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日本の技能実習制度は、多くの海外人材労働者を受け入れていますが、その中でもベトナム人技能実習生の数が特に多い理由をご存じでしょうか?経済的な背景や文化的な要因、制度の仕組みなどが関係しています。
本記事では、なぜベトナム人技能実習生が多いのか、彼らの給料事情や生活環境、さらには制度の課題や今後の展望について詳しく解説します。日本社会との関わりや将来のキャリアについても掘り下げるので、ぜひ最後までご覧ください。
1.ベトナム技能実習生が多い理由とは?

日本に来る理由と実習生制度の背景
日本には多くのベトナム技能実習生が訪れていますが、その背景には経済的な理由と制度の仕組みがあります。ベトナムの平均月収は日本と比べて低く、日本で働くことで家族を支えることができるため、多くの若者が技能実習制度を利用しています。
また、日本の技能実習制度は発展途上国の人材育成を目的としており、企業と実習生双方にメリットがある仕組みです。
技能実習制度は1993年に開始され、日本企業が海外人材労働者を一定期間受け入れ、技術を習得させることを目的としています。しかし、実際には人手不足を補う労働力として扱われるケースも多く、低賃金や労働環境の問題も指摘されています。それでも、日本での就労経験を活かして帰国後にキャリアアップを目指す実習生も多く、経済的な安定と将来の展望を見据えて来日するのが現状です。
さらに、日本とベトナムの政府間協定により、送り出し機関を通じた技能実習生の派遣が円滑に行われていることも理由の一つです。日本企業側も、ベトナム人の勤勉さやまじめな性格を評価し、積極的に受け入れています。このような制度の背景を理解することで、なぜ多くのベトナム人技能実習生が日本を選ぶのかが見えてきます。
ベトナムが親日国とされる理由

ベトナムは数ある東南アジア諸国の中でも、日本に対して特に親しみを持つ国の一つです。
その理由の一つとして、日本とベトナムの長年にわたる経済協力が挙げられます。日本はベトナムの主要な貿易相手国であり、多くのインフラ整備やODA(政府開発援助)を通じて経済発展を支援してきました。これにより、ベトナム国内での日本に対する信頼が高まり、日本企業への好意的な印象が根付いています。
また、日本文化の影響も大きく関係しています。アニメや漫画、J-POP、ドラマといった日本のコンテンツはベトナムでも非常に人気があり、多くの若者が日本に憧れを抱いています。さらに、日本の教育制度や生活スタイルにも関心を持つ人が多く、日本語を学ぶベトナム人の数は年々増加しています。これは、技能実習生としての来日を後押しする要因の一つにもなっています。
歴史的な観点から見ても、ベトナムと日本の関係は比較的良好であり、日本が植民地支配を行わなかったことも、他の国々と比べて好感を持たれる要因です。
加えて、日本の製品やサービスの品質が高いことも、ベトナム人が日本に親しみを感じる理由の一つです。これらの要素が重なり、ベトナムは親日国としての立場を確立しているのです。
2.ベトナム技能実習生の給料と手取り事情

日本での給料水準とベトナムとの比較
日本とベトナムの給料水準には大きな差があります。
ベトナムの平均月収は都市部の平均月収は595万ドン(約3万6千円)、農村部は386万ドン(約2万4千円)一般的です。
都市部 | 平均月収は595万ドン(約3万6千円) |
農村部 | 386万ドン(約2万4千円) |
一方、日本の最低賃金は地域によりますが、時給1,000円前後のエリアが多く、フルタイムで働けば月収20万円を超えることも珍しくありません。この差が、ベトナムの若者が技能実習生として日本で働く大きな理由の一つです。
ただし、日本の物価も高いため、単純に給料が高いからといってすべての実習生が余裕のある生活を送れるわけではありません。家賃や食費、交通費などの生活費を考慮すると、実際に自由に使えるお金は限られます。それでも、ベトナムと比べると圧倒的に高い収入が得られるため、多くの実習生が日本での就労を希望します。
また、日本で働くことのもう一つの魅力は、給与の安定性です。ベトナムでは仕事の収入が不安定なケースも多く、景気によって大きく左右される職種もあります。その点、日本では労働基準法による最低賃金の保証があり、定期的な給与支払いが約束されているため、実習生にとって安心して働ける環境となっています。
実習生の手取り額と仕送りの実態
技能実習生が日本で受け取る給料は、一見高額に思えますが、実際の手取り額は控除後に大きく減少します。
まず、所得税や住民税、社会保険料が引かれ、さらに寮費や光熱費などが差し引かれるため、手元に残る金額は額面よりもかなり少なくなります。平均的な手取り額は月10〜15万円程度が一般的で、地域や勤務時間によってはそれ以下になることもあります。
それでも、実習生の多くは母国の家族に仕送りを行っており、その額は月に5〜10万円ほどが平均とされています。特に、ベトナムの地方出身者は、日本で働くことで家族の生活費を支えたり、子どもの教育費を負担したりすることが大きな目的となっています。そのため、自身の生活費をできるだけ抑え、仕送りを優先するケースも少なくありません。
一方で、日本の生活費は高く、実習生にとっては大きな負担です。食費や交通費を節約するために、自炊を徹底したり、寮で共同生活を送ることが一般的です。こうした工夫をしながらも、日本での収入を有効活用し、少しでも多くの金額をベトナムの家族へ送ることが彼らの目標となっています。
3.ベトナム技能実習生の問題と課題

技能実習制度の問題とトラブル事例
技能実習制度は、日本の企業が発展途上国の労働者に技術を教え、帰国後にその技術を活かしてもらうことを目的としています。しかし、現実には低賃金労働力の確保という側面が強く、多くの問題が指摘されています。特に、長時間労働や低賃金の問題が深刻で、技能実習生の権利が十分に守られていないケースが多く見られます。
例えば、実習生が契約内容と異なる業務を強制される、休日が取れない、または最低賃金以下の給与しか支払われないといったトラブルが報告されています。
さらに、劣悪な住環境やハラスメントを受ける事例もあり、実習生が精神的なストレスを抱えることも少なくありません。こうした問題が発生する背景には、受け入れ企業の監督不足や、日本の労働環境に慣れない実習生との意思疎通の難しさがあります。
また、技能実習生が途中で失踪するケースも増えています。これは、過酷な労働環境に耐えられず、より高い給料が期待できる不法就労を選択してしまうためです。こうした失踪者の増加は、制度全体の信頼性を損なう要因にもなっています。制度の本来の目的を達成するためには、労働環境の改善や、受け入れ企業の意識改革が必要とされているのが現状です。
ベトナム人が帰ってほしいと言われる理由
近年、日本国内では「ベトナム人が帰ってほしい」といった声を耳にすることがあります。その背景には、技能実習生や留学生の増加による地域社会との摩擦、不法滞在や犯罪の増加が影響しています。特に、ベトナム人技能実習生の失踪者が増え、不法就労や窃盗などの犯罪がニュースで取り上げられることで、一部の人々がネガティブな印象を持ってしまうことがあるのです。
しかし、こうした問題の多くは、制度そのものの課題や、日本社会の受け入れ態勢の不備にも起因しています。例えば、劣悪な労働環境や低賃金に耐えられず、逃げざるを得なかった実習生も少なくありません。また、日本語能力の不足から地域住民と十分にコミュニケーションが取れず、誤解が生まれることもあります。
一方で、技能実習生や留学生の多くは真面目に働き、日本社会に貢献しています。コンビニや工場、農業など、人手不足の業界では彼らの存在が不可欠です。そのため、一部の問題を理由に全体を否定するのは適切ではありません。今後は、技能実習生が日本で適切に働ける環境を整え、地域社会との関係を深めることが課題となるでしょう。
4.ベトナム技能実習生の生活事情

生活環境と異文化のギャップ

日本で生活するベトナム人技能実習生にとって、生活環境の違いや文化のギャップは大きな課題です。
まず、気候の違いが影響を与えます。ベトナムは年間を通じて温暖な気候ですが、日本は四季がはっきりしており、冬の寒さが厳しい地域も多く、初めて冬を経験する実習生にとっては大きな負担となります。また、冬場の暖房設備の違いもあり、日本の住宅は寒さ対策が十分でないと感じる人もいます。
食文化の違いも大きなギャップの一つです。ベトナムでは香草や魚醤を使った料理が一般的ですが、日本ではそうした食材が手に入りにくいことがあります。
また、職場での昼食が弁当や社食になるケースが多く、ベトナムのように温かいスープ付きの食事が取れないことに戸惑う実習生もいます。そのため、自炊を工夫したり、ベトナム食材を扱う店を探したりする必要があります。
さらに、日本のマナーや生活習慣も実習生にとっては新しいものです。例えば、ごみの分別ルールや公共の場での静かさを求められる文化は、ベトナムと異なります。また、仕事においては時間厳守が求められるため、少しの遅れでも注意されることがあります。こうした違いに適応するには時間がかかりますが、経験を積むことで少しずつ慣れていく実習生も多いです。
5.ベトナム人が日本で働く理由と今後の展望

技能実習生の将来とキャリアの選択肢
技能実習生が日本で働いた後のキャリアには、大きく分けて3つの選択肢があります。
◾️技能実習終了後の主なキャリアの選択肢
選択肢 | 詳細 |
ベトナムへ帰国し就職 | 日本で習得した技術を活かし、製造業や建設業などの分野で活躍。日系企業に就職し、安定した職を得るケースも多い。昇進や独立のチャンスもある。 |
日本で引き続き就労 | 特定技能制度を活用し、技能実習終了後も日本で働くことが可能。待遇改善や転職の自由度が増すが、特定技能試験の合格や日本語能力の向上が必要。 |
日越の橋渡し役として活躍 | 日本での経験を活かし、ベトナムで日本語教師や通訳、企業の現地スタッフとして働く。日系企業とベトナム企業をつなぐ役割を果たす人材の需要が高まっている。 |
まず、最も一般的なのが、実習終了後にベトナムへ帰国し、日本で学んだ技術を活かして就職する道です。特に、製造業や建設業などの分野では、日本の技術を習得した人材は高く評価され、現地企業での昇進や独立のチャンスを得ることもあります。また、日本での就労経験を活かして日系企業に就職し、より安定した職を得るケースも少なくありません。
次に、日本で引き続き働く選択肢もあります。近年、特定技能制度が整備されたことで、技能実習終了後に特定技能ビザへ変更し、より長期間働けるようになりました。これにより、待遇が改善されるだけでなく、転職の自由度が増すため、実習生にとっては魅力的な選択肢となっています。しかし、日本での就労を継続するためには、特定技能試験の合格や、日本語能力の向上が求められるため、準備が必要です。
最後に、ベトナムと日本の橋渡し役としてのキャリアを築く道もあります。日本での経験を活かし、ベトナムで日本語教師や通訳、企業の現地スタッフとして働く人も増えています。特に、日本とベトナムの経済的なつながりが強まる中、日系企業とベトナム企業をつなぐ役割を果たせる人材は、今後さらに求められるでしょう。
技能実習制度の見直しと今後の影響
技能実習制度は、長年にわたって多くの海外人材労働者を受け入れてきましたが、さまざまな問題が指摘されてきました。特に、低賃金や労働環境の悪化、不適切な管理体制などの課題が浮き彫りになり、制度の見直しが進められています。
政府は、技能実習制度を廃止し、新たな「育成就労制度」を導入する方針を打ち出しており、これにより、より公平な労働環境が整備されることが期待されています。
見直しの大きなポイントの一つは、労働者としての権利が明確に保証されることです。これまでの制度では「技能の習得」が目的とされていましたが、新制度では「労働者」としての扱いが強化され、給与の透明性や労働条件の改善が求められます。
また、転職の自由度が拡大することで、実習生が適切な職場を選びやすくなる可能性があります。
この変化により、日本の企業側にも影響が出ると考えられます。これまでのように低賃金の労働力として活用することが難しくなり、適切な待遇や職場環境を整える必要が出てきます。
一方で、労働者のモチベーションが向上し、長期的な雇用につながる可能性もあります。技能実習制度の見直しは、日本の人手不足対策に大きな影響を与えるとともに、海外人材労働者にとってもより良い環境を提供する重要な転換点となるでしょう。
6.まとめ

ベトナム人技能実習生が多い背景には、経済的な要因、日本との関係性、そして技能実習制度の仕組みが深く関わっています。彼らはより良い収入を求めて来日し、日本企業も労働力不足を補うために積極的に受け入れています。しかし、低賃金や労働環境の問題、文化の違いによる課題も無視できません。
今後、制度の見直しによって待遇改善が進めば、より持続可能な形での海外人材雇用が実現するでしょう。日本社会においても、彼らとの共生を考えることが求められています。
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