在留資格である特定技能は、人手不足の解消を目的とした制度です。人手不足とされている「特定産業」に対して、特定技能外国人の受け入れが認められています。
特定産業は現在16分野となっており、そのなかの一つに、工業製品製造業があります。工業製品製造業は、さらに10の区分に分かれています。
本記事では、工業製品製造業分野のRPF製造区分について解説していきます。
目次:
1.特定技能「工業製品製造分野」の概要
「工業製品製造分野」は16分野ある特定技能のなかの一つです。特定技能は人手不足が深刻化する特定産業に対して受け入れが可能な在留資格となっています。
この在留資格特定技能制度を活用し、深刻な人手不足を解消する企業も少なくありません。
1-1.工業製品製造分野の区分
工業製品製造分野はさらに業種・業務区分があります。全部で10から構成されており、従事できる業務内容が異なります。
・機械金属加工区分
・電気電子機器組み立て区分
・金属表面処理区分
・紙器・段ボール箱製造区分
・コンクリート製品製造区分
・RPF製造区分
・陶磁器製品製造区分
・印刷・製本区分
・紡織製品製造区分
・縫製区分
1-2.特定技能とは
在留資格のなかでも就労可能なビザである特定技能ですが、日本国内における深刻な人手不足を解消することを目的としています。人手不足と認められた分野は、特定産業分野とされ、特定技能を有する外国人を雇用することができます。
特定技能の分野は現在16分野あります。
①介護
②ビルクリーニング
③工業製品製造(旧 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
⑬自動車運送業
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
これらは、すべて深刻な人手不足問題を抱えています。
1-3.特定技能の在留期間と技能水準
特定技能には、技能水準によって2つに分けられます。特定技能1号と2号では、在留期間や待遇なども異なるのです。
【特定技能1号】
在留期間:4ヶ月、6ヶ月、1年ごとの更新 上限は通算5年
技能水準:相当程度の知識と経験を有する
日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を有する(試験で確認)
転職の可否:可能
家族の帯同:不可
支援計画:必須
【特定技能2号】
在留期間:6ヶ月、1年、3年ごとの更新 更新の上限なし
技能水準:熟練した技能を有する
日本語能力水準:試験での確認不要
転職の可否:可能
家族の帯同:可能
永住権の取得:可能
支援計画:不要
工業製品製造分野のRPF製造では、現在特定技能1号のみとなっています。特定技能1号では、企業側による支援計画が必須となっています。
支援計画については後述します。
2.工業製品製造分野 RPF製造区分とは
特定技能 工業製品製造分野 RPF製造区分の仕事内容は以下の通りとなっています。
【分野・区分の概要】
指導者の指示を理解し、または自らの判断により、破砕・成形等の作業に従事
【従事する主な業務】
RPF製造
【想定される関連業務】
当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる間rねんぎょうむに付随的に従事することは差し支えない。
関連業務に当たり得るものとして、次が想定される。
・原材料・部品の調達・搬送作業
・各職種の前後工程作業
・クレーン・フォークリフト等運転作業
・清掃・保守管理作業
※専ら関連業務に従事することは認められない。
参考・引用:出入国管理庁 特定技能1号の各分野の仕事内容
2-1.RPF製造区分の詳細
RPF製造区分で特定技能外国人が従事できる業務内容として、日本標準産業分類を参考に確認していきます。
日本標準産業分類において、RPF製造区分は「3299-他に分類されないその他の製造業(ただし、PRF製造業に限る。)」とされています。
該当事例として、
・押絵製造業
・靴中敷物製造業(革製を除く)
・つえ製造業
・幻灯スライド製造業
・懐炉製造業
・救命具製造業
・獣毛整理業(羊毛、羊毛類似の毛を除く)
・パールエッセンス製造業
・人体保護具製造業(ヘルメット、顔面保護具など)
・懐炉灰製造業
・鳥獣魚類はく製製造業
・たどん製造業
・真珠核製造業
・リノリウム・同製品製造業
・靴ふきマット製造業
・線香製造業
・葬具製造業
・繊維壁材製造業
・建築用吹付材製造業
・ルームユニット製造業
・種子帯製造業
・におい袋製造業
・はえ取紙製造業
・オガライト製造業
・オガタン製造業
不適合事例は以下が挙げられます。
・微粉炭製造業
・靴ひも製造業(革製)
・靴ひも製造業(繊維製)
・靴中敷物製造業(革製)
・毛皮製造業
・事務用のり製造業
・墨製造業
・朱肉製造業
・宝石箱製造業(貴金属製を除く)
・小物箱製造業(貴金属製を除く)
・人工芝製造業(合成樹脂製のもの)
では、固形燃料を製造している事業所に対し、RPF製造区分の該当について、対象の固形燃料をRPFに限っているため、RPFではない固形燃料の場合は該当しないと回答しています。
該当するかしないか、グレーゾーンと思われる場合は、事前に確認しておくと良いでしょう。
※RPF…「RPF」とは Refuse derived paper and plastics densified Fuel の略称であり、主に産業系廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙及び廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料です。
(一般社団法人 日本RPF工業会より引用)
3.工業製品製造分野 RPF製造区分 特定技能1号取得要件
特定技能工業製品製造分野 RPF区分で従事するために特定技能1号の取得が必要です。特定技能1号は「特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」に合格するか、技能実習2号を良好に修了するかのどちらかで取得が可能となっています。
3-1.工業製品製造分野RPF製造区分特定技能1号評価試験の概要
「工業製品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領では、技能水準及び評価方法について以下の通り記載されています。
【技能水準】
製造業分野における業務について、指導者の指示を理解し的確に業務を遂行または自らの判断により業務を遂行できるものであることを認定するものであり、この試験の合格者は一定の専門性・技能を用いて即戦力として稼動するために必要な知識や経験を有するものと認める。
【試験方法】
試験言語:日本語
実施主体:経済産業省が選定した期間
実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式またはペーパーテスト方式
上記の内容だけだと、技能水準がどの程度のものか分かりづらいのですが、工業製品製造分野では、技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能1号へ移行が可能となっています。
その点から、技能実習2号と同等の技能水準を有していれば問題ないと想定されます。
RPF製造区分の技能実習2号における必須業務は以下の通りとなっています。
①RPF製造作業
・受け入れ検査(目視、展開)
・原材料および不適合物の管理
・原料配合投入
・破砕作業
・成形作業
・最終検査(目視と表面温度計を使用した外観、温度の検査)
・日常点検(機械設備、車両機器、生産状況)
②安全衛生業務
・新規雇用時の安全衛生教育
・作業開始前の安全装置等の点検作業
・作業場内の整理整頓作業
・機械設備及び周辺の安全確認作業
・保護具の着用と服装の安全点検作業
・労働衛生上の有害性を防止するための作業
・安全装置の作動確認等の安全作業
・異常(火災等)時の応急措置を習得するための作業
・危険予知活動の教育
関連業務については以下になります。
①関連業務
・車両系建設機械、フォークリフトの運転作業(技能講習、特別教育等が必要)
・車両誘導・受け入れ荷下ろし作業
・受け入れ検査(ライン選別・機械選別)
・製品出荷・積み込み作業
・安全・防災設備管理
②周辺業務
・作業場内の清掃
・作業上周辺の清掃
③安全衛生業務
以上が、RPF製造職種の第2号技能実習で行われる業務となります。特定技能に移行できる技能水準が上記の内容と考えて良いでしょう。
3-2.日本語能力
求められる日本語水準は、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度を基本として、業務上必要な日本語能力」です。
試験は、
①国際交流基金 日本語基礎テストの合格
②日本語能力試験N4以上の取得
のいづれかで認められます。
ただし、製造業分野やそれ以外の職種・作業において、技能実習2号を良好に修了している場合は、日本語試験が免除されます。
4.企業側の受け入れ要件
特定技能外国人を受け入れるには、企業側も要件を満たしていなくてはなりません。
RPF製造区分において必要な要件は以下の通りです。
・JIS規格認証または300t/月以上の生産能力を有する
・安全管理者または安全衛生推進者の専任
・安全衛生委員会の設置
・日本RPF工業会が定める雛形に準じた安全衛生規程を制定
上記の他に、工業製品製造業分野のどの区分であっても満たしていなくてはならない要件があります。
・製造業特定技能外国人受け入れ協議・連絡会の構成員になること
協議会に加入し、協議が調った措置を講じること。
協議会が行う、一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の報告または現地調査等その他に対し必要な協力を行うこと。
特定技能外国人に対し、必要に応じて訓練・各種研修を実施すること。
特定技能外国人からの求めに対し、実務経験を証明する書面を交付すること。
・支援体制の義務を果たす
特定技能1号は、支援体制の義務が必須とされています。支援の内容は、特定技能外国人が、生活や業務に従事する上で不自由なく過ごせるために必要な支援になります。
具体的には、住居の確保や生活に必要な支援や、公的手続きの同行が挙げられます。
また、そのほかにも特定技能外国人の雇用形態は直接雇用であったり、同じ業務に従事する日本人と同等かそれ以上の給与であることが定められています。
5.RPF製造区分は技能実習生からの移行に期待
特定技能は、人手不足の産業に対して人員確保を目的としています。技能実習では、母国へ知識や技術を持ち帰ることが目的だったため、業務への従事というよりは知識や技術を教えることが主でした。
しかし、特定技能は業務に従事し即戦力として働ける人材としてカウントすることができます。
RPF製造区分は、技能実習生が特定技能に移行する可能性も高いため、多くの人材確保が期待できるでしょう。
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