良いこと
妊娠したら、辞めなくてはいけないと思っている場合があるので、希望しない限り必ず辞めなくてはならないわけではないということを説明。
②妊娠や出産、その後の支援制度があるということ
健康保険加入者が出産した場合、出産育児一時金が支給されることや、出産のために会社を休んだ場合、出産手当金が支給されることを説明。
また、健康保険料と厚生年金保険料は産前産後や育児休業期間は免除されるという内容を説明する。
③産休を取る必要があること
産休は母体保護の観点から、産前産後の一定期間女性の雇用者を就業させてはいけないという制度が労働基準法で定められています。そのため、特定技能外国人も同様に産休を取る必要があるのです。
産前休業は本人から申請となりますが、産後休業は申請に関わらず一定期間就業が不可能となります。
育休は子どもが1歳になるまでの間、子育てに注力できる制度です。
育休取得時に注意したいポイントは、在留期間です。子どもが1歳半になるまでに労働契約が満了し、更新がない場合は対象外になってしまいます。
上記をわかりやすく説明しましょう。
国によって、妊娠や出産の制度が異なります。そのため、日本での妊娠および出産の制度や権利について細かく説明してあげるようにしてください。
上記のほかにも、危険な業務に就かせてはいけないため、配置換えや従事する作業が軽度のものになることも説明しましょう。
何も説明なく、別の作業へ従事することになった場合、特定技能外国人が不安になってしまったり誤解していまう可能性があります。
また上述していますが、産休や育休は通算5年の在留期間に含まれるということも、しっかりと説明しておく必要があるでしょう。
これらについても、法律で定められているため作業内容が変わるということを丁寧に伝えてあげてください。
5.特定技能外国人の妊娠・出産は正しい情報を本人へ伝える
特定技能外国人が妊娠の報告をしてきた場合、企業では正しい取り扱いをしなくてはなりません。
妊娠・出産を理由に解雇することは認められていませんし、日本人と同様の扱いが必要です。
また、国が違うため母国と同様に考えてしまう方もいるでしょう。日本での制度や取り扱い、権利についてもしっかりと説明してあげる必要があります。
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