特定技能は、現在16分野での受け入れが可能となっています。深刻な人手不足を解消するために、2019年に創設された在留資格です。
特定技能には1号と2号に分かれており、知識や技能水準の高さが異なります。
各分野の人手不足事情はさまざまですが、本記事では特定技能「工業製品製造業分野」の秖器・段ボール箱製造区分に焦点を当てて解説していきます。
目次:
1.特定技能「工業製品製造分野」
特定技能「工業製品製造分野」は以前まで「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」の名称となっていました。
現在では、工業製品製造分野としていくつかの業務区分に分けられ特定技能外国人が従事することが可能です。
工業製品製造業分野は、他の分野と比べて深刻な人手不足状況となっています。令和6年度以降の受入予定人数は173,300人です。
1-1.特定技能「工業製品製造分野」の人手不足の背景
製造業は以前より人手不足が問題視されていました。若者離れや離職率がその最たる原因と言えるでしょう。
特に34歳以下の若年就業者数は20年前と比べて大幅な減少が見受けられます。そのため製造業は高齢化が進み、定年退職していく人たちが増え、年々人手不足となってしまうのです。
また、人手不足の原因として、離職率も注目しなくてはなりません。現在働いている会社を辞めたい、転職を検討しているという人もいるでしょう。
離職したいと考える理由として、現職のままだとスキルアップが望めないため給与が上がらないという不安や、将来的展望をしたときに周囲が技術革新をしていくのに対し、取り残されてしまうのではないかという恐れもあります。
ほかにも、負のイメージも少なくありません。「きつい」「汚い」「危険」といった印象を持つ若い世代のハードルが上がってしまうのも一因と言えるでしょう。
1-2.人材確保の対策
人手不足を解消するために、選ばれるための改革をしている企業も少なくありません。
就職先を決める際に、職場の雰囲気や人間関係を重視する人も多くいます。また、離職の原因となるスキルアップができる環境づくりに力を入れ、人手不足や人手が離れてしまわないようにしている企業も。
また、負のイメージから脱却するために働き方改革を推進し時間外労働を減らしたり、労働環境の整備をしたりすることで、より良い職場環境、イメージアップのためにさまざまな施策を行っています。
これらのほかに、外国人材の登用を積極的に行い人手不足を解消している企業もあります。
特定技能制度は、特定技能1号で最長5年間従事することが可能です。一定の知識や技能水準を持ち合わせているため、人手不足を早く解消したいと考える企業にとって、重宝すべき制度と言えるでしょう。
2.特定技能の概要
特定技能は在留資格の一つとなっています。人手不足解消を目的としており、人手不足と認められた分野は「特定産業分野」とされ、特定技能外国人を受け入れることが可能となっています。
2-1.特定技能の分野
特定技能は、工業製品製造分野を含む16分野となっています。
①介護
②ビルクリーニング
③工業製品製造(旧 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
⑬自動車運送業
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
これだけの特定産業分野がありことからも、多くの分野で人手不足が深刻化しているのがわかります。
2-2.特定技能の在留期間や技能水準
特定技能は1号と2号に分かれており、求められる技能水準や可能な在留期間が異なります。
【特定技能1号】
在留期間:4ヶ月、6ヶ月、1年ごとの更新 上限は通算5年
技能水準:相当程度の知識と経験を有する
日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を有する(試験で確認)
転職の可否:可能
家族の帯同:不可
支援計画:必須
【特定技能2号】
在留期間:6ヶ月、1年、3年ごとの更新 更新の上限なし
技能水準:熟練した技能を有する
日本語能力水準:試験での確認不要
転職の可否:可能
家族の帯同:可能
永住権の取得:可能
支援計画:不要
3.特定技能「工業製品製造分野」の詳細
工業製品製造分野で受け入れ可能な業種・業務区分は10種類あります。
・機械金属加工区分
・電気電子機器組み立て区分
・金属表面処理区分
・紙器・段ボール箱製造区分
・コンクリート製品製造区分
・RPF製造区分
・陶磁器製品製造区分
・印刷・製本区分
・紡織製品製造区分
・縫製区分
これらが工業製品製造分野で受け入れ可能な業種・業務区分となっています。この区分のなかの「紙器・段ボール箱製造区分」について詳しく見ていきましょう。
4.特定技能 工業製品製造分野 紙器・段ボール箱製造区分
紙器・段ボール箱製造区分は特定技能「工業製品製造分野」に分類される業務区分です。
出入国在留管理庁による、特定技能1号の各分野の仕事内容として、以下が記載されています。
【分野・区分の概要】
指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、紙器・段ボール箱の製造工程の作業に従事
【従事する主な業務】
紙器・段ボール箱製造
【想定される関連業務】
当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えない。
関連業務に当たり得るものとして、次が想定される。
・原材料・部品の調達・搬送作業
・各職種の前後工程作業
・クレーン・フォークリフト等運転作業
・清掃・保守管理作業
※専ら関連業務に従事することは認められない。
参考・引用:出入国在留管理庁
4-1.紙器・段ボール箱製造区分の詳細
紙器・段ボール箱製造区分の日本標準産業分類上の分類では、以下の産業分類が該当します。
・パルプ製造業
・紙製造業
・加工紙製造業
・紙製品製造業
・紙製用器製造業
・その他のパルプ・紙・紙加工品製造業
これらの業務に対し、特定技能外国人が従事できます。
「紙器・段ボール箱製造区分」という名称から、段ボールの工業包装も対象と思われがちですが、日本標準産業分類では該当していません。そのため、特定技能の受け入れは不可とされます。
5.特定技能外国人が「紙器・段ボール箱製造」で従事できる業務内容
紙器・段ボール箱製造は、特定技能1号のみ受け入れが可能となっています。そのため、技能水準は、相当程度の知識と経験を有し、日本語能力水準は生活や業務に必要な日本語能力を有している必要があります。
5-1.「紙器・段ボール箱製造」の業務内容
紙器は、紙製の容器や紙製のパッケージを指し、包み紙や紙製袋物、紙箱や段ボール紙製コップなどの種類があります。
業務内容の例として
・印刷箱打ち抜き作業
・印刷箱製箱作業
・貼箱製造作業
・段ボール箱製造作業
が挙げられます。
また、上記の業務内容のほかにも関連業務にも付随的に従事可能です。関連業務の例として、原材料・部品の調達や搬送作業、クレーン・フォークリフト等運転作業、清掃・保守管理作業などがあります。
付随的な従事が可能なため、専任で行うことはできません。同様の仕事をしている日本人従業員が従事している仕事は、特定技能外国人も同様に従事することが可能と考えれば良いでしょう。
6.特定技能1号の取得要件
特定技能「工業製品製造分野」紙器・段ボール箱製造区分で従事するためには、特定技能1号を取得する必要があります。
特定技能1号を取得するためには、「特定技能1号評価試験」と「日本語試験」に合格するか、技能実習2号を良好に修了するかのどちらかで認められます。
6-1.特定技能1号評価試験の概要
紙器・段ボール箱製造区分の特定技能1号評価試験は、2025年2月より開始されます。
試験時間は、学科試験・実技試験併せて80分とされており、試験の実施方法はCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式です。
合否の基準は、学科試験が正答率65%以上、実技試験は正答率60%以上となっています。
また、言語は日本語で実施され、試験水準は特定技能1号の試験免除となる技能実習2号修了者が受験する技能検定3級試験程度を基準とします。
紙器・段ボール箱製造区分の試験内容は、紙器・段ボール箱製造(指導者の指示を理解し、又は自らの判断により、紙器・段ボール箱の製造工程の作業に従事)となっており、含まれる技能として、紙器・段ボール箱の製造とされています。
6-2.日本語試験
求められる日本語水準は、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度を基本として、業務上必要な日本語能力」です。
試験は、
①国際交流基金 日本語基礎テストの合格
②日本語能力試験N4以上の取得
のいづれかで認められます。
ただし、製造業分野やそれ以外の職種・作業において、技能実習2号を良好に修了している場合は、日本語試験が免除されます。
7.特定技能外国人を受け入れるための企業側の要件
特定技能外国人を受け入れるために、企業側に求めらられる要件がいくつかあります。
【製造業特定技能外国人受け入れ協議・連絡会の構成員になること】
・協議会に加入し、協議が調った措置を講じること
・協議会が行う、一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の報告または現地調査等その他に対し必要な協力を行うこと
・特定技能外国人に対し、必要に応じて訓練・各種研修を実施すること
・特定技能外国人からの求めに対し、実務経験を証明する書面を交付すること
【支援体制の義務を果たす】
特定技能1号は、支援体制の義務があります。
支援体制の主な内容としては、
・事前ガイダンス
・出入国する際の送迎
・住居の確保や生活に必要な支援
・生活オリエンテーション
・公的手続きの同行
・日本語学習の機会の提供
などが挙げられます。
日本で就労するにあたり、不自由なく暮らせるために必要な支援を行うというのが主な目的です。
これらのほかに、特定技能外国人の雇用形態は、直接雇用であることや、その他措置を連携し適切に共有、対処しなくてはなりません。
8.紙器・段ボール箱製造で人手不足を解消するために
紙器・段ボール箱製造は人手が集まりにくい、定着しづらい産業とされています。そんななか、人手不足が解消できる手段として、特定技能制度があります。
紙器・段ボール箱製造区分での特定技能1号評価試験は2025年2月から開始予定となっています。
そのため、これから特定技能外国人を雇い入れたいと考えている企業は、今のうちから準備をしておくと良いでしょう。
特定技能外国人を受け入れるために、必要な書類や加入しておかなくてはいけない協議会など数多くあります。
事前に準備しておくことで、スムーズに手続きができるでしょう。
特定技能制度や在留資格、外国人人材に関して詳しく知りたいという方はぜひご相談ください。
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