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特定技能外国人材を"安くて便利な労働力"と捉える企業が失敗する理由

  • sou takahashi
  • 5 日前
  • 読了時間: 12分
特定技能外国人材を"安くて便利な労働力"と捉える企業が失敗する理由

目次:


日本の人手不足が深刻化する中、特定技能制度への注目が高まっています。しかし、「外国人材なら安く雇える」という誤解から採用をスタートすると、思わぬ失敗に直面することが少なくありません。


失敗の原因は、外国人材本人の問題でも、現場スタッフの努力不足でもありません。その多くは、採用目的のズレ受け入れ設計の不足長期視点の欠如という"経営判断のミス"によって起こります。


本記事では、「なぜ"安く使おう"とする企業が失敗するのか」を、高コスト化する構造として整理し、経営者が取るべき具体的な打ち手を提示します。


1.「安く雇う」は短期利益に見えて、長期で"損益が逆転"する


「安く雇う」は短期利益に見えて、長期で"損益が逆転"する

特定技能は「コスト削減」ではなく「事業継続の人材戦略」


まず明確にしておきたいのは、特定技能制度は「安い労働力を確保する制度」ではないということです。制度の本質は、日本人の採用が困難な分野において、即戦力となる外国人材を受け入れ、事業を継続可能にするための仕組みです。


「コスト削減のために外国人を雇う」という発想でスタートすると、処遇・育成・定着への投資を削り、結果的に離職・再募集・トラブル対応に追われ、長期的には日本人を雇うよりも高コストになります。



失敗の本質は"外国人だから"ではなく、採用設計のズレ


採用が失敗する企業に共通するのは、「外国人材をどう活かすか」という戦略がないまま、「とりあえず人手が欲しい」という目的で採用を進めてしまうことです。

採用目的が不明確だと、以下のような問題が連鎖します。


  • 業務の切り出しが曖昧で、「何を任せるか」が定まらない

  • 育成プランがなく、現場が「どう教えればいいか」わからない

  • 評価基準が不明で、本人が「何を目指せばいいか」理解できない

  • 処遇が不透明で、「頑張っても報われない」と感じる


結果、外国人材は「期待と現実のギャップ」を感じて離職し、会社側は「外国人は定着しない」という誤った結論に至ります。しかし本質的な問題は、受け入れる側の設計不足にあります。


2.よくある誤解|「外国人労働者は安い」は本当か?


よくある誤解|「外国人労働者は安い」は本当か?

法律上は"同等以上"が原則(最低賃金・同一労働同一賃金)


まず法律面から整理します。特定技能外国人材の賃金については、「日本人と同等以上」が法的に義務付けられています。

法律・原則

内容

ポイント

最低賃金法

国籍に関係なく、地域ごとの最低賃金以上を支払う義務がある

外国人でも最低賃金未満は違法

同一労働同一賃金の原則

同じ業務内容であれば、日本人と同水準の賃金を支払う必要がある

国籍による不当な賃金差は不可

入管法の審査基準

特定技能の在留資格申請時に、給与水準の妥当性が審査される

不当に低い給与では許可されない

平均賃金が低く見える理由(在留資格・職種偏在・構造要因)


しかし統計データを見ると、外国人労働者の平均賃金が日本人より低い傾向が確認されます。これは「外国人だから安い」のではなく、以下の構造的要因によるものです。

観点

内容

ポイント

在留資格の違い

技能実習生(単純労働中心)、特定技能(即戦力)、専門職(エンジニア等)で賃金水準が大きく異なる

資格の専門性が高いほど賃金も高くなる傾向

職種の偏在

外国人材は製造業・サービス業・建設業など、比較的賃金が低めの業種に集中しやすい

業種構造が平均賃金に影響

経験年数・日本語能力

来日直後は経験不足や日本語力の制限により、初任給が低めになりやすい

定着・成長に伴い賃金上昇が期待される

特定技能制度では、即戦力として評価される技能を持つ人材が対象です。適正な賃金で処遇し、長期的に育成・定着させることで、企業側も持続的な成果を得られます。


3.失敗する理由①|採用目的がズレると、現場が崩れる


失敗する理由①|採用目的がズレると、現場が崩れる

「穴埋め要員」目的だと、育成・指導が後回しになる


「とにかく人手が足りない。誰でもいいから欲しい」という発想で採用すると、外国人材を「即戦力の穴埋め要員」として扱ってしまいます。


その結果、以下のような問題が起こります。


  • 業務の引き継ぎが「見て覚えて」で終わり、体系的な教育がない

  • 安全教育や品質基準の説明が不十分で、ミスやトラブルが頻発

  • 現場が「教える時間がない」と感じ、指導が後回しになる




業務の切り出しが曖昧で、ミス→注意→不信→離職の連鎖


業務内容が明確でないと、「どこまで自分でやっていいのか」「何を確認すべきか」がわからず、ミスが起きやすくなります。ミスが起きると注意され、外国人材は「理不尽だ」と感じ、現場は「使えない」と判断し、不信感が蓄積して離職に至ります。


特に以下のような場面で問題が顕在化します。

課題

内容

影響・リスク

安全教育の不足

危険作業の手順説明が不十分

労働災害・事故リスクの増大

指示の曖昧さ

「適当に」「いい感じで」など抽象的な表現

作業ミスや品質低下につながる

責任の押し付け

ミスの原因を本人だけに求め、仕組み改善を行わない

再発防止ができず、職場の不信感が高まる


4.失敗する理由②|"安価な労働力扱い"は、定着率を最速で下げる


失敗する理由②|"安価な労働力扱い"は、定着率を最速で下げる

処遇不満は「失踪・転職・紹介会社への不信」に直結


「最低賃金ギリギリで雇えばコストが抑えられる」と考える企業がありますが、これは最も危険な発想です。


処遇への不満は、以下のような行動につながります。

事象

内容

影響

失踪

技能実習制度で問題となった失踪は、処遇への不満が主要因

制度への信頼低下、企業の受入れリスク増大

転職

特定技能は転職可能なため、より条件の良い企業へ流出する

人材定着が難しく、採用コストが増加

紹介会社への不信

「こんな会社を紹介された」と紹介元の評価も悪化

紹介会社の信用低下、今後の人材確保に影響

特定技能は転職可能=「市場原理」が働く(条件が悪い職場から出ていく)


特定技能制度の大きな特徴は、転職が認められていることです。つまり、外国人材は「より良い条件の会社」へ移ることができます。


これは、市場原理が働くということを意味します。処遇が悪い、教育がない、職場環境が劣悪、という企業からは人材が流出し、逆に、適正な処遇・充実した教育・良好な職場環境を提供する企業には人材が集まります。



5.失敗する理由③|コミュニケーション設計がないと、トラブルコストが膨らむ


失敗する理由③|コミュニケーション設計がないと、トラブルコストが膨らむ

言語の問題は"能力"ではなく"伝え方の設計"の問題


「日本語が通じない」という課題は、外国人材の能力不足ではなく、会社側の伝え方設計の不足です。

コミュニケーション設計とは、以下のような取り組みを指します。

施策

内容

目的・効果

やさしい日本語

短い文・簡単な単語・具体的な表現を使う

誤解を減らし、理解度を高める

図解・写真

言葉だけでなく視覚的に情報を伝える

言語の壁を補い、作業理解を促進

復唱確認

「理解しましたか?」だけでなく、やり方を説明してもらう

本当に理解できているかを確認できる

マニュアル整備

多言語やピクトグラムを活用した手順書を用意

安定した作業品質と教育効率の向上

これらを整備せず、「普通に話せばわかるはず」という前提で進めると、指示ミス・作業ミス・事故リスクが高まり、結果的にトラブル対応コストが膨らみます。



文化差は「配慮」より先に「明文化」で解消できる


文化や習慣の違いは避けられませんが、ルールを明文化することで、大半の摩擦は防げます。


明文化すべき項目の例:

項目

内容

明確化するポイント

休暇申請

申請期限、申請先、緊急時の連絡方法を定める

手続きの迷いを防ぎ、トラブルを回避

遅刻・欠勤

連絡タイミング、許容理由、ペナルティ有無を明示

公平な運用と規律維持

報連相のルール

誰に・いつ・どのように報告するかを定義

情報共有の漏れ防止、業務効率向上

評価基準

合格ラインや昇給条件を具体化

目標の明確化とモチベーション向上

「暗黙の了解」や「常識」に頼らず、すべてを言語化・可視化することで、トラブルを未然に防ぎます。


6.失敗する理由④|受け入れ体制の未整備が、ハラスメント・職場不和を生む


失敗する理由④|受け入れ体制の未整備が、ハラスメント・職場不和を生む

現場任せにすると、属人化・感情論・不公平が起きやすい


受け入れ体制が整備されていないと、外国人材への対応が特定の担当者の「善意」頼みになります。すると、以下の問題が起こります。

課題

内容

影響

属人化

「〇〇さんがいないと回らない」状態になり、その人が休むと機能停止

業務継続性の低下、リスク増大

感情論

担当者の気分や相性で対応が変わり、不公平感が生まれる

職場の信頼低下、トラブル発生

過度な負担

担当者が疲弊し、本来業務に支障をきたす

生産性低下、離職リスクの上昇

相談窓口/メンター/定期面談がない職場は"火種が可視化されない"


外国人材が抱える不安や不満は、相談できる仕組みがないと表面化しません。そして、限界を超えた瞬間に突然退職届を出す、というケースが多発します。


火種を早期に発見し、対処するために必要な仕組み:

施策

内容

目的・効果

相談窓口

誰に・どのように相談できるかを明示

不安やトラブルの早期解消、安心感の向上

メンター制度

担当者を明確にし、定期的なフォローを実施

定着支援、信頼関係の構築

定期面談

月1回程度、困りごとや希望をヒアリング

状況把握と継続的な改善につながる

これらがないと、問題が水面下で悪化し、気づいた時には手遅れ、という事態になります。



7.失敗する理由⑤|"短期の安さ"が、結局いちばん高くつく(高コスト化の構造)


失敗する理由⑤|"短期の安さ"が、結局いちばん高くつく(高コスト化の構造)

採用コストが繰り返し発生する(離職→再募集→再教育)


「安く雇う」ことを優先した結果、定着せずに離職が繰り返されると、採用コストが何度も発生します。


1人あたりの採用コスト(例):

費用項目

目安金額

内容

紹介会社への手数料

30万円〜50万円

人材紹介・マッチングにかかる費用

渡航費・住居準備費

10万円〜30万円

来日渡航費や住居契約・初期準備費用

受け入れ手続き(行政書士等)

10万円〜20万円

在留資格申請や各種手続きの代行費用

教育工数(現場の時間コスト)

50万円〜100万円相当

研修・OJTなど現場教育にかかる人件費換算コスト

これが3人離職すれば、300万円〜600万円が無駄になります。


事故・労基・在留資格ミスは、損失が一気に跳ねる


安全教育や労務管理が不十分だと、以下のリスクが顕在化します。

リスク・事象

内容

企業への影響

労災事故

治療費、休業補償、生産停止、企業イメージの悪化が発生

金銭的損失と社会的信用の低下

労働基準監督署の是正勧告

罰金や過去の未払い賃金の支払い義務が生じる

法的リスクの顕在化とコスト増大

在留資格の不許可・取消

受け入れ停止や新規採用ができなくなる

人材確保の停止、事業継続への影響

これらは一度発生すると、損失が数百万〜数千万円規模に膨らむケースもあります。


評判リスク(採用市場で選ばれなくなる/紹介経路が細る)


外国人材のコミュニティでは、「どの会社が良いか・悪いか」の情報が共有されます。処遇が悪い、教育がない、トラブルが多い、という評判が広まると、以下の問題が起こります。

事象

内容

企業への影響

応募が来なくなる

求人を出しても応募者が集まらない

人材不足が深刻化し、採用活動が停滞

紹介会社が紹介しなくなる

「紹介したくない会社」と敬遠される

外部からの人材確保ルートが断たれる

既存スタッフの離職加速

日本人スタッフも将来性に不安を感じ退職

組織力低下と業務継続リスクの増大

8.経営者の視点転換|特定技能を"人件費"でなく"投資"として設計する


経営者の視点転換|特定技能を"人件費"でなく"投資"として設計する

最低限必要な3点セット:①公平な処遇 ②業務設計 ③定着設計


特定技能外国人材を「投資」として捉えるなら、以下の3点セットは必須です。




「育成」と「評価」を最初に言語化する(昇給・役割・期待値)


外国人材が「この会社で頑張ろう」と思うためには、将来の見通しが必要です。


明確にすべき項目:

項目

内容

明確化するポイント

昇給の条件

どのスキルを習得すれば、いくら昇給するかを示す

成長目標が明確になり、意欲向上につながる

役割の変化

1年後・3年後に任される業務内容を示す

将来像の可視化と定着促進

期待値

会社が何を期待し、何を評価するかを明確化

行動指針が分かり、評価の納得感が高まる

これらを採用段階・入社時・定期面談で繰り返し伝えることで、本人のモチベーションと定着率が大きく向上します。


成功企業は"外部パートナー"を使い分けている


すべてを自社で抱え込む必要はありません。成功している企業は、外部の専門家を活用しています

関係機関

主な役割

活用メリット

登録支援機関

在留資格更新手続き、定期面談、生活支援を実施

受け入れ企業の負担軽減と安定就労の支援

行政書士・社労士

法的手続きや労務管理に関するアドバイス

法令遵守の強化とリスク回避

日本語教育機関

業務に必要な日本語研修を提供

業務理解向上とコミュニケーション改善

紹介会社

採用後フォローやトラブル時の仲介

定着支援と問題解決の円滑化


9.今すぐできるアクション|失敗を防ぐチェックリスト


今すぐできるアクション|失敗を防ぐチェックリスト

採用前チェック(目的/業務範囲/必要日本語/賃金設計/支援体制)



受け入れ初月チェック(オリエンテーション/生活支援/相談窓口/現場教育)



定着チェック(定期面談/評価面談/改善ループ/社内理解)



10.まとめ|"安く使う"から"共に成果を出す"へ。ここで差がつく


まとめ|"安く使う"から"共に成果を出す"へ。ここで差がつく

特定技能外国人材を「安く雇える労働力」と捉える企業は、短期的なコスト削減を狙っても、長期的には高コスト化し、採用難・定着不良・現場疲弊という悪循環に陥ります。


一方、外国人材を「投資対象」として捉え、適正な処遇・体系的な教育・充実した支援を提供する企業は、定着率が高く、生産性が向上し、結果的に低コスト・高パフォーマンスを実現しています。



特定技能は「安さ」ではなく、「継続的に成果を出す仕組み」で決まります。

価値観を変えた企業ほど、採用難の時代に強い。いま、その視点転換が求められています。






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