1号特定技能外国人を雇用する際に実施が必要な生活オリエンテーション。
受け入れ企業が特定技能外国人に対して、日本での生活に必要な情報を提供することが義務付けられています。
本記事では、1号特定技能外国人を受け入れるために必要な生活オリエンテーションについて解説していきます。
目次:
1.生活オリエンテーションの概要
生活オリエンテーションは、1号特定技能外国人に対して実施しなくてはならない支援計画の一つとされています。
「受け入れ機関は、1号特定技能外国人に対して「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援の実施に関する計画を作成し、当該計画に基づき支援を行わなくてはならない。」
と定められています。
支援計画の内容は以下の通りです。
①事前ガイダンス
雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前または在留資格辺境許可申請前に、労働条件や活動内容、入国手続き、保証金徴収の有無等について、対面もしくはテレビ電話等で説明します。
②出入国する際の送迎
・入国時に空港等と事業所または住居への送迎
・帰国時に空谷の保安検査場までの送迎・同行
③住居確保・生活に必要な契約支援
・連帯保証人になる・社宅を提供する等
・銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約等を案内・各手続の補助
④生活オリエンテーション
円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応等の説明
⑤公的手続等への同行
必要に応じ、住居地・社会保障・税などの手続きの同行、書類作成の補助
⑥日本語学習の機会の提供
日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等
⑦相談・苦情への対応
職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言語での対応、内容に応じた必要な助言や指導
⑧日本人との交流促進
自治会等の地域住民との交流の場や地域のお祭りなどの行事の案内や参加の補助等
⑨転職支援(人員整理等の場合)
受け入れ企業側の都合により、雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続きの情報提供
⑩定期的な面談・行政機関への通報
支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的に面談し労働基準法違反等があれば通報する
このなかの「生活オリエンテーション」は、日本のルールやマナーを知ってもらうという目的があります。
2.生活オリエンテーションの内容
生活オリエンテーションの内容は、交通ルールや生活ルール、健康保険制度や年金、税金など多岐に渡ります。
これらを知っておくことで、基本的なマナーやルールを知り、日本で生活する上で最低限必要な知識を持った上で生活ができます。
2-1.交通ルール
交通ルールでは、信号が表示する意味や左右のどちらを通行するかについて解説しています。
またそのほかにも、横断歩道がない場所で道路を横断せず、横断歩道や信号機のある場所まで迂回することや、横断歩道橋や横断用地下道についても説明しています。
踏切を通る際は、警報器が鳴っていたり遮断機が降り始めていたら踏切内に入ってはいけないということも交通ルールとして知っておくべきことです。
夜道を歩くことがあるときは、明るい色の服を着て、車を運転している人からよく見える服を選ぶことも大切です。
そのほかにも禁止事項や、車の運転時には免許証を携帯するといった内容も説明してください。
2-2.生活ルール(暮らし編)
生活ルールでは、ゴミ出しのルール(分別や、曜日、時間など)、暮らす上での騒音(部屋で騒ぐ、夜中の掃除や洗濯など)についての説明になります。
また、近所付き合いや町内会の催し事への参加など、周囲の人と良い関係を築き上げることで安心して生活ができるという旨を伝えます。
2-3.生活ルール(公共施設編)
公共施設のルールとして、温泉や銭湯での入浴方法や、電車やバスでのマナーや荷物の持ち方などを説明します。
公共の場として、広場や公園だけではなくお店でもルールやマナーが必要です。多くの人がいる場で、騒ぎすぎない・他の人の迷惑になる行為はしないといった最低限のマナーも覚えておいてもらうと良いでしょう。
また、日本では分煙が進んでいます。タバコを吸う場所や、歩きタバコ禁止などの日本人であれば浸透しているような細かいルールも知ってもらうようにしてください。
2-4.医療機関
医療機関についての説明では、風邪や軽い病気・怪我の際には診療所やクリニック、重い病気や怪我の際は総合病院など状況に応じて医療機関を選びます。
また、診療科目の説明もしてください。内科・外科・小児科・整形外科など症状により受診する科が異なります。
自己判断が難しい場合は、病院の窓口に相談することも念頭に入れておくと良いでしょう。
医療機関によっては医療通訳が配置されており、外国語に対応している場合もあります。このような医療機関を探す際には、インターネットや市区町村の役所または国際交流協会へ相談します。事前に外国語対応の病院を探しておくのも良いかもしれません。
医療機関を受診する際は、健康保険証が必要になります。すぐに健康保険証を持ち出せるようにしておくことも伝えておくと万が一の際に役立ちます。
2-5.緊急・災害
緊急で救急車、消防車に来てほしいときは119番へ、事件や事故で警察官に来てほしいときは110番へ電話します。
どちらも、オペレーターが質問してきますので、それに対して返答が必要です。
日本は災害の多い国です。どのような災害があるのか、説明してください。
*台風・豪雨…強い風が吹いたり、大雨が降ったりします。川の水が溢れる、山や崖が崩れるといった状況になる場合もあります。
*地震…地面が揺れることにより建物が崩れたり、火事が発生したりすることがあります。
*津波…地震の影響で海面が盛り上がり、大きい波が陸に押し寄せます。
*火山噴火…火山から高温の岩やガス、灰などが吹き出します。日本には100以上の活火山があります。(活火山は、過去1万年以内に噴火した火山もしくは、現在も活発な奮起活動をしている火山。富士山は過去に何度も噴火を繰り返した活火山として有名です。)
これらの自然災害は、いつ起こるかわかりません。災害から身を守るために、災害時の備蓄をしておくことも大切です。3日から1週間分の食べ物や水だけではなく、電池や懐中電灯、防寒グッズなどを用意しておいてください。
また、ハザードマップを事前に確認しておくのも良いでしょう。特定技能外国人がいざというときにわかるように見方を教えてあげてください。
気象庁では、地震や津波などの情報が発信されています。さまざまな言語で見ることができるので、併せて伝えてあげると良いでしょう。
そのほかにも災害時の身の守り方の説明も必要です。
2-6.入管の手続き関係
入管手続きや住所の手続きは、日本で生活し行政サービスを受ける上で必須となっています。手続きを忘れてしまうと、処罰や退去強制、在留資格の取り消し対象となる恐れもあります。
入管での手続きを取らずに、自分の在留資格でできる活動以外の仕事を行うことや在留期間を超えて日本に滞在することはできません。
在留期間は更新することで延長して日本に滞在が可能です。また、在留目的に変更がある場合は、在留資格の変更申請が必要となります。
また、在留資格のなかには「就労不可」のものも存在します。「留学」や「家族滞在」は就労することができません。
アルバイトや自分の在留資格でできる活動と違う活動を行う場合は、入管に「資格外活動許可」の申請をしてください。許可された場合、その活動や時間の範囲内であれば就労が可能となります。
*退去強制…法律に違反した外国人が強制的に日本を出国させられる制度。
在留期限を1日でも超えて日本にいた場合や入管の手続きを行わずに自分の在留資格でできる活動以外の仕事をすることなどが挙げられます。
刑の重さは関係ありません。また、退去強制で出国した場合原則5年または10年間日本への入国制限がかけられます。
*在留資格の取り消し…在留資格に応じた活動を一定期間行わないまま日本にいた場合、在留資格が取り消される制度です。
例として、働くための在留資格の人が会社を辞めたあと、在留資格に応じた活動を行わずに3ヶ月以上日本にいた場合が挙げられます。また、留学生も同様で学校を辞めたあと活動を行わずに3ヶ月以上日本にいた場合も対象となります。
2-7.健康保険制度
日本にある「医療保険制度」は毎月保険料を支払うことで、怪我や病気で病院へ受診したとき自分で支払うお金が少なくなる制度です。日本に住んでいる人は国籍に関係なく加入しなければいけません。
医療保険制度には、健康保険と国民健康保険に分けられます。健康保険は会社で働いていて、1週間に20時間以上働いているといった条件を満たす人と、日本に住んでいる扶養家族が該当します。ただし、学生は加入できません。
健康保険の保険料は本人と会社が半々で支払っています。給与から差し引かれるため、特別な手続きは不要です。健康保険に加入すると、健康保険証が渡され病院に行くときはこれを提示することで、受診料の1割から3割の負担でかかることができます。
国民健康保険は、健康保険と同様に1割から3割の支払いで病院を受診できます。国民健康保険の加入は、会社に所属しないで働いている人や働いていない人です。
在留期間が3ヶ月以上で条件に合う外国人の加入も可能となっています。加入するためには、住んでいる地域の役所へ申し込み手続きが必要になります。また、保険料の支払いも加入者自身が直接支払います。
2-8.年金制度
年金制度とは、毎月保険料を支払うことで年をとってからや、病気や怪我などで体に障害が残ったときなどに定期的・継続的にお金を受け取ることができる制度です。
日本に在住しており、一定の年齢の人は国籍に関係なく加入が必要となっています。年金制度には、国民年金と厚生年金保険があります。
国民年金は日本に住んでいる20歳から59歳の第1号被保険者(働く時間が短く第2被保険者に該当しない人)が加入します。在留期間が3ヶ月以上で条件に合う外国人も加入することとなっています。
加入の手続きは住んでいる地域の役所で行います。保険料の支払いは、納付書が送られてくるので、それを使用して納付します。
厚生年金保険は、第2号被保険者(週の労働時間が20時間以上で条件に合致する人)に該当する人が加入します。こちらは国民年金と厚生年金保険の両方に加入することになります。厚生年金保険は勤めている会社が手続きを行い、給与から差し引かれるので個人で行う手続きはありません。また、厚生年金保険を支払えば国民年金の保険料は支払わなくて良いのです。
第3号被保険者(第2号被保険者に養われ、日本に住んでいる配偶者)は、国民年金だけの加入になります。加入の手続きは配偶者が働いている会社を通じて行います。
毎月支払うことで、一定の年齢や条件に当てはまった場合、年金が支払われるようになります。
また、年金を支払っていた外国人が日本での活動を終了し日本を出国する場合、「脱退一時金」というお金を請求することが可能です。脱退一時金を受け取るためには請求書を日本年金機構に郵送します。詳細は、日本年金機構に確認してください。
2-9.税金
税金は、日本でお金を稼いだ人、日本に住んでいる人、日本でものを買った人は原則日本で税金を支払います。税金の種類はさまざまですが、主な税金に「所得税」「住民税」「消費税」があります。
・所得税:日本でお金を稼いだ人が払う税金です。1月1日から12月31日までに稼いだ金額や養っている家族の人数によって決定されます。確定申告もしくは年末調整で支払いの申告を行います。
・住民税:その年の1月1日に日本に住所があった人が払う税金です。住民税は、前の年の1月1日から12月31日までに稼いだ金額や養っている家族の人数で決定されます。住民税申告は、書類を作成し1月1日に住んでいた地域の役所へ提出します。ただし、年末調整や確定申告を行なっている人は、住民税申告は不要です。
・消費税:ものを買ったりサービスを受けたりしたときに支払う税金です。一緒に支払うため特別な手続きは必要ありません。
2-10.雇用・労働
◻︎日本の企業では、給与の支払いは振込となっています。そのため、銀行口座の開設が必要になります。口座開設にあたって、パスポートや在留カード、印鑑や社員証または学生証などが必要です。
◻︎企業に勤める際に、労働契約というものを交わします。労働契約は雇用契約と呼ばれる場合もあります。この契約によって、どのような働き方をするかが決まります。
働き方としては、「正社員」「派遣社員」「契約社員」「アルバイト・パートタイマー」などが存在します。そのほかにも「業務委託」や「請負」などがあります。
契約のなかに、働く際の決まりごとが記載されています。内容は以下のとおりです。
・契約の期限
・仕事の内容と従事場所
・就業時間や休日
・契約終了について
また、決まりごとに作ってはいけない内容もあります。
・ミスした際の罰金
・会社がお金を貸して毎月の給与から引く
・本人への通達なしで、寮や旅行のためのお金を給与から引く
◻︎日本の法律で最低賃金が決められています。給与は最低賃金以上にしなくてはなりません。もらった給与が最低賃金より低かった場合は足りない分をあとから請求することが可能です。
最低賃金は都道府県や従事内容によって異なります。
◻︎労働時間派1日8時間以内、1週間40時間以内が基本となっています。企業は働いている間に、休憩時間を設けなくてはいけません。1日に6時間以上働いている人は45分以上、8時間以上働いている人は60分以上と定められています。
同様に、休日も1週間に1日以上か4週間に4日以上でないといけません。
参考・引用:出入国在留管理庁 生活オリエンテーション動画
3.生活オリエンテーションは動画活用が◎
生活オリエンテーションは、生活上のルールや仕事、税金に関する内容を説明しています。
生活オリエンテーション動画では、日本で生活する上で必要とされる基本的な情報を17言語(日本語、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ネパール語、インドネシア語、フィリピノ語、タイ語、ポルトガル語、スペイン語、クメール語、ミャンマー語、モンゴル語、ウクライナ語、ロシア語)で紹介されています。
特定技能外国人の母国語で解説されている動画だと、理解しやすいため出入国在留管理庁に掲載されている生活オリエンテーション動画を活用して、説明すると良いでしょう。
4.特定技能1号の支援計画は必須
1号特定技能外国人を受け入れる際に、支援計画は必須となっています。10項目あるうちの一つが、生活オリエンテーションです。
生活オリエンテーションは、日本に慣れていない外国人のために必要な情報が多く存在します。日本で暮らしていく上で困らないために、しっかりとフォローやサポートをするのが受け入れ企業の義務となっています。
省庁が公開している情報や動画を活用して、より良い支援を行えるように準備しましょう。
特定技能やそのほか就労ビザについて、不明点や悩み事がある場合はぜひご相談ください!
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