外国人採用に積極的な企業は何が違うのか?人材不足時代の"採用競争力"
- sou takahashi
- 5月15日
- 読了時間: 14分

「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用しても1年以内に辞めてしまう」──こうした悩みを抱える企業がある一方で、外国人材の採用・定着に一貫して成果を上げている会社も存在します。その差は、予算でも規模でもありません。採用に対する「設計の質」と「経営の本気度」にあります。
本記事では、外国人採用の成功企業が実践している共通の"型"と、人材不足時代に"選ばれる会社"になるための考え方を解説します。
📋 目次
1.人材不足時代の変化:採用市場はすでに"存在感"の戦いへ
日本の労働市場は、構造的な転換点を迎えています。少子高齢化による生産年齢人口の減少は、もはや「将来の課題」ではなく「現在進行形の経営問題」です。厚生労働省のデータによると、2024年の外国人労働者数は過去最高を更新し続けており、多くの業界で外国人材は「代替手段」ではなく「不可欠な戦力」として位置づけられ始めています。

重要なのは、外国人材の「選択肢の広がり」です。かつて日本は多くの外国人材にとって「魅力的な就業先」の筆頭でした。しかし賃金水準の相対的な低下・円安の影響・近隣アジア諸国の経済成長により、優秀な外国人材は複数の国・企業を比較した上で就業先を選ぶようになっています。
採用市場はすでに、「誰を採るか」ではなく「誰に選ばれるか」という次元の競争に移行しています。この変化は中小企業にも無縁ではありません。大企業と同じ土俵で採用競争をしなければならない時代に、「自社の強み・文化・働き方」を外国人材に向けて明確に発信できるかどうかが、採用競争力の分岐点になります。
経営者自身がこの変化を正確に認識し、採用を経営課題の中心に置くことが、今後の人材確保の前提条件です。

2.「採用できる会社」と「採用できない会社」の決定的な差

外国人材採用において成果を出している企業とそうでない企業の間には、予算・規模・業界の差よりも「採用に対する設計の差」が如実に現れます。以下の比較表で、その違いを具体的に確認してみましょう。自社はどちらに近いか、正直に照らし合わせてみてください。

この差を生む最大の要因は「仕組みがあるかどうか」です。成功企業は採用・オンボーディング・定着・キャリア開発の各フェーズに意図的な設計を施しています。一方、採用に苦戦する企業は「現場の努力」に依存しており、担当者が変わると途端に機能しなくなります。
仕組みを整備する上で重要なのは「完璧を目指して先延ばしにしない」ことです。最初から全項目を整える必要はありません。比較表の左側(採用できる会社)の項目を1つずつ確認し、「できていること」と「できていないこと」を可視化するだけでも、改善の優先順位が明確になります。
特に「ビザサポートの有無」と「キャリアパスの明示」は、外国人材の求職活動において最初に確認される項目であるため、早急な整備が効果的です。社内に担当者を置くことが難しい場合は、外部の専門機関との連携から始めることも有効な選択肢です。

3.外国人採用に成功している企業の5つの共通点
メルカリ・楽天・ファーストリテイリングといった外国人採用のリーディングカンパニーから、地方の中小製造業・飲食チェーンまで、成功企業の事例を横断して分析すると、5つの共通点が浮かび上がります。これらは「大手企業だからできること」ではなく、規模を問わず再現可能な「採用設計の原則」です。自社に当てはめながら読み進めてください。
1経営層がダイバーシティを「本気のコミット」として発信している
外国人採用に成功している企業で最も顕著なのは、経営トップの姿勢が明確な点です。「ダイバーシティは大事」という建前ではなく、採用目標・管理職比率・社内公用語などの具体的な数値目標を経営計画に組み込んでいます。ファーストリテイリングの管理職外国籍比率55.5%は、経営の本気度の結果です。
ポイント:経営層の本気のメッセージは、採用候補者・現場社員・社外パートナーすべてに伝わります。
2「採用→オンボーディング→定着」の一気通貫した仕組みがある
採用して終わりではなく、入社後90日・半年・1年の節目でのフォロー体制を設計しています。バディ制度(専任の相談相手を1人つける)・入社直後の生活支援(住居・銀行口座・行政手続き)・日本語学習の補助など、「外国人が日本で生活・就労する上での不安」を先回りして解消する体制を構築しています。具体的には「入社1週間以内に銀行口座を開設できるよう同行サポートする」「社会保険・年金の手続きを人事担当者が一緒に行う」「居住する市区町村の生活情報をまとめたガイドブックを配布する」といった細かな支援が、外国人材の「この会社は本気で自分を受け入れてくれている」という安心感につながります。
定着のボトルネックは多くの場合「仕事の不満」ではなく「生活の不安」です。
3明確なキャリアパスとジョブディスクリプションを提示している
日本の「メンバーシップ型雇用」(仕事の幅が曖昧・評価基準が不透明)は、海外でのジョブ型雇用に慣れた外国人材にとって最大の不満要因のひとつです。成功企業は職種別採用・ジョブディスクリプション(職務記述書)の整備・昇進基準の明文化によって、「何をすれば評価されるか」を可視化しています。
総務省調査:「キャリアパスが不明確」は外国人労働者の不満トップ(27.6%)
4言語・コミュニケーションの壁を「仕組み」で取り除いている
「日本語が完璧でないと採用できない」という発想を脱却し、社内のコミュニケーションを多言語対応・やさしい日本語に変えている会社が成功しています。楽天の英語公用語化・メルカリのGlobal Operations Team(社内翻訳専門チーム)は大企業の事例ですが、中小企業でも「作業手順書の多言語化」「翻訳アプリの業務活用」から始められます。
「外国人が日本語を覚えてくれればいい」ではなく「組織が歩み寄る」姿勢が定着率に直結します。
5外国人材を「将来のリーダー候補」として位置づけている
「とりあえず人手が足りないから」という消極的な採用から、「5年後・10年後の組織を担う人材として迎える」という積極的な採用への転換が見られます。技能実習生を正社員登用する仕組み・外国籍の管理職登用・海外拠点との橋渡し役としてのキャリア設計など、長期的な視野で外国人材を組織の中核に据える発想が共通しています。
短期的な人手補填では外国人材の優秀層は集まりません。長期目線の設計が「選ばれる会社」の条件です。
4.業種別・外国人採用の成功パターン5選

外国人材の採用戦略は業種によって異なります。以下では、成果を上げている企業の具体的なアプローチを業種別に紹介します。自社の業種に近いパターンを参考にしてください。
🍽️ 飲食業:多国籍チームがそのまま強みになる
飲食業では、外国人スタッフの出身国の料理・文化を商品・サービスに活かす「強みの転換」が成功のポイントです。ワタミ株式会社をはじめ複数の外食チェーンでは、特定技能ビザを活用した人材採用と並行して、多言語対応のPOSシステム導入・外国語でのスタッフ研修・インバウンド対応力の向上を一体的に進めています。「外国人を雇う」ことが「多言語で接客できる」というサービス価値に直結するため、採用が差別化要因になります。外国人スタッフが「自分の文化を活かして働けている」と感じる環境では定着率も高く、インバウンド需要が増える中でこの傾向は今後さらに強まると予想されます。
🔧 製造業:技能実習から正社員登用へのロードマップ
製造業では技能実習・特定技能制度を入口として、優秀な人材を正社員登用する仕組みを設計した企業が成果を上げています。カシオ計算機・日本特殊陶業などの事例では、バディ制度(1対1の担当者制度)・評価基準の可視化・日本語能力試験(JLPT)の受験支援を組み合わせることで定着率を大幅に改善しています。技能実習生を「将来のリーダー候補」として処遇することで、優秀層が自社を選び続ける環境を作ることが可能です。
💻 IT・テック:海外大学からの直接採用でイノベーションを加速
デンソー・メルカリなどのテック系企業は、インド工科大学(IIT)・東南アジアの理工系大学から直接採用する「越境採用」を実践しています。特に高度専門職ビザ・特定高度専門職ビザを活用した高スキル人材の獲得は、日本人エンジニア採用が困難になる中で企業のDX推進・グローバル競争力維持に直結します。英語での業務遂行環境の整備が前提条件となりますが、一度仕組みを作ると採用ブランドが口コミで広がりやすい傾向があります。
🏨 宿泊・観光業:多言語対応が顧客価値に直結する
インバウンド需要が拡大する中、宿泊業での外国人スタッフ採用は「人手補充」から「サービス品質向上」へと意味が変化しています。株式会社ティーケーピーのように、インド・ネパールから42名を一斉採用した事例では、採用前の文化研修・日本文化への理解促進プログラムを徹底することで「外国人採用=サービス品質低下」という懸念を払拭しています。海外ゲストの口コミ評価の向上・多言語対応力の強化が直接的な収益貢献につながります。
🏥 介護・福祉:長期定着を前提とした受け入れ設計
介護業界では構造的な人手不足が深刻で、EPA(経済連携協定)・特定技能・技能実習の複数ルートを組み合わせた外国人材採用が主流です。ベネッセスタイルケア・社会福祉法人聖風会などの成功事例に共通するのは「長期定着を前提とした受け入れ設計」です。住居支援・日本語学習支援・介護福祉士国家試験への受験サポートを一体的に提供することで、5年・10年単位で活躍できる外国人介護士を育成しています。

5."選ばれる会社"とは何か:外国人材が見ている条件
外国人材が就業先を選ぶ際、何を重視しているのでしょうか。複数の調査データと採用支援の現場知見をもとに、「選ばれる会社」の条件を整理します。経営者・人事担当者が自社を振り返るチェックリストとしてご活用ください。7つの条件のうち、いくつ「できている」と自信を持って言えるかが、貴社の採用競争力の現在地を示しています。
✓求人情報が外国人にとって「わかりやすい」
やさしい日本語・英語対応・具体的な業務内容・給与・待遇が明記されている。業界用語・暗黙のルールが排除されている。
✓ビザ・在留資格のサポートが充実している
ビザ申請の手続きサポート・在留期間の管理・更新のフォローが会社の責任で行われる。「自分でやってください」という対応でないこと。
✓入社後の生活サポートが明確
住居の手配・銀行口座開設の補助・市区町村への転入届など、日本での生活立ち上げを支援する仕組みがある。
✓キャリアアップの道筋が見える
入社○年後にどんな役割を担えるか・昇進の基準は何かが明文化されている。努力が報われる評価制度がある。
✓多様な文化・背景に対する組織の寛容度が高い
宗教上の食事制限・礼拝時間への配慮・母国の文化的な祝日への理解など、「違い」を受け入れる組織風土がある。
✓既存の外国人社員が活躍・定着している実績がある
採用候補者は現在の外国人社員の定着率・キャリア事例を重視します。「先輩が辞めていない会社」は採用競争力の源泉です。
✓会社の将来性・安定性が伝わる
外国人材、特に来日して数年以内の人材にとって「この会社が3年後も存在するか」は重要な判断軸です。経営情報の透明性・ビジョンの明確さが信頼につながります。
上記の条件を見ると「全部整えないといけないのか」と思うかもしれませんが、そうではありません。外国人材が最も重視するのは「この会社は自分のことを考えてくれているか」という誠実さです。
100点満点の仕組みがなくても、採用担当者が親身に対応してくれる・聞いたことに正直に答えてもらえる・会社の雰囲気が温かい、といった体験が選択の決め手になることも多くあります。まず今できることから着手し、採用しながら仕組みを改善していく姿勢が重要です。

6.今後の採用競争に備える3つのアクション

「自社は中小企業だから大手のような取り組みはできない」と感じる経営者も多いでしょう。しかし外国人材採用の競争は大手vs中小の構図ではありません。地方の中小企業でも、設計の質次第で優秀な外国人材に選ばれることは十分に可能です。規模よりも「誠実さと仕組みの有無」が勝負を決めます。今日からできる3つのアクションを紹介します。
1受け入れ体制の「可視化」から始める
まず自社の現状を「採用できる会社チェックリスト」で棚卸しする。どこが整っていてどこが欠けているかを明確にすることが最初のステップです。
2求人票・採用情報の「多言語化・やさしい日本語化」
まず自社の求人票を見直し、外国人が理解しやすい表現に書き換えます。難しい漢語・業界用語を減らすだけでも応募数が変わります。
3専門家・支援機関との連携を早期に構築する
在留資格・ビザ手続き・労務管理など、専門知識が必要な領域は支援機関や専門家と連携する体制を整えます。自社だけで抱え込まないことが継続の鍵です。
外国人材採用は「一度うまくいけば好循環が生まれる」分野です。定着した外国人社員が母国の優秀な知人を紹介してくれる・会社の評判が海外の求職者コミュニティに広がるといった「採用の自走サイクル」を一度作ることができれば、採用コストは大幅に下がります。
採用媒体に頼り続ける状態から脱却するためにも、まず体制を整えることに集中することが重要です。「最初の採用」を丁寧に設計することが、採用競争力構築の出発点です。

株式会社Glory of Bridgeでは、外国人材の採用から定着・キャリア支援まで一気通貫でサポートしています。「どこから始めればよいかわからない」という段階からでも、現状の課題ヒアリング・受け入れ体制の診断・採用戦略の立案をご支援します。まずはお気軽にお問い合わせください。
7.よくある質問(FAQ)
Q. 中小企業でも外国人材採用は現実的ですか?
はい、十分に現実的です。むしろ大企業より採用コストを抑えながら成果を出している中小企業は多くあります。大切なのは規模ではなく「受け入れ設計の質」です。在留資格のサポート・バディ制度・キャリアパスの明示といった仕組みは、小さな会社でも導入できます。専門の支援機関と連携することで、初めての採用でもスムーズに進めることが可能です。
Q. 外国人材が早期離職してしまう原因は何ですか?
調査データによると、早期離職の主な原因は「職場でのコミュニケーションの壁(43%)」「キャリアアップの見通しが不明確(27%)」「生活面での不安・孤立感(22%)」です。採用段階での期待値と入社後の実態のギャップも大きな要因です。オンボーディング(入社後フォロー)を90日間丁寧に行うだけで定着率が大幅に改善するケースが多くあります。
Q. 在留資格・ビザ手続きはどこに相談すればよいですか?
在留資格の申請は、行政書士・社会保険労務士・弁護士などの専門家に依頼するのが基本です。また、外国人雇用サービスセンター(全国4か所)や、厚生労働省の外国人雇用管理アドバイザー制度(無料相談)を活用することもできます。在留資格の種類(特定技能・技人国・高度専門職など)によって手続きが異なるため、採用前に専門家への相談を強くおすすめします。
Q. 外国人採用にかかるコストの目安はどれくらいですか?
採用にかかるコストは採用チャネルや在留資格によって異なります。求人媒体への掲載費・人材紹介手数料・ビザ申請代行費・入社後の生活支援費用などを合算すると、1名採用あたり50〜150万円程度が目安です。ただし、外国人材が定着することで生まれる「採用コストの長期分散効果」と「人材不足による機会損失の回避効果」を考えると、投資対効果は十分に高いといえます。
Q. 外国人材の採用で失敗しないために最初に確認すべきことは何ですか?
最も重要なのは「在留資格の適切な選択」と「受け入れ担当者の明確化」の2点です。在留資格の種類(特定技能・技人国・高度専門職・技能実習など)によって、業務内容の制限・在留期間・更新要件が大きく異なります。適切な在留資格を選ばずに採用した場合、法令違反となるリスクがあるため、必ず行政書士や社労士などの専門家に事前確認を行ってください。また、受け入れ担当者が不明確な状態で採用を進めると、入社後のフォローが機能せず早期離職につながりやすくなります。「採用した後に誰がサポートするか」を採用前に決めておくことが、成功企業に共通する最初のステップです。
8.この記事のまとめ

外国人材採用の競争は「誰を採るか」から「誰に選ばれるか」へすでに移行している。採用市場の本質的な変化を経営課題として正確に認識することが、すべての出発点
採用できる会社とできない会社の差は、予算・規模より「仕組みの有無」にある。採用→オンボーディング→定着→キャリアの一気通貫設計が必須。担当者に依存しない体制化が継続の鍵
成功企業の5つの共通点:①経営層のコミット、②一気通貫の仕組み、③キャリアパスの明示、④言語の壁を仕組みで解消、⑤長期視野での人材設計
業種別の成功パターンがある。飲食・製造・IT・宿泊・介護それぞれの文脈に合わせた外国人採用戦略を設計することが重要
"選ばれる会社"は求人票だけでなく平時の情報発信・既存外国人社員の定着実績・多文化への寛容度で判断される
今日からできるアクションは①現状の可視化、②求人情報のやさしい日本語化、③専門家・支援機関との連携構築の3つ
外国人採用は「最初の採用を丁寧に設計する」ことで採用の自走サイクルが生まれ、長期的には採用コストの削減と優秀人材の継続的な確保につながる。採用競争力の構築は、今すぐ着手すべき最優先の経営投資のひとつ




コメント