
日本の労働市場において、特定技能外国人の雇用は重要な役割を果たしています。特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野で一定の技能や知識を持つ外国人労働者を受け入れるための在留資格です。本記事では、特定技能外国人の給与相場、給与決定の基準、注意点について詳しく解説します。
目次
1. 特定技能外国人の給与相場
厚生労働省が発表した令和5年(2023年)のデータによれば、特定技能外国人の平均月額給与は198,000円で、前年から3.7%の減少が見られました。
これは、全体的な給与水準の低下を反映しています。また、特定技能外国人の平均年齢は28.9歳、平均勤続年数は2.4年と報告されています。
令和5年
在留資格区分 | 賃金(千円) | 対前年増減率(%) | 年齢(歳) | 勤続年数(年) |
232,6 | -6,4 | 33,0 | 3,2 | |
専門的・技術的分野(特定技能を除く) | 296,7 | -1,0 | 31,8 | 3,0 |
特定技能 | 198,0 | -3,7 | 28,9 | 2,4 |
身分に基づくもの | 264,8 | -5,7 | 44,7 | 5,7 |
技能実習 | 181,7 | 2,2 | 26,2 | 1,7 |
留学(資格外活動) | ー | ー | ー | ー |
その他(特定活動及び留学以外の資格外活動) | 231,3 | 4,7 | 30,8 | 2,5 |
2. 給与決定の基準
特定技能外国人の給与を設定する際には、以下の基準を遵守する必要があります。
日本人と同等以上の給与: 特定技能外国人には、同じ職種や経験を持つ日本人労働者と同等以上の給与を支払うことが求められます。これは、労働基準法第3条に基づき、国籍による差別的取り扱いを禁止する規定に沿ったものです。
最低賃金の遵守: 地域別最低賃金または特定最低賃金のうち、高い方以上の給与を支払う必要があります。地域別最低賃金は都道府県ごとに、特定最低賃金は産業ごとに定められています。
割増賃金の適用: 時間外労働、休日出勤、深夜労働に対しては、労働基準法に基づく割増賃金を支払う義務があります。具体的には、時間外労働には25%以上、法定休日労働には35%以上、深夜労働には25%以上の割増率が適用されます。
3. 給与決定時の注意点
就業規則の整備: 企業は、給与規定を明確に定め、特定技能外国人にも適用されるよう整備することが重要です。これにより、公平な給与決定が可能となります。
比較対象の明確化: 同等の職務や経験を持つ日本人労働者がいない場合、近隣の同業他社の給与水準を参考にすることが求められます。ハローワークや求人媒体の情報を活用し、適切な給与設定を行いましょう。
技能実習生からの移行時の配慮: 技能実習生から特定技能への移行者の場合、実習期間中の経験年数や技能レベルを考慮し、適切な給与設定を行う必要があります。例えば、技能実習2号を修了した者は3年の経験を持つため、同等の経験を持つ日本人労働者の給与と比較して設定します。

4. 最新の動向と企業の対応
近年、特定技能外国人の給与水準は全体的に低下傾向にありますが、これは労働市場全体の動向を反映しています。
企業は、特定技能外国人のモチベーション向上や長期的な雇用関係の構築のため、以下の点に留意することが重要です。
キャリアパスの提示: 昇給や昇進の機会を明確に示し、特定技能外国人のやる気を引き出すことが求められます。具体的な目標設定や評価基準を設けることで、労働者の成長を促進できます。
労働環境の改善: 労働時間の適正化や職場環境の整備を行い、働きやすい環境を提供することが重要です。これにより、特定技能外国人の定着率を向上させることができます。
コミュニケーションの強化: 定期的な面談や相談窓口の設置により、特定技能外国人の不安や悩みを早期に把握し、適切な対応を行うことが求められます。これにより、労働者との信頼関係を深めることができます。

5. 特定技能外国人の給与に関する法令違反のリスク
特定技能外国人の給与に関する法令を守らない場合、企業には深刻なリスクが生じます。以下に、具体的な影響とリスクを挙げます。
1. 法令違反による行政処分
在留資格の取り消し:給与が日本人と同等以上でない場合や、最低賃金を下回る場合、入国管理局から「受け入れ企業として不適格」と判断され、特定技能外国人の在留資格が取り消される可能性があります。
企業の受け入れ停止措置法令違反が認められると、特定技能外国人の新規受け入れが禁止されます。特に複数回違反を重ねた場合は、長期間にわたる受け入れ停止措置が科されることがあります。
2. 罰則・損害賠償請求の可能性
労働基準法違反の罰則最低賃金法や労働基準法に違反した場合、最大で30万円以下の罰金や懲役刑が科されることがあります。また、違反内容が悪質と判断された場合は、労働基準監督署から企業名の公表が行われる可能性もあります。
損害賠償請求不適切な給与設定により、特定技能外国人から損害賠償請求を受ける場合もあります。給与の差額や遅延損害金を請求されるケースもあり、企業の経済的負担が増大します。
3. 企業の評判低下
地域社会や取引先への影響法令違反が公にされると、地域社会や取引先からの信頼を失い、契約解除や取引停止に至ることがあります。これにより、事業運営そのものが困難になるケースも少なくありません。
採用活動への悪影響企業の評判が悪化すると、日本人・外国人を問わず優秀な人材の確保が難しくなります。特定技能外国人だけでなく、他の在留資格を持つ外国人労働者からも敬遠されるリスクがあります。
4. 外国人労働者への影響
労働意欲の低下不公平な待遇や給与の未払いが続くと、外国人労働者の労働意欲が低下し、生産性の低下や離職につながります。
国際的な批判特定技能外国人の待遇が不適切であることが外国メディアに報じられると、日本全体の労働環境に対する信頼が揺らぎ、国際的な批判を招く可能性もあります。
まとめ
企業が特定技能外国人の給与設定を適切に行うことは、労働者との信頼関係を築き、優秀な人材を確保するために欠かせない要素です。また、給与だけでなく、労働環境やキャリア支援の充実も、特定技能外国人が安心して働ける基盤を作るために重要です。
特定技能外国人の給与に関する法令を守らないことは、企業にとって法的リスクだけでなく、評判や事業運営の根幹に影響を及ぼします。
逆に、法令を遵守し、適切な給与設定と労働環境の提供を行うことで、企業は信頼を獲得し、優秀な人材の確保や事業の安定成長につながります。
労働法令や最低賃金の遵守、そして透明性のある給与制度を確立することは、外国人労働者を受け入れる企業としての最低限の責務です。
これを機に、自社の給与体系や雇用環境を見直し、国際的な競争力を高める企業づくりを目指していきましょう。
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