整備士不足が当たり前に?減少の背景と業界が直面する未来とは
- sou takahashi
- 7月23日
- 読了時間: 15分

目次:
かつては安定職とされた自動車整備士の世界で、今「整備士不足が当たり前」と言われるほどの人手不足が深刻化しています。現場では採用が難航し、物流や安全維持にも影響が出始めています。
この記事では、整備士が減少する根本的な理由から、業界全体の課題、そして国や企業が進める対策までをわかりやすく解説。今、整備士という仕事に何が起きているのかを明らかにします。
1.整備士不足が当たり前と言われる背景

整備士が減り続けている理由とは
整備士の人数が年々減少している背景には、いくつかの複合的な要因が存在します。
要因カテゴリ | 内容 |
若年層の志望減少 | ・自動車整備士など専門職を目指す専門学校の入学者が減少・専門性の高さに加え、体力的負担や汚れ作業の多さが敬遠されやすい |
労働条件と待遇のギャップ | ・業務の大変さに比べて給与水準が見合わないという声が多い・「割に合わない」と感じ、他職種を選ぶ若者が多い |
高齢化による人材流出 | ・整備士の平均年齢が上昇し、50代以上の占める割合が拡大・定年や体力的理由での離職が相次ぐ可能性が高く、若手不足に拍車がかかる |
こうした傾向は、整備工場やディーラーにとって深刻な課題です。求人を出しても応募が集まらない、採用しても長く定着しないという悩みが広がっており、業界全体の持続性が危ぶまれる状況に陥っています。
国土交通省が危機感を示す実態
国土交通省は、自動車整備士の人手不足を「自動車の安全確保に関わる重要な問題」として強い危機感を示しています。整備士の数が減ることで、整備業務に支障が出るだけでなく、安全面にも大きな影響が及ぶ可能性があるからです。
実際に、同省は2014年から「自動車整備人材確保・育成推進協議会」を設置し、業界団体や教育機関と連携しながら人材確保に向けた対策を進めています。具体的には、小中高校生に向けた職業体験の機会を増やしたり、働きやすい職場環境を整備するためのガイドラインを策定したりと、幅広い取り組みが行われています。
一方で、こうした施策の効果はまだ限定的であり、人材確保のスピードは整備士の減少ペースに追いついていないのが現状です。整備士の仕事のイメージ改善や待遇の向上など、より踏み込んだ改革が求められていると言えるでしょう。
若者の車離れと少子化の影響
若者の車離れと少子化は、自動車整備士のなり手が減っている大きな原因のひとつです。自動車に対する関心が薄れている若者が増え、自動車関連の職業に魅力を感じる人が少なくなっています。
要因カテゴリ | 内容 |
経済・生活環境の変化 | ・車の維持費・保険料・駐車場代などのコスト負担が大きく、所有を避ける若者が増加・都市部では公共交通機関が発達しており、車を持たない選択が現実的 |
人口動態の変化 | ・少子化により若者の絶対数が減少・整備士志望者が減り、専門学校の入学者数も減少傾向・将来的に整備士の人材供給が不足するリスクが高まっている |
このように、若者の価値観の変化や人口構造の変化が、自動車整備業界の人材不足に拍車をかけているのです。今後は、車の魅力を再認識させる施策や、多様な働き方の提案を通じて、若い世代の関心を呼び戻す取り組みが必要不可欠となります。
2.整備士不足が当たり前になった現在の課題

トラック整備士不足が物流に与える影響
トラック整備士の不足は、日本の物流全体に大きな影響を及ぼしています。なぜなら、整備士がいなければトラックの車検や点検、修理が遅れ、車両が使えなくなるケースが増えるからです。特に中型~大型トラックは、日常的に長距離を走るため故障のリスクも高く、整備が滞ると配送そのものがストップしてしまいます。
影響カテゴリ | 内容 |
納品・流通への支障 | ・整備待ちで車両が稼働できず、配送スケジュールに遅れが生じる・生鮮食品や医薬品など、時間厳守が求められる品目においては大きな損失リスク |
サービス品質の低下 | ・「翌日配送」や「時間指定配送」など、高度なニーズに対応できなくなる・顧客満足度や信頼性の低下により、業界全体の競争力が下がる可能性がある |
物流業界はただでさえ人手不足が続いているため、整備士の確保は喫緊の課題です。整備体制が整わないと、ドライバーの安全も確保できません。輸送の裏側を支える「縁の下の力持ち」であるトラック整備士の存在は、これまで以上に重視されるべきでしょう。
整備士の採用が難しい根本的な要因
整備士の採用が難しい原因は、人手不足という表面的な問題だけでなく、その背後にある「業界の構造的課題」が大きく関係しています。採用活動を行っても応募が集まりにくく、さらに採用しても短期間で辞めてしまうケースが後を絶ちません。
要因カテゴリ | 内容 |
職業イメージの問題 | ・「汚れる」「きつい」といったネガティブな印象が若年層に根強く、魅力的な職業として認識されていない |
教育・待遇のミスマッチ | ・専門学校で資格を取得しても、就職後に十分な教育を受けられないケースが多い・即戦力として扱われ、成長実感が得られにくいため早期離職につながりやすい |
採用活動の不備 | ・中小規模工場では人事体制が未整備で、求人票の内容が求職者の期待と乖離している・応募者の目線に立った訴求ができていない |
採用難を乗り越えるためには、職場環境の整備やイメージアップだけでなく、教育体制の充実と情報発信の工夫が必要です。単に人を集めるのではなく、定着してもらう仕組みまで考えることが重要だと言えるでしょう。
離職理由に多い待遇と人間関係の問題
自動車整備士が職場を離れる理由として、多く挙げられるのが「待遇の不満」と「人間関係の悩み」です。どちらも職場への定着率に直結するため、企業側としては早急な対策が求められています。
離職要因カテゴリ | 内容 |
待遇面の不満 | ・業務量に見合わない低賃金(例:残業が多くても手取り20万円未満)・休日日数が少なく、平日休み中心で家族との時間が取りづらい |
職場の人間関係 | ・古い職人気質の文化が残り、新人が馴染みにくい・上下関係が厳しく、叱責が多い雰囲気で相談しにくい環境が早期離職を招いている |
前述の通り、整備士は高い専門性を持つ職業です。それだけに、職場でのサポートや理解が欠けていると、モチベーションが下がりやすくなります。待遇改善だけでなく、メンター制度の導入や定期的な面談の実施など、人間関係のサポート体制を整えることが、離職防止に効果的です。
結果として、働きやすい環境を整えることが、長期的な人材確保のカギになります。給与水準を上げるだけでなく、「ここなら安心して働ける」と感じてもらえる職場づくりが不可欠です。
特定技能 自動車整備分野社員採用について
3.整備士不足が当たり前でも国は動いている

自動車整備士不足への国の対策とは
自動車整備士の深刻な人手不足に対し、国は業界全体の持続可能性を守るため、さまざまな対策を講じています。
取り組みカテゴリ | 内容 |
若年層へのアプローチ | ・小学生〜高校生を対象に、出張授業や職業体験イベントを実施・進路選択の早い段階で整備士の魅力を伝え、将来の候補として意識してもらう |
教育環境の整備支援 | ・整備学校にVR教材を導入する支援を実施・先進技術搭載車両を使った研修に補助金を提供し、次世代整備士の技術対応力を強化 |
このように、国の対策は単なる人員確保にとどまらず、若手育成や技術研修、働き方改革など多方面にわたっており、長期的な視点での人材育成が図られています。
多様な働き方への対応と労働環境の改善
自動車整備業界が抱える課題のひとつに、「働きづらさ」があります。この点に着目し、国や業界団体は多様な働き方を可能にする職場環境づくりを進めています。従来のような長時間労働・休日の少なさから脱却し、整備士にとって柔軟で続けやすい働き方を実現することが急務とされているのです。
施策カテゴリ | 内容 |
柔軟な働き方の導入支援 | ・週休3日制や時短勤務の導入が一部整備工場で進行中・交代制の導入によって労働時間の平準化を実現し、離職率の低下に寄与 |
国による環境改善の推進 | ・国土交通省が「整備士の働きやすい職場ガイドライン」を策定・労働時間管理、人間関係、設備改善などを明文化し、経営者や現場への理解促進に活用されている |
こうした流れにより、従来の「きつくて長時間働かされる」という印象が徐々に払拭されつつあります。働く側のライフスタイルや価値観の多様化に対応しながら、人材の定着と満足度の向上を目指すことが今後の鍵となります。
海外人材や女性整備士への期待が高まる
整備士不足の解消に向けて、これまで見過ごされがちだった「海外人材」と「女性整備士」の活用が注目されています。従来、整備士の多くは男性で占められていましたが、今後は多様な人材の受け入れが避けて通れない流れになりつつあります。
取り組みカテゴリ | 内容 |
海外人材の活用 | ・2019年より「特定技能制度」で正式に受け入れが可能に・日本語教育や技術研修を含む支援体制が整備され、即戦力としての現場活躍が期待されている |
女性整備士の支援 | ・全国で約1万人の女性整備士が在籍も、依然として比率は低い・国や業界団体がガイドラインを策定し、工具の軽量化や補助機器導入などで働きやすい環境づくりを推進 |
整備という仕事の枠組みを広げ、性別や国籍を問わずに活躍できる環境を整備することは、業界全体の未来にも直結します。人材不足という課題を克服するには、こうした人材の多様性を受け入れる柔軟性が不可欠です。
特定技能 自動車整備分野社員採用について
4.整備士不足が当たり前でも転職者が増える理由

整備士を辞めて良かったと言われる理由
自動車整備士を辞めた人の中には、「辞めて良かった」と実感している声も少なくありません。その背景には、整備士という仕事の特性と、転職後の環境の違いがあります。働き方や将来性への不安が転職の後押しとなるケースが多く見られます。
整備士の仕事は、専門的な知識や技術を必要とする一方で、体力的にきつい作業が多く、長時間の立ち仕事や力仕事が日常です。加えて、油やホコリにまみれる環境、クレーム対応、繁忙期の深夜勤務など、ストレスが蓄積しやすい状況もあります。こうした環境に長く身を置くことに限界を感じる人もいるようです。
一方、異業種に転職した人の中には「収入が安定した」「家族との時間が持てるようになった」「精神的に楽になった」と話すケースもあります。たとえば、製造業やIT業界、営業職などでは、休日や勤務時間が安定し、福利厚生もしっかりしている企業が多いため、整備士時代とのギャップをポジティブに感じる人も多いのです。
もちろん、すべての整備士が辞めるべきだという話ではありません。ただ、現場環境や待遇の改善が進んでいない職場では、「辞めて良かった」と感じさせてしまう現実があるということです。業界としても、こうした離職の実態に真摯に向き合う必要があるでしょう。
整備士から他業種への人材流出が進む背景
自動車整備士から他の業種へ人材が流れていく動きは年々加速しています。この傾向は一時的なものではなく、構造的な課題が関係しており、業界全体での対応が求められています。
要因カテゴリ | 内容 |
技術革新への不安 | ・EVや自動運転車の普及により、従来の整備業務の需要が減少する懸念がある・継続的な学習や資格取得が必要となり、心理的・時間的な負担が増している |
収入・キャリアの課題 | ・平均年収が400万円台と、他の専門職に比べて高いとは言えない・「割に合わない」と感じる層が、営業職・製造業・IT業界などへ流出している傾向がある |
人材流出は若手ほど顕著です。整備学校を卒業して数年で業界を離れる若者が多く、せっかくの人材が定着しないことが大きな問題です。働き方や職場環境、成長機会が整っていないことが背景にあると考えられます。
こうした流れを止めるには、待遇改善だけでなく、明確なキャリアパスの提示や、長く働き続けられる柔軟な働き方の導入が不可欠です。人材流出は企業単位ではなく、業界全体で取り組むべき重要課題だと言えるでしょう。
5. 特定技能で人手不足に対応するという選択肢

日本社会全体で人手不足が深刻化する中、企業が持続的に成長していくためには、従来の採用手法だけでなく、新しいアプローチを取り入れることが求められます。その一つの現実的な選択肢として、「特定技能」による海外人材の受け入れが注目されています。
特定技能制度は、一定の専門性や技能を持つ海外人材を、即戦力として受け入れられる制度です。介護、建設、農業、外食、自動車整備など、慢性的に人材が不足している業界において、優秀な人材を確保しやすくなるという利点があります。
特に、登録支援機関を通じて採用を行えば、ビザ取得のサポートから生活面の支援まで一貫してフォローを受けられるため、企業側の負担も軽減できます。
受け入れ企業としては、サポート体制を整えるとともに、日本語教育や職場内のコミュニケーション体制を充実させることで、海外人材が長く安心して働ける環境を構築することが可能です。
登録支援機関を活用するメリット
登録支援機関は、特定技能人材の採用から定着までをサポートする専門機関です。具体的には、以下のような支援を提供しています。
適切な人材のマッチング:業界のニーズに合った人材を紹介
ビザ申請手続きのサポート:在留資格取得の手続きを代行
入国対応と生活支援:住居の手配、日本の生活ルールの説明
職場での教育支援:業務研修、日本語研修の実施
定期面談・トラブル対応:労働環境の確認、課題解決の支援
こうした包括的なサポートにより、企業側の負担を大幅に軽減しながら、スムーズな受け入れを実現できます。
自社で受け入れ体制を整える
登録支援機関のサポートを受けることも大切ですが、最終的には受け入れ企業側が海外人材を定着させる環境を整えることが重要です。具体的には、以下の取り組みを行うことで、海外人材スタッフが安心して働ける環境を作ることができます。
日本語教育のサポート:業務に必要な日本語を学べる環境を提供
文化・業務ルールの明確化:マナーやルールを明確にし、混乱を防ぐ
既存スタッフとの交流機会を増やす:コミュニケーションを促進し、チームワークを強化
キャリアパスを明示する:長期的に働く意欲を高めるため、昇進やスキルアップの機会を提供
特に、初めて海外人材労働者を受け入れる企業は、「まずは登録支援機関を活用し、徐々に自社で支援体制を強化する」 という段階的なステップを踏むのがおすすめです。
特定技能 自動車整備分野社員採用について
これにより、負担を抑えながら、優秀な海外人材労働者を確保し、企業の成長へとつなげることができます。適切な採用戦略とサポート体制を整え、特定技能人材の活用を最大限に活かしましょう。
6.よくあるご質問

◾️Q1. 整備士は人手不足ですか?
はい、整備士は深刻な人手不足に直面しています。若年層の志望者が減少し、既存の整備士の高齢化が進んでいるため、現場では常に人材が不足しています。特に中小規模の整備工場では、採用が難航して業務に支障が出ているケースもあります。
◾️Q2. 整備士が少ない理由は何ですか?
主な理由は職業イメージと待遇のギャップです。「汚れる」「きつい」といった印象が強く、若者に敬遠されがちです。また、給与水準が他業種と比べて高くなく、長時間労働も少なくないことから、魅力を感じにくい職種になっています。
◾️Q3. 整備士として一人前になるまでにはどれくらいかかりますか?
一般的に、整備士として現場で独り立ちできるようになるには、専門学校で2年間学んだ後、実務経験を2〜3年積む必要があります。車両整備の知識に加え、現場対応力や接客スキルも求められるため、完全に一人前になるにはおおよそ5年が目安とされています。
◾️Q4. 整備士がやめた理由は何ですか?
離職理由で最も多いのは「待遇面への不満」です。給与の低さや休日の少なさに加えて、職場の人間関係が厳しいという声も多くあります。また、将来的なキャリアの見通しが立ちにくいことや、新しい技術への対応プレッシャーも離職の要因となっています。
7.まとめ

自動車整備士不足は、もはや一部の企業だけの問題ではなく、社会全体に波及する深刻な課題です。若者の車離れや少子化、待遇面の不満、将来への不安などが要因となり、業界から人材が流出し続けています。
このままでは、安全な車社会の維持や物流インフラに支障が出る可能性も否定できません。だからこそ、整備士の役割を正しく評価し、多様な人材が活躍できる柔軟な仕組みづくりが求められています。
人材を「集める」だけでなく、「育てて、長く働いてもらう」視点が不可欠です。持続可能な整備業界を築くには、国・企業・教育機関が連携し、現実に即した改革を進めていく必要があります。
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