在留資格「特定技能」は1号のみの分野と1号と2号の両方が認められている分野が存在します。
外食業分野は、特定技能2号に移行可能な分野となっています。本記事では、外食分野における特定技能2号で求められる技能水準や日本語能力水準、そのほか移行に必要な書類について解説していきます。
目次:
1.特定技能「外食業」とは
特定技能「外食業」分野は、レストランや飲食店のホール業務や調理業務など、外食業とその関連業務に従事することが可能となっています。
外食業分野は2023年の秋から特定技能2号も創設されました。
1-1.特定技能とは
特定技能は在留資格の一つとして、2019年4月より受け入れが可能になった制度です。人材確保が困難とされる分野を対象に、専門性や技術・知識を持った外国人を受け入れるために創設されました。
特定技能には1号と2号があり、特定技能2号では1号よりさらに熟練した技術や知識が求められます。
現在、受け入れ可能な分野は以下のとおりです。
【特定技能1号】
①介護
②ビルクリーニング
③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
⑬自動車運送業
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
【特定技能2号】
①ビルクリーニング
②素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
③建設
④造船・舶用工業
⑤自動車整備
⑥航空
⑦宿泊
⑧農業
⑨漁業
⑩飲食料品製造業
⑪外食業
1-2.特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号では、技能水準の違いだけではなく、在留期間や永住権の取得の可否なども異なります。
【特定技能1号】
*在留期間:4ヶ月・6ヶ月・1年ごとの更新で、通算5年を上限とする
*永住権:取得できない
*家族の帯同:不可
*技能水準:相当程度の知識または経験を必要とする技能
*外国人支援:必須、支援計画の策定実施が義務付けられている
【特定技能2号】
*在留期間:6ヶ月・1年・3年ごとの更新で、更新の上限はない
*永住権:条件を満たせば可能
*家族の帯同:条件を満たせば可能
*技能水準:熟練した技能が必要
*外国人支援:必須、支援計画の策定実施が義務付けられている
1-3.特定技能に外食業が加わった背景
特定技能制度に加わっている分野は、深刻な人手不足が認められています。外食業も他の分野と同様に、人手不足が長らく続いているのです。
人手不足が顕著に現れるデータとして、有効求人倍率があげられます。数字が大きいほど、人手不足になります。
2024年4月現在の有効求人倍率は全産業では1.16に対し、外食業では3.56になっています。
人手不足解消のためにITを活用し、解消できる部分も少なくありません。しかし、外食業分野においては、それも限界があるようです。
農林水産省は外食業分野における受け入れの必要性として、以下の内容を挙げています。
”外食業分野においては、増加するインバウンド等への対応が求められる中で、手作り感やホスピタリティといった外食業ならではの価値を作り出すことが求められること、状況に応じて臨機応変に作業内容を変える判断が必要となること等から、機械化による省力化にも限りがあり、外国人を含め必要な人材を確保していくことが急務。”
これらの背景から、外食業分野において、特定技能制度を運用し人手不足解消を目指しています。
2.外食業特定技能2号に必要な条件や技能水準
特定技能1号と2号では、従事する業務範囲が異なります。そのため、特定技能2号で求められる技能水準も違ってくるのです。
2-1.特定技能「外食業」で従事できる業務
【特定技能1号】
外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)に主として従事できる。また、在留期間全体の一部の期間においては「調理担当」などの特定の業務のみに従事することも可能とされています。
*飲食物調理・・・客に提供する飲食料品の調理、調整、製造を行うもの
*接客・・・客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの
*店舗管理・・・店舗の運営に必要となる、上記の業務以外のもの
【特定技能2号】
外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)及び店舗経営の業務について、トータルで管理できる人材として従事できる。
例えば、店舗経営や管理業務を主として従事し、接客、飲食物調理を行うことも可能です。
*店舗経営・・・店舗をトータルで管理するために必要な上記の業務以外のもの(店舗の経営分析、経営管理、契約に関する事務等)
このように特定技能1号と2号では、従事する業務内容や範囲が異なるため、特定技能2号では、さらに深い知識と高い技能水準が求められます。
2-2.特定技能2号に移行するために必要な条件
特定技能2号「外食業」を取得するためには、「外食業特定技能2号技能測定試験」と「日本語能力試験N3以上」の合格が必要となります。
外食業特定技能2号技能測定試験は、接客全般についてや飲食物調理、衛生管理や店舗経営に関する知識が求められます。
日本語能力試験N3では、「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」程度の能力が目安となっています。
各試験の詳細については、別項で解説しています。
これらの試験合格が特定技能2号「外食業」で必要な条件となっています。
2-3.特定技能2号「外食業」で求められる技能水準
特定技能2号「外食業」で従事するためには、外食業特定技能2号技能測定試験と日本語能力試験N3以上の合格だけではなく、実務経験が求められます。
「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針に係る運用要領」では、下記のとおり記されています。
”外食業特定技能2号技能測定試験の合格及び食品衛生法(昭和 22 年法律第 233号)の営業許可を受けた飲食店において、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての、2年間の実務経験(ただし、当該経験を終えてから、別途農林水産大臣が定める期間を経過していないものに限る。以下「指導等実務経験」という。)を要件とする。”
2年間の実務経験では、複数のアルバイトや特定技能外国人の指導や監督をしながら接客をし、店舗管理の補助として働くことが求められているのです。
3.外食業特定技能2号技能測定試験と日本語能力試験N3の詳細
特定技能2号取得のために受からなくてはならない試験の詳細について解説していきます。
3-1.外食業特定技能2号技能測定試験
外食業特定技能2号技能測定試験では、食品衛生に配慮した飲食物の取り扱い、調理及び給仕に至る一連の業務を担い、管理することができる知識・技能に加え、店舗経営の業務が適切に遂行できる能力を確認します。
試験科目は、
「衛生管理」「飲食物調理」「接客全般」「店舗運営」に係る知識、判断能力、計画立案能力(店舗運営に必要な計算能力を含む)とされています。
科目の主な内容は以下のとおりです。
*衛生管理:一般衛生管理に関する知識、HACCPに関する知識、食中毒に関する知識、食品衛生法に関する知識など
【学科試験】
問題数:10問
配点:満点…40点
【実技試験】
問題数:判断試験…3問、計画立案…2問
配点:満点…40点
*飲食物調理:調理に関する知識、食材に関する知識、調理機器に関する知識、食品の流通に関する知識など
【学科試験】
問題数:5問
配点:満点…10点
【実技試験】
問題数:判断試験…3問、計画立案…2問
配点:満点…20点
*接客全般:接客サービスに関する知識、食の多様化に関する知識、クレーム対応に関する知識、公衆衛生に関する知識など
【学科試験】
問題数:10問
配点:満点…30点
【実技試験】
問題数:判断試験…3問、計画立案…2問
配点:満点…30点
*店舗運営:係数管理に関する知識、雇用管理に関する知識、届出関係に関する知識など
【学科試験】
問題数:10問
配点:満点…40点
【実技試験】
問題数:判断試験…3問、計画立案…2問
配点:満点…40点
学科試験の問題数は合計35問、配点は120点、実技試験の問題数は合計20問、配点は合計130点となっています。
3-2.日本語能力試験N3
日本語能力試験はN1〜N5まであり、N1が一番難しくN5が一番やさしいレベルとなっています。
日本語能力試験JLPTでは、N4とN5はおもに教室内で学基本的な日本語がどのくらい理解できるかを測り、N1とN2では現実の生活の幅広い場面での日本語がどのくらいできているかを測るとしています。
N3については、N1、N2とN4、N5の橋渡しレベルとなっているのです。
N3レベルでの認定レベルは、以下のとおりです。
読む:日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。
新聞の見出しなどから情報の概要を掴むことができる。
日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
聞く:日常的な場面で、やや自然に近いスポーどのまとまりのある会話を聞いて話の具体的な内容を登場人物の関係などと合わせてほぼ理解できる。
参考・引用:日本語能力試験JLPT
4.特定技能2号を申請するために必要な書類
特定技能2号「外食業」では、試験の合格や実務経験が必要です。それらの条件をすべて満たしていれば、特定技能2号を申請することが可能となっています。
申請に必要な書類は以下のとおりです。
・外食業特定技能2号技能測定試験の合格証明書の写し
・日本語能力試験N3以上の合格証明書の写し
・保健所長の営業許可証または届出書の写し
・外食業分野での特定技能外国人の受け入れに関する誓約書
・協議会の構成員であることの証明書
・指導等実務経験証明書
5.外食業の特定技能外国人受け入れ例
さまざまな企業で多くの外国人が、特定技能「外食業」で雇用されています。実際の受け入れ例を見ていきましょう。
5-1.仕出し弁当業者
元々は留学生アルバイトだった、従業員が、引き続き日本での就労を希望したため、特定技能制度を活用し、雇用することに。
弁当製造ラインのリーダー格として、ライン従業員の作業進行管理をしてもらいつつ、他の留学生アルバイト間との通訳業務も行っている。
5-2.日本料理店
外国人アルバイト従業員が、特定技能制度により日本での就労を希望し、会社として支援。
社内の雇用基準に則り、嘱託社員として雇用。待遇は日本人の嘱託社員と同様となっている。
以前は、日本料理店で外国人の調理人が働いていることに客の抵抗感もあったようだが、それも無くなっている。
インバウンド客も多いため、特定技能外国人が韓国語、英語に堪能なため、その方面でも期待している。
このほかにも、多くの企業が特定技能外国人を雇用し、人手不足解消だけではなくインバウンド客への接客に対しての期待もあるようです。
6.さまざまな面で活躍できる外食業の特定技能外国人
外食業分野において、特定技能外国人は人手不足解消だけではなく、インバウンド客への対応や、外国人アルバイトの通訳などさまざまな面で活躍してくれます。
今後、従業員に外国人が多くなる見込みであれば、特に店舗経営に携わることができる、2号特定技能外国人はさらに活躍することでしょう。
就労ビザや、特定技能に関することでお悩みの方は、ぜひご相談ください。
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