林業は、人手不足と高齢化という深刻な問題を長年に渡り抱えています。木材需要が拡大するなかで、それに携わる人材が足りないと懸念され続けています。その問題を解決するために、2024年3月より、特定技能分野に「林業」が追加されました。
本記事では特定技能「林業」の詳細について解説していきます。
目次:
1.特定技能「林業」
特定技能「林業」は2024年、新たに追加された分野です。特定技能は、人手不足が深刻な特定産業に対し、人手不足解消を目的とした在留資格です。
1-1.特定技能とは
在留資格の一つである特定技能は、2019年4月より受け入れが可能になった制度です。目的として、人材確保が困難とされる分野を対象に、専門性や技術・知識を持った外国人を受け入れるために創設されました。
特定技能は1号と2号がありますが、現状「林業分野」では特定技能1号での受け入れが認められています。
元々は、12分野でしたが林業とはじめとする4分野が追加となり、現在では16分野まで拡大されています。
①介護
②ビルクリーニング
③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
↓2024年より拡大された分野
⑬自動車運送業
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
林業は新たに追加された分野となっていますが、以前から人手不足が課題とされていました。林業が特定技能に加わった背景は次の通りです。
1-2.特定技能に「林業」が加わった背景
特定技能は、人手不足解消を目的として外国人就労者を受け入れる制度です。林業が加わった背景として、長年の人手不足の解消を求めてということになるでしょう。
林野庁による、林業労働力の動向を見てみると林業の従業者は徐々に減少傾向であることがわかります。
昭和55年には14万人いた従業者数が、令和2年では4万人まで減っているのです。従業者が減ってしまった理由として以下が挙げられます。
・高齢化が進んでいる
林業は、以前から高齢化が課題とされています。下記の図の通り、全産業の高齢化率に対して、林業の高齢化率の方が高いことが見受けられます。
従業員の高齢化が進むと、年々やむを得ずリタイアする人が増えていき、最終的には人手不足に繋がってしまいます。
・若手人材の確保ができない
若手人材は、以前に比べると林業では多少は増加したものの、全産業と比較するとまだまだ少ないです。
理由として考えられるのは、どの産業でも挙げられますが体力的な問題や、人間関係、給与といったところでしょう。
・新規雇用のハードル
新たに入職する人が少ないのも、人手不足の原因として挙げられます。やはり林業は危険作業が多いというイメージや、肉体労働で体力的にキツそうといった印象を持つやすいです。
そのため、労働災害といった事故の面を考えると、足踏みしてしまう人も少なくありません。
・現従業員への負担
高齢化が進み、リタイアする人が増えてしまうと、一人一人への負担が多くなるのは目に見えています。
負担が多くなることによって、リタイアする年齢を早めようと考えてしまう人も多いでしょう。
これらの問題は、一つ一つだけではなくすべて繋がっておりスパイラル状態になっています。
1-3.林業分野が人手不足解消のために行なっている施策
林業に特定技能制度が加わった背景として、上記の内容が挙げられました。
もちろん、林業全体としてさまざまな取り組みを行なっています。
人材が定着しづらいのは、実際に働く前と働いてみてからのギャップがあるからと考え、林業未経験者向けの説明会や相談会を定期的に行い、どのような仕事でどういった内容のことをどのくらいの時間行うのか、アナウンスしています。
また、林野庁で「スマート林業」を現在は推進しています。ロボットやAIといった技術を活用することで、効率化や自動化を図った取り組みです。
ドローンを活用し、森林調査や苗木運搬、レーザー測定やラジコン式下刈り機械の導入により、個人への負担を軽減するだけではなく、危険作業の現象にも繋がっていきます。
大変で危険な作業が多いといったイメージを払拭できるような取り組みがなされています。
これらの取り組みに加えて、特定技能外国人を受け入れることでさらに林業分野の人手不足の解消を目指しています。
以前からある技能実習制度では、最長3年となっていました。そのため、技能実習生の数もそれほど多くありません。
しかし、今後は特定技能となり、最長で5年の在留資格となります。また、特定技能1号だけではなく2号も認められれば最終的には在留資格の更新上限がなくなるため、永続的に働くことも可能です。
これは、林業にとって人手不足解消の大きな一手となるでしょう。
2.特定技能「林業」で従事できる業務内容
特定技能「林業」を有する外国人労働者が従事できる業務内容として、
・育林、素材生産等の作業
・林内における林産物の製造加工、冬季の除雪作業に付随的に従事することは可能
とされています。
植栽作業や下刈り作業、伐倒作業などの業務で活躍できるでしょう。
これらの業務に従事してもらうことにより、林業分野では深刻な人手不足が徐々に解消されていくとともに、効率化だけではなくさらにイメージ向上にもつながると考えられます。
現状では、特定技能1号のみとなっているため、さらに高度な業務内容の従事はできません。しかし、今後特定技能2号が認められれば、熟練者が行えるような業務内容に従事してもらうことも可能です。
3.特定技能「林業」で雇用するために企業側が必要な準備
特定技能外国人を雇用するために、企業側に必要な要件がいくつかあります。これは他分野においても同様で、一定の要件や協議会への参加が求められるのです。
林業分野で必要な要件は以下になります。
・「林業特定技能協議会」への所属
・林業特定技能協議会が調った措置を講じる
・「林業特定技能協議会」に対し必要な協力を行う
・農林水産省が行う調査または指導に対し、必要な協力を行う
・登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合は、農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託する
また、これらの他に、入管法や労働基準法といった関係法令を遵守した上で適切に受け入れるよう呼び掛けられています。
4.特定技能外国人の受け入れ手順
特定技能外国人を受け入れるために必要な要件のほかに、実際に受け入れるために必要な書類や手続きがいくつかあります。
受け入れの流れば、国内で転職するケースと海外から呼び寄せるケースで若干異なります。
4-1.国内で転職する場合の流れ
step1.人材の募集と面接
日本人と同様に、募集や面接を行います。
step2.雇用契約の締結
採用が決まり次第、雇用契約の締結を行います。特定技能外国人を雇い入れる場合は「特定技能雇用契約書」を使用します。
step3.特定技能支援計画書の作成
特定技能支援計画書は、在留資格申請に必要な書類です。雇用計画締結後に作成し、準備しておくとスムーズです。
内容としては、特定技能外国人が安定して働くことができるように、企業側が行う具体的な支援について記載した書類になります。
step4.在留資格変更申請
出入国管理局へ在週資格の申請手続きを行います。在留資格の変更が完了すれば、就業を開始できます。
※在留資格変更申請に伴う書類は、多岐に渡り準備に手間取る可能性があります。書類は出入国在留管理庁のホームページよりダウンロードが可能となっています。
4-2.海外から呼び寄せる場合
step1〜steo3までは、国内で転職する場合と同様です。
step1.人材の募集と面接
日本人と同様に、募集や面接を行います。
step2.雇用契約の締結
採用が決まり次第、雇用契約の締結を行います。特定技能外国人を雇い入れる場合は「特定技能雇用契約書」を使用します。
step3.特定技能支援計画書の作成
特定技能支援計画書は、在留資格申請に必要な書類です。雇用計画締結後に作成し、準備しておくとスムーズです。
内容としては、特定技能外国人が安定して働くことができるように、企業側が行う具体的な支援について記載した書類になります。
↓以降は、国内から転職する場合と異なります。
step4.在留資格認定申請
最寄の出入国管理局へ在留資格の申請を行います。
書類については、出入国在留管理庁のホームページよりダウンロード可能となっています。
step5.ビザ申請
step4で申請が通ったら、在留資格認定証明書が交付されます。
交付された書類を特定技能外国人本人へ郵送し、届いたら、パスポートと合わせて、在外日本国大使館へ行きビザ申請を行ないます。
ビザが交付されたら日本へ入国し、就労という流れになります。
5.特定技能「林業」で在留資格取得に必要な試験
特定技能「林業」の在留資格を取得するためには、1号特定技能評価試験の合格と、一定の日本語能力が必要となっています。
5-1.林業分野特定技能評価試験の概要
林業分野において、「林業技能測定試験」を行います。
【技能水準】
①育林、素材生産、安全衛生等について基本的な知識を有しており、
また、各種作業について、安全の確保を図りつつ、一定時間内に正しい手順で確実
にできるレベルであること
②日本語で指示された作業の内容等を聴き取り、理解できることを認定するものであり、この試験の合格者は、一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼働するために必要な知識や経験を有するものと認める
【評価方法】
試験言語:日本語(ひらがな、カタカナまたはふりがなを付した漢字)
実施主体:農林水産省が選定した機関
実施方法:学科試験(CBT方式またはペーパーテスト方式)および実技試験
これらのほかに、日本語能力を測るものとして、国際交流基金日本語基礎テストもしくは、日本語能力試験(N4以上)の合格が必要になります。
5-2特定技能1号の在留資格内容
特定技能1号で認められている在留期間やその他条件は以下の通りです。
・在留期間:通算5年まで、1年・6ヶ月・4ヶ月ごとの更新
・永住権:取得できない
・技能水準:相当程度の知識若しくは経験を必要とする
・外国人支援:必須
・家族の帯同:不可
・日本語能力水準試験:有り
林業分野が特定技能2号も認められれば、さらに長い期間在留することができるため、長期的に林業に携わってくれる外国人労働者も増える見込みです。
しかし、現状では特定技能2号までは認められておらず、令和10年度末までの5年間を受け入れの上限として運用されます。
今後については、実際に受け入れ企業が増えてきて施策がどのようになったかによって変更されるでしょう。
6.特定技能外国人の雇用で人手不足を解消しより良い企業を目指して
特定技能外国人を受け入れるのは、書類や手続き上難しい部分も少なくありません。
しかし、受け入れることで林業分野の人手不足解消だけではなく産業としての発展ができる可能性があります。
林業分野では、2024年3月から新たに拡大された分野であるため、なかなか難しいと感じる企業も多いでしょう。しかしながら、人手不足の一手になるであろう人材を確保することで、深刻な人手不足のスパイラルから抜け出せる可能性を秘めています。
特定技能に関する情報や外国籍の人材を受け入れたいけどどのようにしたら良いのかわからない場合は、ぜひご相談ください。
参考・引用
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